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子兎とボルダリング

兎には子が二人いる。7歳と5歳。
今日は弟の方の話をしよう。

子兎弟は発達が遅い。と言うか、発達にムラがある。
人に合わせるのが苦手で集団が苦手。
そして運動が苦手だった。

より正確に言おう。
彼は運動が苦手だと思い込んでいて、ために運動をやりたがらず、結果としてうまくできないという状態だった。

そんな折、小学校に入ってボルダリングをたまにやるようになった兄を見て、子兎弟もボルダリングをやりたがった。
ルールを守ってやれるのか、飽きずにやるのか怪しいので、ちゃんとしたジムではなく、まずはボルダリングや子ども向けクライミングもあるスポーツ系アミューズメント施設に連れていった。

まず最初の1回で躓いた。
ノリノリで登ろうとして落ちて体をぶつけたのだ。
これは、案の定、もう嫌だと言い出した子兎と、このまま終わらせられない兎の物語である。

さて、早速壁に苦手意識を持った子兎だが、この施設にはいいものがあった。
クライミングウォールに映像を投影し、それでゲームができるのだ。
彼が気に入ったのは、壁にポイントを設定して、それを数字の順番にタッチしていくというものだった。

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※この写真は随分登れるようになってからのもの

登らなくていい。

第1段階。
登るのを嫌がっているので登らせない。
低いところに設定して、壁の近くを走り回らせるだけ。
高くてもジャンプして届く高さ。
走ってタッチしてジャンプしてタッチしてゲームクリア。
「やった!すごいぞ!怖いことは何もないね!」

ちょっとだけ登る。

じゃあ、もうちょっと高くしよう。
ジャンプじゃギリギリ届かない高さを混ぜる。
さあ、どうしよう。
ジャンプじゃギリギリ届かない。壁を登らなくっちゃ届かない。
ほんの少し、1歩分の高さ。壁に張り付いてタッチ!
「できた!今、壁を登れたよ!すごいぜ!」

手伝ってもらって登る。

さあさあ、また少し高いのを混ぜていこう。
壁に張り付いただけじゃ届かない。
そこから更に登らなくっちゃ届かない。
大丈夫。とーちゃんがすぐ後ろで支えてる。
手を伸ばして、足を上げて、登って、タッチ!
「すごいすごい!今この高さまで登ったぜ!」

できることの繰り返し

じゃあ、次は手伝いなしでもっと上まで、は早すぎる。
大事なのは「できた」経験の積み重ねだ。
「できた」経験が「できる」という自信を作ると兎は信じている。
最初に必要なのは「難しいことができなかった」よりも「簡単なことができた」だし、「ひとりでできなかった」よりも「手伝ってもらったけどできた」だ。
だから、簡単なのをたくさんやる。少し難しいのを手伝ってもらってたくさんやる。その度に、何度でも「できたね!」と兎は声をかけよう。

レベルアップを少しずつ

さあ、できるやつの合間に、少しずつレベルを上げていこう。
少しずつ、ちょっと頑張ればできそうな範囲で。
今までより難しいのができたらたくさん褒めよう。
難し過ぎたら手伝うし、やっぱり褒めよう。
簡単なのができた時も褒めるけど、褒め方は変えていこう。
「もうこんなの楽勝だね!」「ちょっと子兎弟には簡単過ぎたね!」
もちろんたまには失敗もある。
それでも兎は「できなかった」とは言わない。
「難しいことに挑戦ができた」「ここまではできた」「あと少しでできる」とか、そういうのを言う。

自信ができた!

そんなことを繰り返して、もうすっかり彼は自分のことを「できるやつ」だと思うようになった。
自分でコースを設定して、どんどん挑戦していく。
こうなればもう後は楽なもの。自信を持って何度でも楽しく挑戦するやつが上手くならないはずがない。
兎はそれを見守って、呼ばれれば何度でも手伝いに行き、毎回声をかけて褒めるし、たまに難易度が上がるように仕向けていくだけ。

もちろんこれらは1日でのことではない。
何度も通って、少しずつレベルアップしていった結果だ。

そして高みへ……

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いやあ、すっかり登るようになりましたね。

運動大好き

今や彼は運動大好き。
運動しようと自分から言いだし、どんどん運動して、どんどん上達していく。
兎がコーチングしたのはボルダリングだけなのだが、すっかり体を動かすことに自信がついたらしい。
兎の子育ての中でも、随分上手くいった事例なので、今回記録しておくことにした。

後書き/注意

さて、これは兎の子育てにおける成功例と言っていいだろう。
(もちろん失敗したと思うこともたくさんあるぞ。)
その上で、子育ての簡単な失敗の仕方を教えようと思う。
他人の成功例をそのまま真似することだ。
人間はみんな違うのに、よその子育てをそのまんまやって上手くいくはずがなかろうよ。
参考にするのはいいが、結局はちゃんと一人一人をよく見て、それぞれに合った最善を希求するしかないのだ。
しんどいけどね。

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