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素敵な夫へ

はじめに

私たち夫婦は、事実婚1年半になろうとしている。
ひどい人間不信を持つ私が、ここまで人と同居生活を送り、
ひどく体力のない私が、二人で出かけることを心待ちにし、
心穏やかに過ごせたのは、夫の包容力のなせる業だ。

直接お礼をいいたいのはやまやまなのだが、
どうも夫の前では、甘えが出てしまい、言うことができない。
甘えを受け入れてもらえることがうれしくて、
泣きわめいても殴られないことがうれしくて、
自分の意見を待ってもらえることがうれしくて、
なのに、お礼が言えない。

少し、夫について書いていきたいと思う。

夫はこんなひと

夫について身バレしない程度に書く。
日本の中でも割と温暖な地域の生まれで、私の8つ上。
男3人兄弟の長男。
私が、やりたかったけどいろんな理由で諦めた仕事に就いている。
夫の様子を見ていると、私の脆さでは到底つとまらない気もする。

本当に縁もゆかりもないひとだ。
歌謡曲『異邦人』ではすれ違っているが、
すれ違うことすらなかったのではないか。

2人の出会いはネットだ。
私は、20歳になったときに、スマートフォンを買った。
いろんなアプリをいれたなかに、自分のつぶやきが同じアプリを使っている人に手紙の様に届くというタイプのSNSがあった。
詳細は忘れてしまったが、たまたま、メッセージが届いたひとなのだ。
そこでメッセージのやりとりをし、いつの間にかLINEに移行し、それから5年程度会わずにメッセージのやり取りを行った。

その間に、いろんなことを話したと思う。
意見のぶつかり合いもたびたびあったように記憶している。
けど、ほぼ毎日、連絡を取り合っていた。
私はまさかこの人と結婚するなんて思わず、
また、特別な気持ちもなく、その間に彼氏ができたり、デートを楽しんだりもしていた。

そうしているうちに「1度くらい会ってみよう」ということになり、一緒にでかけることにした。
初めて対面したのは、東京・町田だった。
思ったよりも小柄で、細見の男性だった。
(背は私より10センチ程度高いのに、体重は5キロくらいしか変わらないのではないだろうか。食べても太らない。うらやましい!)
精悍な目つきをしていた。「山椒は小粒でもぴりりと辛い」という言葉が頭に浮かんだ。

それからは、数か月に一度会うようになった。
ただ、その間はお付き合いではなく、あくまで私は遠方に住む男友達くらいの気持ちだった。別に彼氏がいたこともある。
そのくらい、好意を感じることがなかったのだ。

私が東京に越してから、引っ越し作業を手伝ってくれたことをきっかけに、
週末は一緒に過ごすようになった。それがお付き合いの始まりだった。

ネットでの出会い方は運命的なのだが、
さすがに人には言いづらくて、町田で偶然に会ったということになっている。

事実婚にいたるまで

お付き合いをはじめて、数年。
やはり結婚の話もでてくる。
私は迷っていた。苗字を変えること。子供を産むこと。
「長男の嫁」となれば、必ず求められることだろう。
けど私は、そこに飛び込むことはできない。自分の意にそぐわない。

その迷いを断ち切らせる決定的な出来事があった。
一緒に住むことを決め、ちょうど相手の両親が都内に来ていたこともあり、
軽く挨拶をしたのだ。
そのときに「〇〇(相手の苗字)ゆきちゃんになるのね!」と、嬉々として言われた。銃弾を撃ち込まれたようだった。
私に言わないで。自分の息子に言って。それだったらまだ救われたのに。
まだ何も言ってないのに。2人で話し合って決めることなのに。
そもそも貴方のところは息子3人でしょう?
自分のところは安泰ぐらいに思っているの?
血が流れるように、いろんな感情がぬるぬるとこぼれていった。

そのときは笑顔でごまかしたが、その後、何かのきっかけで爆発した。
存在の軽重をつけられたようで辛かった気持ちは、
今も、些細なことで疼きだす。
あの日の挨拶が決定打となり、事実婚を選ぶことになった。

私と夫のこれから

私はもうちょっと辛抱できないタイプだと思っていたが、
もう1年以上が過ぎて、おどろいている。
その間に、夫婦らしいイベントも何度か実現した。
次は結婚式・披露宴もぜひ実現させたいところだ。

これからも、私たちは事実婚夫婦だ。
たまに不安になって、私は感情を抑えきれないことがある。
それさえも、優しく、包み込んでくれる。
優しく涙を拭いてくれる。

「私はあなたとずっと一緒にいたいと思っているよ」と
彼は、私が揺らぐときに必ず言ってくれる。

ありがとう。私もあなたと一緒にいたい。
けど、一秒でも、あなたより先に死にたいな。
あなたが死んだら、だれも涙を拭いてくれないから。
誰も包み込んでくれないじゃない。
私より先に死ぬなんて、許さない。
だから、今日も、明日も、ずっと、生きることにしがみついていこうね。







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