【舞台】銀河の底（2022年度版）

劇団MAHOROBA＋α　vol.9　『銀河の底』
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こちらは上演権は付随しておりません。
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【登場人物】
女王鵜鷺
アル・スハイル・アル・ムーリフ
ラカーユ
ナオス
カノープス
カビ爛々
カビ凛々
カビ恋々
カビ論々 
 
 

開幕。
舞台上には複数の人。
それぞれ単眼鏡を目に当てて上を見ている。
凛々だけが下を見ている。
 
爛々　　　　ここが南十字。
論々　　　　なるほど。
凛々　　　　なるほど。
恋々　　　　こっちにおおいぬ座。
論々　　　　おっけー。
凛々　　　　おっけー。
爛々　　　　ここからここまでアルゴー座。
論々　　　　でかくない？
恋々　　　　でもアルゴーはギリシャ神話に出てくるとてつもなくでかい船ですから。
論々　　　　ちょっとでかすぎるな。船を部品でわけよう。竜骨座、とも座、帆座、……。
爛々　　　　羅針盤座、どうですか。
論々　　　　いいねぇ。
恋々　　　　さっきからどこ見てんの。
凛々　　　　ほらここにも銀河が。
恋々　　　　それはカビだろ。
凛々　　　　でも形がそっくり。見てよほら。
爛々　　　　ところで博士これはどの星の話なんです？
論々　　　　天の川銀河、太陽系第三惑星、地球。
恋々　　　　そんな星ありましたっけ？
論々　　　　これから生まれる星の話だよ。
 
なんかかっこいいオープニング。
 
論々　　　　劇団マホロバルファ、第九回本公演、銀河の底2022…
凛々　　　　あ、胞子が飛び出した！
論々　　　　いいとこだったのに。
恋々　　　　蓋しておかないから。
凛々　　　　ごめぇん。
爛々　　　　いいから追え！
凛々　　　　なにか言ってますよ。なになに「地球は青かった」？
爛々　　　　どんどん速度を上げていく！
恋々　　　　胞子が光の速さに到達！
凛々　　　　星になった！
論々　　　　いい頃合いだ。これより実験を開始する。
 
手にしたシャーレに大仰に蓋をする。
同時に暗転。
 
ラカーユ　　実験開始１日目。変化なし。実験開始２日目。変化なし。実験開始３日目。変化なし。実験開始４日目。カビが発生する。
 
照明に変化。光が徐々に増えていく。
 
ラカーユ　　実験開始５日目。カビが増殖する。
 
照明に変化。
 
ラカーユ　　実験開始６日目。コロニーを形成する。
 
照明に変化。
舞台上の何かが見えだす。
それはうごめくカビである。
 
カビ達　　　実験開始６７日目。実験開始３８９日目。実験開始２９４０日目。実験開始５５１７２日目。実験開始９９９２４９日目。………。（各々がバラバラに数字を言う。その数はだんだん増えていく）
ラカーユ　　実験開始１８２３１７５０日目。宇宙船が降ってくる。
 
高みに女王鵜鷺の姿が現れる。
 
女王鵜鷺　　「うさぎうさぎ、なにみてはねる、十五夜お月さま見てはねる」何を見てるの。何を。
アル　　　　何を見てる？
 
舞台は宇宙船の一室になる。
そこにいる女アルと少年ラカーユ。
 
ラカーユ　　ホーシ。
アル　　　　伸ばしすぎだ。あれは星。
女王鵜鷺　　何を見てるの。
ラカーユ　　ホタルだ。光ってるもの。
アル　　　　星だ。
女王鵜鷺　　何を見てるの。
ラカーユ　　金貨だ。光ってるもの。
アル　　　　星だ。
ラカーユ　　あれ、欲しい。
アル　　　　だから伸ばしすぎだ。そんなことよりまだ見えないのか。
女王鵜鷺　　何を見てるの。
アル　　　　この狭苦しい宇宙船で旅立ったのは太古の昔。オレの曾々々々々爺さんよりももっと爺さんが生まれる前の話。タイヨー系第三惑星。別名水の惑星。青い星。その星の名はチクウ。違ったかな。確かそんな響き。うまく発音もできないくらいにオレにとっては過去の遺物。オレの眼球はもっと先を見据えているのさ。
女王鵜鷺　　何を見てるの。
アル　　　　宇宙の端っこ。…誰か何か言った？
女王鵜鷺　　……。
 
女王鵜鷺、退場。
 
アル　　　　沈黙。なるほど空気のない宇宙は代わりに沈黙で満ちている。並々と注がれた沈黙はけれども決して溢れることはない。なぜならば。
ラカーユ　　ペトリ。
アル　　　　宇宙は広がり続けているから。膨張を続ける宇宙の端っこ。その天井でも壁でも床でもいい。そこに辿り着いて手形をつける。それがオレの使命。それがオレたち一族の使命。

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