見出し画像

米国のフードデリバリー最大手・ドアダッシュ、ついに日本上陸。

最近、街中で「Uber Eats」の黒い大きなリュックを背負った人が乗る自転車や、「出前館」のバイクをよく見かけます。
これまでも、お寿司や釜飯、ピザの宅配バイクは普通に走っていましたが、明らかに、その種類も数も増えてきています。

新型コロナの感染拡大で、外で食事をすることが難しくなってきたせいで、フードデリバリーを利用する人が確実に増えてきていることがわかります。

さて、そんなフードデリバリーの世界に、新たな黒船がやってきました。
その名は「ドアダッシュ」、アメリカの最大手企業です。

ドアダッシュってどんな企業

ドアダッシュは、スタンフォード大学の学生だった現CEOのトニー・スー(Tony Xu)、スタンレー・タン(Stanley Tang)、アンディ・ファン(Andy Fang)、そしてエヴァン・ムーア(Evan Moore)の4人が2013年に立ち上げた、創立9年という若い企業です。

創業当初、4人の創業者は、昼間は学生をしながら、夜は自らが配達員となって、主に大学のキャンパス内で食べ物を配達していたようです。
すぐに、デリバリーは周辺のオフィスや家庭にも広がり、利用者は順調に増えていきます。

ビジネスを開始して間もなく、スタートアップ・アクセラレーターである「Y Combinator」に合格し、プログラムに参加、シードマネーを得ます。

ちなみに「Y Combinator」は世界最高クラスのスタートアップ・アクセラレーターであり、Airbnb、Dropbox、Coinbase、PagerDuty といった企業を輩出しています。ドアダッシュも、その中の一つということになります。

その後、複数の投資家から資金の提供を受け事業は拡大していきます。
そして、2016年頃までには、米国のフードデリバリー業界における地位を築いています。

ドアダッシュのビジネス

ドアダッシュは、マーチャント(加盟店)と消費者、そしてダッシャーと呼ばれる配達員を結びつけるローカルプラットフォームを提供しています。

画像1

まず加盟店に対しては、事業の運営と成長を支援するサービスを提供し、加盟店のネットワークを拡大させることを目的としています。

現在、米国内のほか、カナダと豪州を含め、加盟店は45万店以上になっています。仙台でのビジネスがスタートした日本でも、全国チェーンの飲食店のほか、地元の飲食店も複数加盟したことが発表されています。

加盟店向けに提供するサービスには、以下の6つのタイプがあります。
Marketplace
Self-Delivery
Storefront
DoorDash Drive
DoorDash for Work
DashMart

「Marketplace」は主力のサービスであり、Webやアプリからの注文に対し、商品を提供し、ダッシャーが配達を行うというサービスです。

「Self-Delivery」は、注文を受けた商品を加盟店自らの配達ドライバーが対応するというサービスです。ダッシャーではなく自社で配達することにより、コミッションレートを低く抑え、配達料金等を得ることができる点が、加盟店にとってのメリットとなる仕組みです。

「Storefront」は、加盟店のWebサイトやアプリの中に、ドアダッシュの予約・デリバリーシステムを導入するサービスです。

「DoorDash Drive」は、加盟店の独自サイト・アプリからの注文を、ダッシャーが配達するという仕組みで、この間にドアダッシュの名前を一切表示させない点が特徴です。加盟店のブランド維持を重視したサービスとなっています。

「DoorDash for Work」は、加盟店とユーザー企業をつなぎ、ランチやケータリングなどの受注・提供につなげるというサービスです。

「DashMart」は、ドアダッシュが提供しているオンライン・コンビニエンスストアで、加盟店はこのショップで商品を販売することができます。

画像2

現在のところ、加盟店はレストランなどの外食、食品産業が大半を占めています。
しかし、将来的には、食品以外の加盟店を増やしていく予定であることを表明しています。

ユーザー数は2000万人以上

ユーザーは、Webやアプリから加盟レストランのメニューを注文し、配達を受けたり、店舗で受け取ったりすることができます。
ユーザー数は2000万人以上に達しています。

ドアダッシュは、定額サービスである「DashPass」を展開しています。
月額9.99ドルを支払い「DashPass」の会員になると、12ドルを超える注文では配送料が無料、サービス料も割引となる仕組みです。
また提携しているドラッグストア・ウォルグリーンの店頭で取り扱っている食料品や日用品、化粧品などの商品を購入することもでき、もちろん配達料は無料です。

「DashPass」は、現時点では米国内とカナダでのサービスとなっています。

最新の決算動向

ドアダッシュは2020年12月に株式を上場しました。

画像3

この半年間の株価の動きを見ると、かなり大きく触れていることがわかります。

5月13日に2021年1~3月期の四半期決算を発表しました。

 (100万㌦)    売上高  営業利益  純利益 1株当たり利益
2020年  1~  3月期     362   -123   -129    -3.05㌦
2020年10~12月期     970   -305   -312    -2.67㌦
2021年  1~  3月期  1,077     -99   -110    -0.34㌦

売上高は10億7700万㌦で、前年の同じ時期のほぼ3倍(197.5%増)と大きく増加しました。
数字が確認できる2019年1~3月期以降の四半期ベースの推移を見てみると、とくに新型コロナの感染拡大で飲食店の営業停止が本格化した20年4~6月期以降、急増しています。

画像4

支出面では、売上高の拡大に伴い、さまざまな費用・コストも増加しました。売上原価は前年同期比2.9倍、マーケティング関連費用は2.2倍、研究開発費は2.4倍、一般管理費は2.1倍など、ほとんどの項目で倍増以上となりました。

その結果、純利益は1億1000万㌦の赤字、1株当たり利益(Non-GAAPベース)は0.34㌦の赤字となりました。

重要な経営指標

ドアダッシュの事業状況を見る指標として、

①総注文数(Total Orders)
②Marketplace GOV

があります。

総注文数は、ドアダッシュのプラットフォーム上で完了したすべての注文が含まれます。

21年1~3月期の注文数は、3億2900万件で前年同期比3.2倍(219%増)となりました。DashPass導入によって既存ユーザーの利用が増加したこと、Driveの注文数が増加したことなどが要因と述べられています。

また、ベビー用品やペットフード、変わったところでは新型コロナのPCR検査キットなど、取扱カテゴリー・商品を増やしています。これにより、新規顧客が増えたことも寄与したようです。

Marketplace GOVは、ドアダッシュのプラットフォーム上で完了した「Marketplace」「DoorDash for Work」などで完了した注文の総額になります。ここには税金やチップ、Dashpassの会費が含まれています。
ただし、「DoorDash Drive」からの注文による代金や加盟店への手数料は含まれません。

21年1~3月期の Marketplace GOV は、99億1300万㌦で、こちらも前年同期比3.2倍(222%増)となっています。

画像5

今後の見通し

21年4~6月期と21年通期について、以下のような見通しが公表されています。

<Marketplace GOV>
2021年4~6月期:94~99億㌦
2021年通期 :350~380億㌦

足元、米国では新型コロナのワクチン接種が進み、店舗の営業再開が進んでいます。
そのため、とくに新規ユーザーの増加の伸びが鈍化したり、利用頻度の低いユーザーのリピートが低下したりするなどのマイナスの影響を見込んでいます。

まとめ

・2013年創業のフードデリバリー米国最大手
・米、カナダ、豪に加え、日本でも事業開始
・外食を中心に、日用品、ペット用品など新規分野にも拡大
・2021年1~3月期は総注文数、売上高ともに前年比約3倍と急成長
・コロナワクチン接種進み、成長ペースは鈍化見通し


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?