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小説

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私の書いた小説をまとめました。
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#小説

【小説】『あなたの答え』

このカードは運命のカードです。 あなたの運命、人生の道標を表しているのです。 重々しく、…

森うさぎ
6日前
19

【小説】『私たちのすべて』

私がその醜聞を知ったのは、美容院で開いた女性週刊誌でした。 70歳の男性を、20歳そこそこの…

森うさぎ
1か月前
32

【小説】『祈りの雨』

祈ったって、何も変わらないのだ。 私は唇を噛み締めて、押し入れの中で膝を抱える。 真っ暗…

森うさぎ
3か月前
33

【小説】『朝焼け』

その塔から見る朝焼けに向かって願いごとをすると、願いが叶うそうだ。 岩だらけの山頂に、誰…

森うさぎ
4か月前
31

【小説】眠り薬

それは、あの子のような温もりで、やわらかさで、眠れない私の尖った感覚を丸くしていく。 あ…

森うさぎ
5か月前
31

【小説】『ココアのお客さん』

寒くなってきた。 乾燥した手で扱って、手が滑った。またコーヒーカップを割る。 がちゃん。…

森うさぎ
8か月前
17

【小説】『あの日の温かさを』

鉛筆の持ち方が違うと、叱られた。 箸の握り方がみっともないと、叱られた。 反省が足りないと、また叱られた。 遊具に乗っていたら、取り合いになって、突き落とされたのは僕の方なのに、先に譲らなかったあんたが悪いんでしょと、叱られた。 お母さんは、僕を叱る。 お父さんも、僕を叱る。 お母さんに叱られて泣いていたら、もっとしっかりしろって、お父さんのげんこつが降ってきた。 僕は何をしても、だめだ。 叱られる度に、今度は間違えちゃいけないと思って、何かをする前にものすご

【小説】『缶ビール』

カーンと道端の空き缶でも蹴ってやりたいと思って、目を皿のようにして歩いているのに、道端に…

森うさぎ
8か月前
15

【小説】『この手を』

黙って、山と積み上がっている洗濯物をたたんでいた。 家族の中で一番早起きをして、静かに静…

森うさぎ
9か月前
13

【小説】『さえない私の復讐』

友達と信じていた人の突然の心変わりは納得がいかない。そして、人の心を弄んだ後に、何事もな…

森うさぎ
9か月前
9

【小説】『君の理想はシュールだね』

書き出しは、こうだ。 ーー君の長い髪の毛が風をふわりとはらんで、遠くになびく。 はあ、と…

森うさぎ
9か月前
12

【小説】『キラキラと輝く世界は』

美穂の輝く黄金色の世界は、夕陽色の世界。 夏は涼しく、冬は暖かい。 陰口を叩く人はおらず…

森うさぎ
9か月前
10

【小説】『夏は終わったんだよ』

玄関のドアを開けて、あっと息を飲む。 風が冷たい。 ツンと鼻を刺すように冷たい。 秋の風…

森うさぎ
10か月前
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【小説】『これはなんだろうか』2

コーヒーのカップを捨てて、席に戻る途中、ひとつ上の先輩であるタイシに声をかけられた。 「あれ、もう終わった?」 「……まだです」 あれとは、まちがいなく朝からやっているマクロのバグ問題だ。コーヒーなんかのんびり飲んでいるから、そう思ったのに違いない。 早速お小言を言われたと、サキは内心肩をすくめる。 「大変だよな、ああいうの。まあ、できなかったら、別のやつに回しちゃえばいいから、深刻に考えないで」 「え?」 カラカラと気楽そうに笑うタイシを、サキは胃の底が冷たく