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リビアン、株式上場後の初決算(2021年7~9月期)

11月10日にナスダック市場に株式上場した電気自動車(EV)メーカーのリビアン・オートモーティブ(以下、リビアン)。

1億5300万株を発行し119億㌦を調達するという大型案件だったこともあり、注目度は高く、株価は公開価格78ドルを大きく上回り、100ドルを超えて(100.73ドル)初日の取引を終えています。

時価総額では約900億ドルに達し、ゼネラル・モーターズ(GM)やフォード・モーターを上回り、「次のテスラ」との期待が高まっています。

リビアンのEV展開

リビアンは、EVとその付属品の設計・開発・製造を行う自動車メーカーで、販売店などは持たず、直接販売を行っています。

製造している車種は、2列シート5人乗りピックアップトラックの「R1T」(写真上)と、3列シート7人乗りスポーツ用多目的車(SUV)の「R1S」(写真下)です。

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どちらの車種も、車両エレクトロニクス、バッテリー、電気駆動、シャシー、先進運転支援システム(ADAS)であるDriver+、デジタルユーザーエクスペリエンスマネジメントなど、独自の先進技術システム一式を搭載しています。そして、これらの技術は、クラウドを利用した無線通信(OTA)アップデートにより、継続的に機能を改善・拡張することができます。

また、デジタル技術を活用した融資、テレマティクスを活用した保険、プロアクティブな車両サービス(メンテナンスと修理)、メンバーシップとソフトウェアサービス、充電ソリューション、データ主導型の車両再販プログラムなどのサービスも用意されているようです。

商用車の部門では、大株主でもあるアマゾンから10万台のEVトラック(EDV:Electric Delivery Van)を受注しています。

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そのリビアンが、12月16日に、上場後初の四半期決算(2021年7~9月期)を発表しました。

決算の概要

(100万㌦)    売上高  営業利益  純利益 1株当たり利益
2020年7~9月期    ー    -288    -288   -2.89㌦
2021年4~6月期    ー    -580    -580    ー
2021年7~9月期     1     -776    -1,283   -7.67㌦

前年の7~9月期はもちろん、直前四半期の21年4~6月期まで売上高はありませんでしたが、この7~9月期になり、ようやく100万㌦の売上高が計上されました。

リビアンは9月14日に、全米初のEVピックアップトラック「R1T」を出荷したことを発表しています。最高経営責任者のRJ・Scaringe氏はその様子を自身のTwitterに投稿しています。

9月末までに、11台のR1Tが納入されたとのことです。

新興企業ですので、コストが先行しています。

最大の費用項目である研究開発費は前年同期から倍増の4億4100万㌦しました。R1T、R1Sの車両や、EDVプログラムに関連する取り組みが増加したことが要因です。

販売費・管理費は前年同期比3.7倍の2億5300万㌦と大きく増加しました。本社機能やオフィス拠点、製品の出荷が始まったことによる顧客対応などの業務拡大に伴い、費用が膨らみました。

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その結果、営業損失は前年同期比2.7倍の7億7600万㌦と大幅に増加しました。
また、発行済み Convertible Note(転換社債)に関する損失を4億5800万㌦計上したため、純損失は12億3300万㌦と、前年同期と比べ4.3倍に拡大しました。

直近及び今後の生産・販売動向

前述の通り、9月14日にR1Tが初出荷され、9月中に11台が納入されました。
その後、10月末時点でR1Tは180台生産、156台が納車されています。
ちなみに、資料によると、これらのほとんどがリビアンの従業員に納車されたものだそうです。

また、12月に入り、R1Sの納入も始まりました。
12月15日現在で、R1Sは2台が生産され納入されたことが公表されました。

これらを含め、21年中にR1Tは約1200台を生産し、約1000台が納入予定とされています。
R1Sは、年内に25台を生産し、15台を納入する予定です。

アマゾン向けのEDVも、年内に初号機を納入する予定のようです。

予約注文に関しては、R1TとR1Sあわせて、9月末時点で約4万8000台、12月15日時点では約7万1000台となっています。

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生産を行っているイリノイ州ノーマル工場は、かつての三菱自動車の工場を買収したもので、現在は年産15万台の生産能力を持っています。

資料によると、工場では、車体工場と一般組立ラインがプラットフォームごとに分かれており、バッテリー、ドライブユニット、プレス加工部分はプラットフォーム間で共有されているとのことです。

さらに追加投資を行い、生産能力を年産20万台まで引き上げる計画となっています。

ただ、この工場でR1TとR1S、アマゾン向けのEDVの3車種を同時並行して生産するため、実際の生産台数は生産能力よりもかなり下回るようです。

12月16日、リビアンはジョージア州に第2工場を建設すると発表しました。
持続可能な事業運営、人材プール、サプライチェーンや物流への近さなどを総合的に判断して決定したとしています。

新工場は、2022年夏に建設を開始し、2024年の生産開始を予定しています。
次世代車両の生産にも使う方針で、生産能力は最大で年間40万台になる見込みです。

株価は大きく下落

15日の決算発表を受け、株価は大きく下落しました。
最大の要因とされるのが、生産の遅れです。

前述の通り、R1Tの21年中の生産台数は約1200台を目標としています。
しかし、実際の生産台数が、目標に数百台届かないことを認めています。

これを受け、17日の株価は大きく下落し、一時92㌦台と上場最安値を更新しました。終値でも97.70㌦と、前日比10%を超える(▲10.2%)大幅な下げとなっています。

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ただ、EVの需要は引き続き好調です。

米国では、ピックアップトラックやSUVといったカテゴリーの自動車が人気ですが、こうしたカテゴリーのEVは少ない(ピックアップトラックとしてはR1Tが初のEV、SUVもテスラのモデルYしかありません)ため、リビアンにとってはメリットとなり、予約注文台数がさらに増えていくことが予想されます。

まとめ

・EVメーカーで、21年11月10日に株式上場
・ピックアップトラック「R1T」とSUV「R1S」の出荷開始
・2021年7~9月期にはじめての売上高を計上
・事業拡大に伴う費用の増加が響き、純損失拡大
・予約注文順調増、工場の生産能力拡大へ投資継続





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