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騙されないように、疑われないように

最近、個人のお宅に電話をかけると大抵留守番電話につながる。そもそもスマートフォンが普及して固定電話も少なくなってきた現在、わざわざ固定電話に掛けてくるのはネットやガスや電気の勧誘か、詐欺系の電話ばかりになっているからだろう。だから、電話に出る手間を省くため、とりあえず留守番電話機能を使うのだ。そして「お忙しいところすみません、〇〇ですが…」というこちらの名前が聞こえたところで、それが知人であれば受話器を取るということのようだ。見知らぬ業者からの長電話に付き合っているほど暇ではないのだろう。対話を始めてしまうと面倒なので、受話器を取る前に留守電機能で確認ということだ。

電話って、しずかな状況にいきなり割り込んでくるので、僕はあまり好きでない。だから、自分が掛ける時はすこし申し訳ない気持ちにもなる。
留守番電話にいったん切り替わり、ピーという発信音の後に声を入れる。その最中に「はいはい、お世話になっております」と受話器が上がる。もう慣れた。まるで、昔からそういう手順で電話がつながるものであったかのような気持ちだ。

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北海道のニュースが流れていて、30代の男性がフィッシング詐欺にあったという。メールからそれらしく作ったサイトへと誘導し、氏名・住所・暗証番号などを吸い取られて預金から740万円をだまし取られたそう。

オレオレ詐欺で年配の方が貴重な老後の資金をだまし取られるのも、働き盛りの方が大切な貯金をだまし取られるのも、本当に胸の痛む話だ。
まるで本物のようなサイト、本物のようなメールであっても、騙されないように。

相手を疑ってかかるというのはあまり気持ちのいいことではないけれども、しかし疑うことにも慣れていないと危ないということがある。そして、自分自身が疑われることにも慣れておき、疑われる可能性をも警戒しないといけない。

公園で子どもに声はかけない方が良い。夜道で、たまたま同じ方向に歩いている女性の後を歩くときは距離をとって歩いた方が良い。満員電車に乗るときは、両手を吊革に挙げておいた方が良い。
逆もそうで、公園で子どもだけで遊ばせない方が良い。夜道は一人で歩かない方が良い。満員電車に乗るときは、周囲に気を付けて。

騙されないように、さらに疑われないように。そういう時代だから。
悪い人が悪いことを巧妙に仕掛ける時代だから。
自分の身は自分で守る。そして、悪くないのであれば、明らかに悪くないことが分かるようにする。悪くなくても疑われることをしているほうが悪いと言われる可能性のある時代だから。

まあ、そうなんだけどね。仕方ないんだけどね。

便利になったことで、新しい不便が生まれる。安全が広がることで、新しい方法で危険が隠されるようにもなる。
でも、最初の不便よりはやっぱり快適にはなっているのかなとは思うし、危険が野放しになっているよりは、まだましなのかなとは思う。

とはいえ、移り行く便利・不便、快適・不快も、人によって感じ方は異なるかもしれない。

法律や制度も、インフラや科学技術、また国民性なども考慮に入れて整備していくことになるのだろう。時代は流れていき、否が応でも、我々もその時代の一部を担っており、積極的でも消極的でも、時代を作ってしまっている。

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