甘噛わん

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最近の記事

カリノカラダ

気まぐれな梅雨前線のせいで早々と夏を迎えたある日の夕方、 毎日通る川沿いの道で、僕は見ず知らずの女子に声を掛けられた。 ーーーーー 「拓也ーっ!、起きなさい!」母の大声で目が覚めた。 ゆうべ目覚ましをかけ忘れたらしい。 時間はいつもより十五分ほど遅い。 起きたばかりの頭はまだぼーっとしている。 「拓也ーっ!」母はまだ叫んでる。声がでかい、うるさいな。 久しぶりに友美が夢に出てきた。また思い出してしまった。 友美とは近所に住んでいた幼なじみのことだ。 ーーーーー 僕らは

    • 手のひらの上

      昼を少し過ぎた頃、ベットで目覚めた。 目覚まし代わりに携帯の着信音が鳴り続けている。  < 千尋・母 > 画面に表示された名前は付き合っている彼女の母親のものだった。 もう2年以上の付き合いで、彼女の家でよく夕食をご馳走になったりする。 両親も僕を気に入ってくれていて、何となくだけど将来の話も出ている。 僕の携帯番号も知っているし、電話がかかってくるのは珍しい事ではない。 「はい、もしもし。 こんにちは。  どうしました?」 「あ、純也さん。 千尋何処にいるか知りま

      • ΔβーCOSMOS

        某年、某日。 地球の上空には100を超える未確認飛行体が集結していた。 いち早くこの事態を探知していたNASAは、世界中がパニックになることを危惧し、この未曽有の事態に対し危機感を抱きながらも発表はせず、幾つかの関係機関にのみ報告し、米国防総省管理の下、最高機密扱いにしていた。未確認飛行体は1週間ほど前から日に10機前後が月の軌道上付近に集まり、前日には100を超える数に達していた。アマチュアを含む天文学者達もほぼ同時期に気付いていたが、米国からの圧力もあり、行動は互いの情

        • 悪意と無意の交錯

          悲鳴と泣き声と内容の聞き取れない叫び声が入り交じって、駅前のロータリーは騒然としていた。 真夏の日差しに焼かれ蒸せたブロック敷きの歩道には、つい数分前までは日常を送っていたはずの六人の男女が赤黒い血溜まりに横たわり、小さな呻き声を洩らしながらひくひくと動いている。 ロータリーを横切る横断歩道にも、手や足があらぬ方向に曲がったり、頭から大量の出血をした者が何人か倒れ、助けようと駆け寄る人と逃げ惑う人で混乱を来していた。 駅の入り口付近の壁には白い車が衝突し、フロント部と壁

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