古文の授業が30年後に役に立った話

4月中旬のお茶のお稽古で出されたお菓子の銘は「みやこどり」でした。
なぜか。

4月中旬から5月にかけて、かきつばたの花が咲きます。
根津美術館では、毎年この時期、尾形光琳の「燕子花図」が公開され、庭園では燕子花が咲いています。
この「燕子花図」は、平安時代の『伊勢物語』の「東下り」のエピソードがテーマ。『伊勢物語』の主人公は歌人在原業平がモデルと言われています。
そのエピソードの和歌がこちらで、頭の文字が「かきつばた」となります。

からころも
きつつなれにし
つましあれば
はるばるきぬる
たびをしぞおもう

つまり、「かきつばた」と言えば、「在原業平」を連想せよ、ということです。

そして、同じく在原業平の和歌でもう一つ有名なのが、こちら。

名にし負はばいざ言問はむ都鳥
わが思ふ人はありやなしやと

ここで、「みやこどり」が出てきます。
「季節の花の燕子花」から、「在原業平の和歌」を連想して、そこからお茶のお菓子が「みやこどり」だったのです。

高校の授業で古文の先生は、「まあ有名な歌だから覚えておいてください。」と言っていた気がします。「こんなもの覚えて将来何使うんだよ。」と思ってました。まさか、30年後に役に立つとは思いませんでした。

よくよく考えたら、日本の絵画や工芸のモチーフは、和歌が題材にされていることがよくあります。「当然わかるよね。」というていで描かれているので、たぶん今まで結構スルーしてきてしまったのではないかと思います。

和歌は日本の美意識の源泉。
和歌は、昔の詩の形、にしか思えなくて、苦手な領域でしたが、日本美術を見るときに、やはりここを避けては通れないのだと改めて思いました。

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