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アウターゾーンより、悪魔の話

今からもう30年前くらいになるのでしょうか、当時少年ジャンプで『アウターゾーン』という漫画が連載されていました。
世にも奇妙な物語(今でもあるのだろうか?)に似ていなくもないような、基本的に一話完結で、毎回場面も主人公も違って、現実の世界とその外にある不思議な世界とつながってしまったような人とのエピソードが毎回紹介されました。
ミザリーという、水先案内人のような女性がいて、その人のお店で買ったアイテムがきっかけで不思議な世界とつながりができてしまう人がいたり、あるいは先に不思議な世界とのことに巻き込まれてしまい、ミザリーのお店に駆け込んでくる人がいたりなど、さまざまなケースがありました。
こういう物語だと、つい不思議な世界に巻き込まれたまま理不尽に不幸な目に遭ったり、あるいは殺られるような内容になりがちなのですが、作者は懸命に、真剣に生きようとする人が報われる結末を書くようにしていたそうです。
ハッピーエンドを考えるほうが、バッドエンドを考えるよりも難しいので、時間や気力がないときにはバッドエンドにならざるを得ない場合もあったということですが、そういう動機があったせいか、けっこう道徳的な話が多かったような覚えがあります。(わしはサンタじゃ、というようなお話とか、幸福を呼ぶ首の話や、猿の手のお話など、もともと妹の本を読ませてもらっていたので、今手元に作品がないのですが……)。

そんな中で、今でも度々思い出すのが、高校生が悪魔を召喚する話です。
オカルト研究会のようサークルに入っている生徒が、高校の文化祭で悪魔を召喚するデモをしよう、という話になり、ミザリーのお店に道具を借りにいきます。ミザリーは「人が多いところでは悪魔は出ないから大丈夫」というのですが、好奇心旺盛な子供たちは、夜、学校に忍び込んで、悪魔を召喚してみることにします。
杖かなにかを持っていたらそれで悪魔に命令できるから大丈夫ということだったのですが、悪魔が現れて、動揺し、魔法陣の中で四人がぶつかったりしているうに、杖を離してしまって悪魔に命令ができなくなってしまいます。魔法陣の一部であるろうそくが燃え尽きたら、悪魔は魔法陣の中の彼らをとって食ってしまいます、さてどうなるのか、後半に続く……。
(以下、ネタバレあり……ネタバレもなにも、こんな情報からではどの回か探し出せませんが……)



せまい魔法陣の中でなす術もなく、目の前では悪魔が舌なめずりをしながらろうそくが燃え尽きるのを待っている……。
悪魔が姿を消し、警備員さんが助けにきてくれたかと思えば、実はそれは悪魔が化けたものだったりなど、万事休す……、と思われたのですが、メンバーの一人が、「あの悪魔、俺たちがけんかするたびに大きくなってないか?」と言い出します。
A子さんはB子さんがかわいいことをねたんでいた、B子さんはA子さんが勉強ができることをねたんでいた、C男君はD男君がオタクすぎてなんだこいつと思っていた、D男君はC男君が女子のことばかり考えているのが気に食わなかった、など、一見仲良くやっていても、実はお互い不満を抱きあっていることを告げ合います。
では、どうしたら助かるのか……?
四人は、手をつないで一斉に魔法陣から出ることにします。
誰か一人でも、自分だけがかわいいと思って足を出さなければ、出て行った人はそのまま食われるし、残った人はろうそくが燃え尽きたら食われて、全滅です、そうはいっても、みんなちゃんとお互いを信じて、せーので外に出ることができるのでしょうか……!?
という内容です。結果はあえて言いませんが、まあおそらく予想通りだと思います。
この話を読んで、環境問題とか、そういうのもけっきょくはそういうことなんだよなと思ってしまった覚えがあります。
あまりにいろいろ複雑すぎて、理解しようと思ってもきりがないのですが……、少年誌でさらっと(でもないけれど)こんなことを書かれるなんて。
とても本質を突いたお話だと、今でもときどき思い出されます。

…何十年も前に読んだ漫画なのに、覚えているものですね…。
アウターケースの文庫本には、毎回作品についての解説がしっかり書かれていて、それもとても面白かったです。
今の子どもたちにも読んでみてほしいな…!

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