【小説】『これはなんだろうか』2
コーヒーのカップを捨てて、席に戻る途中、ひとつ上の先輩であるタイシに声をかけられた。
「あれ、もう終わった?」
「……まだです」
あれとは、まちがいなく朝からやっているマクロのバグ問題だ。コーヒーなんかのんびり飲んでいるから、そう思ったのに違いない。
早速お小言を言われたと、サキは内心肩をすくめる。
「大変だよな、ああいうの。まあ、できなかったら、別のやつに回しちゃえばいいから、深刻に考えないで」
「え?」
カラカラと気楽そうに笑うタイシを、サキは胃の底が冷たく