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ICTってなにそれ美味しいの? 6【失敗から学ぶICT】【完結】

 「失敗は成功の母」
 ありふれた言葉であるが、私はあまり好きではない。上記の言葉は、あくまでも「周りの人間」が失敗した人間に対して同情して使うものであり、本来失敗とは恥ずべきものであるという事を自覚しなければならない。失敗しないでサクサクと進める方が圧倒的に偉いに決まっている。
 しかしそれでも人や組織は失敗する。失敗は失敗で、その原因や処置した事項を蓄積して今後の業務に生かしていかなければならない。今回はそんな失敗のお話
 なお、国交省HPに施工者用の(トラブル時)「現場対応集」というものが掲載されている。先人の失敗や経験を追体験して、しょうもない失敗を未然に防止しよう。

 初心者ICTの失敗は、概ね3D設計データ作成ミスに起因するといっても過言ではあるまい。以下は最低最悪の事例である。なお用語等、至らない記述があるが生暖かい目で見ていただきたい。


〇重力式擁壁位置間違いで取り壊し赤字150万!?
・工事の概要
 道路改良工事〇○○〇
・工 種
 路体盛土工7000m3、排水構造物工600m、重力式擁壁工150m

 本工事は特にICTを意欲的かつ自発的に取り組んだ現場であった。上記3工種を創意工夫としてICT施工をし、かつ工事写真を全てクラウド管理してしまうという無謀な戦いだった。
 特に重力式擁壁を無理やりサーフェス化して、データを現場に持ち込み3D施工管理をするのは珍しいのではないだろうか。しかし、事件は想像もしていなかったヒューマンエラーにより起きた。以下がその箇所のポンチ絵である。

 田舎によくある農道乗り入れ箇所だ。この2号重力式擁壁(以下「擁壁」と呼称)で事件は起きたのだ。先ず平面図に記載されていた擁壁の位置がデタラメだった。よくある話?だそうだ。
 3D設計データ作成他、様々なICTに関わる業務は私、測量やデータ確認作業はちょっといい加減な中堅現場監督が実施した。
 要するに2人ともいい加減な人間だったのだ。私は現場をろくに見ず(見たところで分からないが)データを作り、監督は土地区画整理課貸与の農地境界に関わる図面をろくに見ず測量をしていた。あろうことか既設の何の杭かもはっきりしない杭を「境界である」と判断していたのだ。

 上記画像は工事に実際活用した3D設計データである。床堀、改良、均コン、型枠組立まで一貫して本データを使用した。なお、平面位置は当初平面図、施工前に現況測量(間違えてる)を基に小移動させている。
 この時点で1m程A線側に擁壁位置がずれていることには気づいていなかった。


 作成者は監督の測量が正しいものだと思い込み
 施工者は3Dデータが正しいものだと思い込み


なんとそのまま完成させてしまった。


 恥ずかしいが一応写真も

 馬鹿な話である。社内検査を厳格に都度やるような会社であれば未然に防げたかもしれない。若しくは、従来通りの施工であれば、どこかのタイミングで監督がミスに気づき、修正したかもしれない。かもしれない・・・
 かくして速攻で「これはおかしいだろ」と騒ぎになり、即日ペッカーで解体、床堀からやり直しの運びとなった。概算150マンモス程余計なカネがかかってしまった。


 さて、この事例の問題点は沢山()ある。
・ワンオペ測量で、どのような測量を行ったのか不明
・データ作成者の低い土木の知見
・現場監督の3D設計データ謎の盲信
・社内検査体制の不備(実質的な検査ができているといえば?)
・その他

 処置対策としては・・・
・現況測量前に3D設計データ作成に当たり必要な座標位置を明確に指示(折点、境界、現況排水構造物等)
・起工測量時に線形データ等持ち込み「通り」の確認
・データ作成者も現場踏査・測量に参加
・道路測点50m or 100mおきに従来計測法での丁張設置(測点20mであれば3測点又は5測点)
・構造物3D設計データ1つにつき二か所程度の従来計測
・工事(作業)結節での簡易社内検査
・等々

 以上であるが、ICTに関わるミスは、途中で気づくことなく最後まで完成させてしまう傾向にあるといえよう。同業他社の失敗談もチラホラと聞こえる。さらにはもう何年も前からやっている、準々大手地場コンですら盛大にミスっている。ここら辺の失敗知見も今後紹介しようかと思う。

 ネット上を見渡してもICTのネガティブな話はあまりない。
 「生産性最大40%アップ」「経験未熟でも施工効率アップ!!!」
 正しくもあるが、正しくもない。全知全能の装置なぞ存在しないのである。業者の罪は重い。

 重要なのは、ICT施工を善導する社内バックアップ体制にあると思料する。


 ミスをゼロには出来ないが、ゼロを目指しつつ、どこかでミスに歯止めをかけるセーフティー的な体制を早期に整備することを提案して結びとする。


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