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さて今週は、なにを捨てよう?

そう思い立った日曜日を私は「毎週、何かを捨てる日」に制定した。
今回はそんなお話。

先日、無印良品で小さな棚を買った。仕事机に積み重なり作業スペースを侵していた書類や画材をひとまとめに収納したくて、すでに使用していた棚と同じシリーズを、ドッキングして現在使っている。片付け後は机の上がすっきりとパソコンひとつ。
見るたびとても気持ちが良い。

しかし、片付け中に不思議なことが起こった。棚にモノを収めても収めてもまだ床や机にはモノがたくさん残っている。もう彼らが収まるべき場所はない。新しくスペースを拡大したのにいったいどうして?

そのとき、なんだか忘れたがなにかを計算しようと思い立ち、電卓を探して引き出しを開けた。すると今度はレシートの山。家計簿と電卓しか入っていないはずの引き出しにはいつのまにか数か月分もサボッた家計簿未記入のレシートや、去年分からある公共料金の控え等がいっぱいになり、肝心の電卓は影も形も見えない。

…捨てよう。

そう思うや否や、空き封筒にレシート束をがんがんつっこんだ。給与明細など必要最低限のものだけを残し、ぱんぱんに膨れた封筒をガムテでぐるぐる巻きにして可燃ごみにポイ。引き出しからは救出された電卓と家計簿と、なぜか1円玉が2枚出てきた。ずっと心の隅で「やらなくちゃやらなくちゃ」と居座り続けていた家計簿の整理をいったんチャラにして心がすっきり。ちょうど月初めだったので、今日から再スタートすればよい。

捨てる。これだ、今の私に必要なことは。

「とりあえず」取っておいたものみんな、これからどんどん捨てていこう。


そう思い立った日曜日を私は「毎週、何かを捨てる日」に制定した。


捨てるものリスト①展覧会パンフレット

高校生の時から美術館通いを始めた私は、行くたびに展覧会のパンフレットやキレイなチケットを持ち帰り、丁寧にファイリングしていた。60ポケットのA4ファイル3冊分を超えたあたりから、それらはだんだんと雑な収集に変わり、ここ数年はしばらくすると処分をするようにしていたのでファイルは初期の3冊を残すのみとなっていた。

あらためてその3冊に目を通す。

すでに10数年経っているため、行ったことすら忘れている展覧会も勿論あったが、今でも観たときの感覚や思い出が胸に残っているものもたくさんあった。ダ・ヴィンチの絵を初めて生で観た《白貂(しろてん)を抱く貴婦人》、友人Rと高校時代に追っかけていたインディーズバンドが出演するラジオから生電話が掛かってきたのに、展覧会を観ていて留守電になってしまった『ピエール・ルシュール展』、大学時代、金沢の21世紀美術館で観たマシュー・バーニー。今パンフを観てもかっこいい。博物館実習のとき開催されていた企画、グレイソン・ペリーの可愛らしくも毒気のある焼き物。

大切なものだけを20枚くらい残して、あとはすべてファイルごとごっそりごみ袋へ。

いや待てよ、『見よ、天才レンブラント』。
このコピーかっこいいな…やっぱこれはとっておこう。


捨てるものリスト②昔描いた自分の絵(らくがき)

昔描いた自分の絵。
油画やデッサンは実家にいくつか残っているが、大学時代に描いたらくがきが現在手元に残っていて、その数、大学ノート17冊。パラパラめくると、こちらは展覧会のパンフよりさらに濃厚に記憶が蘇る。自分の描いた絵って不思議で、らくがき1枚とて描いた時のことを非常に鮮明に覚えている。美大で出された課題(絵)が億劫でサボってらくがき(絵)を描いてるってどういうこと?と自分でも呆れるが、10代、20代前半の自分のらくがき帳からは、「描きたい気持ち」よりもっと雑然とした、意識せず手からこぼれてしまったような絵ばかりがとりとめなく残されていた。

消しゴムを使うと面倒なのでらくがきは基本ペンで一発勝負。そのぶん線の強弱には自分の心情がストレートに表れていた。描く小物や構図も、当時自分が何に影響されていたのかが丸わかりで、こっぱずかしくも懐かしい。
太い線で思い切りよく描かれた作品は、今みてもいいなと思った。
描かれているのはたいてい女性像なのだが「普段デッサンやってんな~」とわかるような、骨格の描きっぷりだとあらためて思う。(上手下手ではなく、あくまで描きっぷり。)現在の私はこの部分がだいぶ欠落しているからその点は見習いたい。

しかし。
有名な画家なららくがきひとつでも価値だろうけれど、この絵を取っておいたところで私の場合は話のタネにしかならない。1冊だけお気に入りを残し、あとの16冊は全て処分。ついでに中学~高校時代に描いた(自分的)傑作選の40ポケットA4ファイル2冊分も一緒に捨てた。まかり間違っても絶対に他人様の目に触れて欲しくない作品に関しては最近買ったばかりの高性能シュレッダー様に切り刻まれこの世から消えた。ついでに、カスカスのまま捨てずにとってあった大量のペン類もまとめて捨てた。

今まで不要なものばかりが埃をかぶっていた机下のスペースは、日常的に必要なものだけがボックスに収められ、下にコロコロもつけたので掃除も楽に。

2、3歩下がって出来栄えを見る。
うん。美しい。
ペン立てを片手で避けながらググ~ッと取り出していたファイル類も障害物なくスッと取り出せる。ストレスフリー。
仕事するぞ~って気分があがる場所になった。

でも、見回すと台所、シンク下、押し入れ、ベッド周り。まだまだ部屋はモノで溢れている。試しに食品容器のストック箱を漁ってみたら使わない瓶が10個も出てきた。(実家の母の煮豆や父の手作りジャムを貰って増えていく)


さて来週は、なにを捨てよう。





今週もお読みいただきありがとうございました。先週お知らせしましたが、今回から記事の内容はランダムになります。これまでの美術、猫、おでかけ、雑事に加えてさらに範囲を広げてさまざまなものを毎週書(描)いていきたいと思いますので、今後もよろしくお願いいたします。

◆次回予告◆
『おでかけがしたい。⑧』私と友人Rの温泉巡りの原点となった思い出の旅、「草津。将来と温泉まんじゅう」をお送りします。

それではまた、次の月曜に。


イラスト マ・ターリ20210913_16502069_0007_LI

◆今回処分を免れたもの◆
展覧会をイメージした架空ポスター(大学時代のらくがき)



※ごみを捨てる際はお住まいの自治体の分別に従ってどうぞ。

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