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ひとりで美術館ハシゴ旅/5.滋賀県ーArtとTalk㊵ー


皆さんこんにちは、宇佐江です。
今回は、1つの都道府県に的を絞り美術館を複数めぐる「ひとりで美術館ハシゴ旅」第5弾、滋賀編をお送りします!
ちなみに前回はこちら↓

今までも、何度か美術館目的で訪れている滋賀県。
名古屋から日帰りで行ける距離ですが、基本、車移動が便利な土地。しかも今回はとりわけ街から離れた施設ばかりなので、公共交通機関利用者としてはやや難易度高めのハシゴ旅でした。
でもその道中も楽しかった。いざ出発!


☆「ひとりで美術館ハシゴ旅」について☆

・記事の内容は宇佐江個人の主観や感想に基づくものです。公式なものとは一切関係ありません。
・タイムスケジュール優先の旅ですので、各展の適切な鑑賞時間より短い場合があります。
・美術館に関する情報は、各施設のHPや広報等を一部参考にしております。
・館内はスタッフさんに確認の上、写真撮影しております。
・情報は当時のものです。実際に行かれる際は各公共交通機関や施設の最新情報を必ずご確認ください。


(本文はエッセイ形式でお送りします)


①10:00~12:10/MIHO MUSEUM

◆開催していた主な展示『古代ガラス』

美術館へと続く名物トンネル

訪れた日:2024年4月の平日
移動①…名古屋6:44発→7:18大垣7:25→8:00米原8:18→石山8:59着(すべてJR)/石山9:10発→10:00現地着(バス)

名古屋に向かう地元駅から数えると、JRを3回乗り継いだ。通勤通学時間と重なり、ほぼ立ちっぱなしで読書をしながらひたすら移動。
石山駅からのバスは、乗る前に切符を自販機で購入する。すでにバスが来ていて焦ったが、ちゃんと案内係さんがいて「美術館の入場券とセットにされますか?」と尋ねられた。はい…と返事しかけて、やっぱりやめる。
セットにしてしまうとバスは往復だ。そのあと、一縷の望みをかけていたので片道のみを購入した。

バスで約50分。美しい山や川を眺めながら美術館へと近づいていく。美術館の建築設計をしたのは、ルーヴル美術館のガラスのピラミッドなどでも有名な建築家、I.M.ペイ氏。館のパンフレットによると、設計テーマは「桃源郷」らしいのだが、立地的にもまさしく、一度行けても二度は行けなさそうなものすごい場所にある。

といいつつ、

実はMIHO MUSEUMには過去一度来たことがある。もう、かれこれ20年近く前、いとこ(←先日志摩に行った)と来た。設立が1997年なので、当時はまだ出来て数年。そのときも「変わってるなあ~」と驚いたのが、美術館までのアプローチである。
MIHO MUSEUM最大の特徴は、バスを降りてすぐのレセプション棟から、展示室がある美術館棟まで7~8分も歩くこと。その道中の景色が圧倒的に素晴らしい。ちょうど、枝垂桜が満開の時期で、団体や海外からの観光客で平日だが賑わっていた。
長いトンネルを抜けると、美術館がようやく見えてくる。
美しい景色を堪能し、「さあ展示!」と歩を進めて行く先に、悪夢が待っていた…。
「入場券はこちらでも販売しております」
美術館棟前でプラカードを持つ警備員さん。

しまったーーーーー!!!

さっきレセプション棟でチケット買ったのにロッカーに預けた荷物に、チケット入れて置いてきたーーーーーーー!!!!!

復路は景色を楽しむ余裕なく、はあはあと小走りで駆け抜けた。
ちなみに展示は古代美術を中心に、たくさん部屋があり見応えも充分です。

景色に心奪われて、大事なものを、お忘れなく…。


②12:50~14:40/滋賀県立陶芸の森 陶芸館

◆開催していた主な展示『リサ・ラーソン展』

丘の上にあるかわいい美術館。

移動②…MIHO MUSEUM12:10発→信楽駅(バスで約30分)/信楽駅から現地までタクシー(約6分)

今回のハシゴ旅で、いちばん不安だったのがこの移動。MIHO MUSEUMから次の目的地の最寄である信楽駅まで、石山までバスで戻る&電車で合計2時間もかかる。何とかして他の行き方がないかな~と事前に探していたら、なんとダイレクトにMIHOから陶芸館まで行けるバスが1日1本だけ出ているという情報を発見!
そうして一縷の望みをかけ、先ほど敢えて「片道」バス券にした。
だが、MIHOの受付でそのバスについて尋ねると、「申し訳ありません、その便は先日廃線になりまして…」。

ああ、残念…。

だが代わりに、信楽駅までのバスはあるという。ただし1日2本のみ、しかも陶芸館へ行こうと思うと時間的に乗れるのは12時10分発のみ。乗り逃さぬようにと30分も前からバス停前で待機する。
やって来た待望のバスは、え?これ?と戸惑うような、大きめの乗り合いヴァンみたいな車(12人乗り)。地方の旅館で出してくれる送迎車みたいな感じ。私と共に待っていた数人の乗客も、「これ…?ですよね…?」とお互い顔を見合わせながら乗車する。料金は250円と格安で、しかも信楽までたったの30分。とても助かったが、ずっと山道の上、クマよけのためか1分間に数回ずつ運転手さんが短いクラクションを鳴らし続けるので、乗り物酔いしやすい私には少々辛かった…。

ヨロヨロで辿り着いた信楽駅。しかし、あるものを見つけて気分が上がる。
そう、たぬき!!

信楽といえばもちろん!

ほんとに、どこもかしこもたぬきだらけ。タクシーすらも社名が「たぬきタクシー」。観光客心で、選ばずにはいられない。
ちなみに本数が少なくて今回は利用できなかったが、信楽駅から陶芸の森へのバスもある。徒歩でも20分ほどで行けるそうなのだが、次の予定もあったので時間優先でタクシー。

公式ウェブサイトによると、陶芸の森は1990年に竣工、開設。かなり広い敷地の中には陶芸館(美術館)や展示館、滞在制作のスタジオなど「やきものの町」にふさわしい充実した設備や機能を持っている。
美術館はいちばん高い丘の上。そこからの景色は、先ほどのMIHOとはだいぶ雰囲気が違うが、おもわず「わあ…」と立ち止まってしまう素朴な美しさがあった。初めてきたのに、なんだか落ち着く景色だ。

展示のリサ・ラーソンも、とっても良かった。

大好きなリサ・ラーソン。実は、この展示が始まってまもなくの3月11日に、92歳で亡くなられたとこの会場で知った。こんなにも大事なニュースを知らなかった自分がショックだった。雑貨屋などで目にするたびに「いつか欲しいなあ…」と憧れていた、リサ・ラーソンのグッズではなく陶器作品。
今回買おうと、決意して来た。

ミュージアムショップに並ぶ猫たちとじっくり目を合わせる。

「ミア」のファンだけれど、そこにいたミアたちの表情があまりに穏やかで、アトリエに置くには癒されすぎるなあ…と視線を彷徨わせた先に、こちらをねめつけるような挑発的まなざしを向けている「モア」がいた。
私の制作を、見守るというよりは見張っていて欲しい。
そんな気分にぴったりのモアをそっと手に取ると、足の裏に、筆で書かれた「LISA L.」の直筆サインがあった。なんだか胸が震えた。


③16:15~16:40/ボーダレス・アートミュージアムNO-MA

◆開催していた主な展示『Borderline』

風情ある町並みに、ひっそりと。

移動③…陶芸館→信楽駅(タクシー)/信楽14:54発→15:17貴生川(信楽高原鉄道)貴生川15:21発→15:44草津15:52→近江八幡16:05着(JR)/近江八幡駅から現地までタクシー(数分)

通常、美術館は閉館の30分前には入場を締め切ることが多い。なのでここは、時間的に行けるかなあ…と保留にしていたが、例のMIHOから信楽へのバスのお陰で無事行けた。ちなみに電話で確認を取ったところ、閉館時間ぎりぎりまで入場可能とのこと。

以前LLブックというものに携わってから、色んな事情を持つ人が利用するために、美術館に何ができるかということを考えるようになった。

そんななか、全国の美術館チラシを眺めていて気になっていたのがこちらのNO-MA。パンフレットによると2004年、「ボーダレス」という言葉に思いを込めて開館したとある。運営は社会福祉法人だが、「障害のある人のため」という限定的な役割ではなく、訪れる人々皆に向けて、芸術や表現について考えてもらえる場であり続けたいと書いてあった。
その現代的なコンセプトと、昭和初期の町屋をリノベーションした外観のクラシックさのギャップが魅力の美術館だと思う。

展示室は決して広くはなく、おうちの1階と2階がそのまま展示スペースになっている感じ。作品に(文字通り)触れたり、丁寧でやさしい文体のキャプションを読むうち、自分のなかの今まで気がつかなかった部分を淡く照らされて、
「ねえ、こんなこと考えたことある?すごくない?」
と、囁かれているみたいな気がした。

行きのタクシーで道を覚えておいたので、帰りは近江八幡駅まで歩いて戻った。30分くらいだった。町屋の景色ももちろんだけれど、民家の玄関を飾る何気ない鉢植えや、ポストや、夕暮れに陰る細い路地が、映画の中にいるように美しく映った。


その他のおすすめ美術、博物館!


飛び出し坊やが日本一多い設置数といわれている滋賀県。
(写真は鶏肉店前にいた子)

冒頭述べましたように、今回のハシゴ旅は移動がなかなかヘビイで、乗り継ぎもタイトだったのでご飯が全然食べられませんでした…(MIHOでバス待ち中に小さいパンをかじっただけ)。魅力的な美術・博物館が多いのですが、結構どれも点在していて。
けれど、そうやって苦労して辿り着く美術館てのもまた、いいんですよねえ…困ったもんだ笑。

他に、過去訪れて個人的におすすめなのが佐川美術館と、滋賀県立美術館です。佐川美術館は、水面に浮かんでいるような神秘的な佇まいが素敵なのと、彫刻家・佐藤忠良さんのコレクションが大好き。
滋賀県立美術館は、こちらに過去のれぽがありますのでよろしければぜひご覧ください。
琵琶湖博物館もおすすめです~!





今週もお読みいただきありがとうございました。今回訪れた施設が気になった方は、下にあるウェブサイトをどうぞご覧くださいね。

◆次回予告◆
25時、コーヒーショップでしたい話②、紙か電子か、の話。

それではまた、次の月曜に。



*今回訪れた施設*


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