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悪意と無意の交錯

悲鳴と泣き声と内容の聞き取れない叫び声が入り交じって、駅前のロータリーは騒然としていた。

真夏の日差しに焼かれ蒸せたブロック敷きの歩道には、つい数分前までは日常を送っていたはずの六人の男女が赤黒い血溜まりに横たわり、小さな呻き声を洩らしながらひくひくと動いている。

ロータリーを横切る横断歩道にも、手や足があらぬ方向に曲がったり、頭から大量の出血をした者が何人か倒れ、助けようと駆け寄る人と逃げ惑う人で混乱を来していた。

駅の入り口付近の壁には白い車が衝突し、フロント部と壁の間には、体をくの字にして挟まれた若い男性が息絶える寸前で運転席の老人をにらみつけている。しぼんだエアバッグの向こうには白髪頭の男性が額から血を流し茫然自失の状態で身じろぎ一つせずハンドルを握ったまま固まっている。

(私のせいじゃない……。ちゃんとブレーキを踏んだのにスピードが勝手に出たんだ。ハンドル操作だってちゃんとしてた。車が異常なんだ。車が悪いんだ……私は悪くない……)

(くそぉ、何なんだこのじじぃ。腑抜けた顔で俺を見やがって。てめぇが俺をこんな目に遭わせてるんじゃねぇか。ひとがせっかく楽しんでんのに何てことしやがる。死に損ないがメチャクチャな運転で邪魔してんじゃねぇよ。くそぉ、く…そぉ…、く……そ……ぉ…………)

『たった今入ってきたニュースです。
先ほど、○○駅前のロータリーで通り魔事件と車の暴走事故がありました。二十代前半と思われる男性が登山ナイフのような刃物で六名の男女の首や背中を次々とを切りつけ暴れていたところへ、七十八才男性の運転する車が暴走し数人を轢いた後、通り魔事件の容疑者男性も巻き込みました。この二つの事件で、通り魔事件の容疑者を含む計一二名の犠牲者が出ており、その内九名は駆けつけた救急隊員によって死亡が確認され、残り三名も重体の模様です。また通り魔事件の容疑者男性も死亡が確認されているため、犯行動機などの確認が難しい状況となっております。一方、車を運転していた男性は、ブレーキを踏んだが車が加速したと説明しており、警察ではペダルの踏み間違えが原因で暴走したのではないかという方向で捜査を進めていく方針です。

いやぁ、大変な事件が起こりましたねぇ、□□さん…………』

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