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太宰治の『人間失格』を読む

『人間失格』のあらすじ


太宰治の名作『人間失格』は、主人公・大庭葉蔵の苦闘を描いた自伝的な小説であり、人間存在の虚無をテーマにしています。物語は、葉蔵が自身を「人間失格」と呼ぶところから始まります。彼は幼少期から独特の感受性をもち、人と接することに苦痛を感じていました。

物語の第一章では、葉蔵の回想から始まります。ある日、葉蔵は独りで部屋にこもり、記録することの目的を考えます。「僕は一体、何を記録すればいいんだろう?」と自問しながら、自身の過去に目を向けます。幼少期の思い出から始まり、彼の周囲の人々との触れ合いや、孤独感が募る様子が語られます。特に、同級生たちからの距離感を常に感じつつ、「僕は本当にこの世界に属しているのだろうか?」と悩む姿が印象的です。

次の章に進むと、葉蔵は上京し、東京での生活に馴染めず、引きこもりがちな日々を送ります。ある日、彼は友人である小山田と再会します。彼の明るい性格とは裏腹に、自分自身は暗い気持ちでいっぱいです。「お前、いつも暗い顔してるな」と小山田が笑顔で言う場面で、葉蔵は「僕にはその明るさが理解できない」と心の中で思います。このようにして彼は、他人とのコミュニケーションに苦しむようになっていきます。

葉蔵の心の奥底にある恐れは、やがて恋愛にも及びます。彼は女性と接することに興奮を抱く一方で、恐怖心にも苛まれます。彼はある晩、酒の勢いで出会った女性・美知子と親密な関係を築くことになりますが、「でも、また失うかもしれない」という不安が頭をよぎります。美知子は葉蔵に愛情を示しますが、彼はその愛情を受けることができません。「どうして、僕はこの幸せを受け止められないのだろう?」と悩む姿が心に響きます。

物語が進むにつれ、葉蔵の精神状態はさらに悪化し、彼は家族からも距離を置くようになります。「もう僕は誰とも会えなくなってしまったのかもしれない」と孤独感で押しつぶされそうになります。彼が一時的に明るさを持ちながらも、心の位置は常に揺れ動いている状態が描写されます。やがて、葉蔵は自己を破壊する行動に走り、周囲の人々からも見放されていきます。「これが、僕にとっての人間失格なのだ」と悟る瞬間が訪れます。

心に残ったこと


この小説では、葉蔵の心の内面に触れつつ、人と手を繋ぎたいのにそれができないという切ない葛藤が描かれていました。特に、「人間失格」という言葉の重みを考えさせられました。同時に、自身の存在について真剣に考えることができ、自らのアイデンティティを見つめ直す機会となりました。この作品を通して、孤独や不安に苛まれながらも、愛を求める人間の姿に心が動かされたのです。 #人間失格 #太宰治 #文学 #読書

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