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滋賀。雨の日に電車とバスを乗り継いで美術館&博物館ーおでかけがしたい。⑫ー

おでかけ12

旅や散歩にまつわるエッセイ+写真のシリーズ『おでかけがしたい。』第12回。

今回は、雨の日に出掛けた滋賀県日帰り旅のお話です。



滋賀県立美術館

新幹線代節約のため、平日の朝に名古屋から米原、乗り換えて近江八幡、また乗り換えて県美最寄り駅の瀬田駅まで約2時間立ちっぱなしで読書をしながら移動した。
瀬田駅に着くと、ちょうど乗る予定のバスが来る。発車まで余裕があるのでゆったりと座席に腰かけて、ふ~と一息ついていると、乗客のほぼ全員が運転席横の両替機に並ぶ列を作っていて驚いた。
え?なにこの大行列。
旅先でドキドキする場面のひとつにバスがある。料金が先払いか後払いか、整理券はあるかICカードは可か不可か。色々ルールが違うので余所者にとっていつもスリルである。あらかじめ自分が利用する区間の料金(210円)を調べて用意しておいたので、私は並ばなくていいよね…?と思いつつ不安になった。バスが走り出した後灯った表示で、初乗り乗車賃が180円なのだと気づく。
ああ。だから小銭が沢山必要なのか、ICカードも使えないみたいだし…と理解したのだが、この展開が数時間後べつのバスに乗る際の伏線になろうとは。

美術館へ近づくにつれ、窓の外に緑がわさわさと増えだした。大きな公園の入り口でバスが停まる。広大な「びわこ文化公園」のなかには美術館だけでなく図書館や茶室、日本庭園や遊具のある原っぱなど様々な施設が共存しているらしい。

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美術館に向かう道中も景色の美しさに何度も立ち止まる。絵の資料に使いたくなるような素敵なベンチがたくさん。角度を変えて写真を撮りまくりようやく美術館の建物に入った途端、雨が強く降り出した。

滋賀県立美術館は1984年に「滋賀県立近代美術館」の名で開館し、2021年に“リビングルームのような美術館”をコンセプトに名称から近代をとってリニューアルオープンした。以前から行ってみたいな~と思っていたところ、私の勤めている美術館で開催された「塔本シスコ展」の今の巡回先が滋賀県美だったこと、そして先日テレビ収録でご一緒させていただいた滋賀県立美術館のディレクター(館長)保坂健二朗さんのお話をきいて、やはりぜひ行きたいと思い至った。写真で見るととんでもなくオシャレでキラキラした印象が強かった建物は、晴れの日だとまた違うのかもしれないが、雨天のこの日は落ち着いた雰囲気に感じた。建物の設計が偶然、岐阜県美術館と同じ日建設計さんなのもなんだか嬉しいなーと思う。設立時期も同じくらいだし(岐阜は1982年開館)。
視界がワイドにひらけるような構造になって色んなものが目に入るが、それがうるさく感じない絶妙のバランス。それに、各所にいるスタッフさんがとても親切でわかりやすい(見習いたい…)。案内のイントネーションがしっかり関西なのも可愛らしかった。

同じ作品でも飾る場所や学芸員さんによって、ほんとうに展覧会って変わる。約2カ月間共に過ごしたシスコの作品が懐かしくもあり、新鮮でもあった。

ちょうどお客様がいらして見学はできなかったが、滋賀県美には充実したキッズスペースもある。見晴らしがよさそうな2階部分にあり、飲食も可能だそう。
ちなみに、ホールにも一部飲食可能スペースがある。美術館ではどうしても飲食できる場所は隅の方になっている場合が多いので、このように建物の中央部分にそれがあるのが珍しく、公園のなかという立地に合っていてすごく羨ましい。

外の景色を眺めながら、ショップと兼用になっているカフェで注文したハムクリームと人参ラペの挟まったサンドイッチを食べた。
めちゃくちゃおいしかった。

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滋賀県立琵琶湖博物館

美術館を出るとまた雨が強くなった。
長靴で歩き出す。

せっかく滋賀に来たのだから久しぶりにMIHO MUSEUMへ行こうかなあと思ったが、残念ながら休館中だったので、別の場所を用意していた。瀬田駅に戻り、電車で草津駅へ移動し「琵琶湖博物館」行きのバスを待つ。
ふと、財布のなかを見る。小銭がピッタリ440円ある。博物館までがちょうど440円なはず。しかし、もし何かの勘違いで料金が違ったらこれ以上小銭はない上に、万札1枚しかないから運転手さんを困らせてしまう。
先ほど見た両替の長い列が浮かんだ。
滋賀県の人たちがあのように几帳面な方たちであれば、ここはバス待ちの間に万札を崩して用意しておくのがマナーではないのか。そう思い、ダッと小走りに階段を駆け上がり改札に戻ってまだ特別不足していないICカードにチャージをして万札を崩す。よし。これで万全だ。
息を切らしバス停に戻ると乗車が始まっていた。
ピッ、ピッ、ピッ、ピッ。
えっ?まさか。

(こっちのバスはICカード、使えるんか――い!!)

頑張ってお金を崩した私の手間っていったい…。

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バスを降りると、下り坂の先に水平線が覗いていた。もしや、と他の乗客が博物館の入り口へと流れていくのに背を向けて、ひとりで歩いていくとやっぱり、琵琶湖。
「おおきいなあ~」
琵琶湖を見るたびにぜったい言っちゃう感想をまた口にする。

博物館は平日にも関わらず、子どもたちで大賑わい。夏休みだもんなあ。
7歳くらいの男の子が、展示されていた大きなゾウを見上げながらぴょんぴょん飛び跳ねて
「めっちゃおおきいゾウやなあ!ふつうのゾウより、めっちゃデカイなあ!!」と大興奮でお父さんお母さんに話しかけているのがものすごく可愛かった。関西弁っていいなあ。

しかし、順路の前半は結構まじめな展示が続き、確かにおもしろいんだけれど、こんなにも家族連れに人気なのがちょっと不思議な気がした。ところが、1階に降りるとその謎が明らかになる。

(わ~~~!)

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1階部分はガラリと様子が変わって、広い水族展示室になっているのだ。ふだん行く水族館とは少し雰囲気も違い、琵琶湖近辺ということで淡水魚が多く灰色の魚ばかりが続くのが逆に新鮮だった。くりんとした大きな目のアザラシもいて、しばらく水槽から動けなくなる。

帰りのバスが1時間に1本しかないため、「後半の水族ゾーンにもっと時間取っとけばよかった~!」と今更後悔しながら足早に、時間ギリギリまで観覧した。
思いつきで来てみたが、琵琶湖博物館、面白かった。滋賀観光に迷ったらぜひおすすめしたい。


草津駅に戻り、再び名古屋へ帰る長い道中に備えて、改札前のそば屋に立ち寄り腹ごしらえをして滋賀県を後にした。

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今週もお読みいただきありがとうございました。滋賀も広くて行きたい場所が色々あって迷いますよね。私は車がないので行動範囲がどうしても限定されますが、今回はそれでも充分に楽しめる旅でした。しかも名古屋に戻ってからも直帰せず、映画館のレイトショーで『エルヴィス』を観てきたという……。

ちなみに文中で登場したテレビ放送、ご覧になられた方はいらっしゃいますか?ついに明日、23日の深夜に後編が放送予定です!保坂さんの興味深いお話と、ライターの浦島さんのオススメ美術館情報は必見!!(放送地区外の方、すみません。私もですが…汗)
詳しくはこちら↓

◆次回予告◆
『接客業のまみこ⑲⑳』

それではまた、次の月曜に。



*西へ東へ宇佐江ゆく。他のおでかけ話はこちら↓




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