アマゾンがアイロボット買収を発表。アマゾンはロボット事業進化、アイロボットは苦境脱出で思惑が一致か
アマゾンが、ロボット掃除機「ルンバ」を手がけるアイロボットを買収すると発表しました。
アマゾンがアイロボットの株式を1株61㌦、負債を含む総額17億㌦を全額キャッシュで買収する予定です。
この発表を受けて、8月5日のアイロボットの株価は、買収価格に幅寄せする格好となり、前日と比べ19%上昇しました。
アイロボット社のコリン・アングル(Colin Angle)会長兼CEOは
とコメントしています。
アマゾンはロボット事業を加速・強化
アマゾンは昨年9月、移動型の家庭用ロボット「Astro」を発表しています。
この「Astro」は、人工知能、コンピュータビジョン、センサー技術、音声、エッジコンピューティングなどの最新技術が導入されていて、外出先から自宅の様子が確認でき、離れて暮らす家族を見守り、映像や音楽などエンタテインメントやスマートホームの制御の役割も果たせるようです。
特徴の一つとして、自宅内を移動して間取りを探索・記憶させることで、ユーザビリティを向上させると同時に、プライバシー管理の観点から、Astroの立ち入りを制限する区域を制限させることができるようにしています。
ただ、直後のレビューなどでは、移動や認識などにかなり不十分な点があることなども指摘されていました。
こうしたこともあり、ロボット掃除機での経験が豊富なアイロボットをパートナーに選んだということは想像できます。
アイロボットは業績不振が痛手
一方のアイロボット、世界のほぼすべての地域で圧倒的なシェアを誇っています。
一方で、中国企業の台頭などもあり、競争が激しくなってきています。
また。新型コロナによる一時的な需要増の反動もあって、トップ企業であるアイロボットも、直近は業績が低迷しています。
2022年4~6月期決算発表
アマゾンによる買収発表と同時に発表したアイロボットの2022年4~6月期の四半期決算は以下の通りです。
売上高は2億5540万㌦で、前の年の同じ期よりも30.2%減少しました。
北米やEMEA地域の小売業者からの予期せぬ注文の削減、遅延、キャンセルの影響が大きかったようです。また直販も予想を大きく下回り、ここに為替変動の影響が加わったとしています。
支出面では、売上高の減少に伴い販売原価も減少しましたが、マージンは低下しています。また、販売・マーケティング関連や一般管理費は前年とほぼ同水準に抑えましたが、研究開発費は増加しました。
その結果、営業利益は6390万㌦の赤字でした。前年の4~6月期も営業赤字でしたが、赤字幅は大きく膨らんでいます。
純損失は4300万㌦で、税の戻し益分だけ営業赤字から縮小しました。
キャッシュの流出が顕著
アイロボットは昨年後半からの業績の悪化で、キャッシュが大幅に減少しています。
1年前に4億ドル強あった現預金残高は、昨年末に2億㌦、そして直近期末時点では6340万㌦にまで減少しています。
昨年の4~6月期以降、フリーキャッシュフロー(FCF)はマイナスが続いてきましたので、台所事情は日増しに厳しくなっていったのではないでしょうか。
同社は現在、事業再構築を行っているところで、
・非中核エンジニアリング事業を低コストの地域に移管
・ジョイント設計製造の活用拡大
・マーケティング関連資源の配分効率化
・グローバル施設の縮小と人員削減
などに取り組んでいます。
こうした構造改革関連の費用(500~600万㌦)を22年7~9月期に計上する見込みです。
アイロボットとしては、競争力やシェアを維持するための研究開発は欠かせないわけですから、アマゾンの傘下に入り厳しい台所事情から脱却できることは渡りに船だったかもしれません。
まとめ
・アマゾンがアイロボットを総額17億㌦で買収すると発表
・アマゾンは昨年9月に家庭用ロボット「Astro」を発表
・2022年4~6月期のアイロボットの売上高は前年比30%減少
・アイロボット、純利益と1株当たり利益は3四半期連続で赤字計上
・アイロボットのFCFはマイナス続き、現預金が急激に減少
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