カリーヴルスト②【Vの庭先で肉食を】
「美味しい!美味っしいねえ、シグ!」
「うん美味しい」
D国V市。
アリサカは少年=シグと、大通りに面したオープンテラスでカリーヴルストを頬張っていた。
「ふっふふふ。シグが気に入ったんなら帰ってからも作ってあげよう。ソーセージにケチャップとカレー粉かけるだけだから多分私にもできる」
「ソーセージもなんか違う気がする」
「おっ、シグも分かってきたね。うちでもルガーが作ってくれるけどさ、まだまだ本場の味には及ばないね」
「シグは戦場以外のD国初めてだね」
「うん。あ、でもヴィ連軍の時に旧D国領には行ったよ」
「あんなヴルストもハンバーグも禁じられたとこはD国とは言わん!」
二人はこれまた屋台で仕入れた焼きアーモンドをつまみながら市街を散策する。
人種の異なる20代女性とローティーン少年の組合せはやや珍しいが、傍目にはバックパッカーにしか見えないだろう。
「…僕ヴィ連人だってバレないかな?」
「んー……?とうっ」
空になったアーモンドの紙袋を歩道のゴミ箱に捨て、アリサカはシグのTシャツに手を突っ込む。
「うわ!」
「ふっふふふ!こんなに筋肉の付いたヴィ連人少年がどこにいるというのか!この一年肉を食わせて鍛え上げた私のシグを、あんなひょろひょろ野菜連中と一緒にされては困るな!」
「もー!くすぐったいからやめて!」
「ちぇー」
街を真っ赤に染める夕焼けの中、ケラケラ笑いながらアリサカは手を放す。
次いで発せられた声は、別人のように冷たかった。
「さて、時間だ」
太陽が沈む。
楽しい楽しい偵察(デート)の時間は終わり。
通りの向こうの建物前に黒塗りの車が停まるのを確認し、2人はバックパックからアサルトライフルを取り出す。
建物から出たターゲットが車に押し込まれるまでが勝負だ。
「遅れるなよシグ。カルカノ、聞こえてるな?タイミングを間違えるな。状況、開始」
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