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うろこ流! 小説の書き方講座 #9[読みやすい文章って?]


 どもどもー! 「そろそろ苗字いじりも変換も面倒」でお馴染み洞施(うろせ)うろこです。ちなみに語感と画数で決めました!
 普段は男同士で秘めやかに進んでいく交流(意味深)のWEB小説を書いたり、そのキャライラストを描いたりしながらTwitter・投稿サイトを渡り歩いています。

 小説書き歴が長い素人による初心者向け小説の書き方講座。今回はズバリ! 『読みやすい文章』についてお話したいと思います。らいなうっ!


第九回『読みやすい文章って?』

 小説を書く人ならば誰しもが躓き、そして悩み続ける議題です。
 短ければ説明不足と言われ、長ければ冗長と呆れられ、挙げ句、何が言いたいのか分からない、読みにくい、文章から何も伝わってこない、目が滑る、エトセトラエトセトラ……

 うああぁあっ! 文章書くのがどんだけ大変だと思ってんだ! 好き勝手なことばっか言いやがって! そんなに言うなら書いてみろよおおおぉっ!!

 ……なんて、内心穏やかならぬ七転八倒をすることもしばしば。
 更に書き慣れてきた頃には、自分自身でも(うわこれ何言いたいのかさっぱり分からん。何でこれでイケると思ったのバカなの○ぬの?)と、自己罵倒しきり。
 なかなかに根深い悩みなのです。

 そんな根深い悩みに真正面からどーん! と向き合って考察していっちゃいましょう!



・まずは伝えることを意識。

 それはもう耳にタコができるほどに言われる『5W1H』。
 『何が・誰が・いつ・どこで・何故・どのようにして』を明確にするということですね。

 そんなの、小説に限らず文章を書く時に言われることでしょ? 基本なんだからできるって。

 ……と思っていても、案外できてないんですよ。数日おいて後で読んだ文章があまりにも酷くて、一体何を言っているのか分からない……なんてよくあることです(経験者談)

 実際に文章を書いた時に、どうしてこんな基本が抜けてしまうのか。それは、書く側と読む側には、物語に対する情報量の違いがあるからです。

 書く側には、物語の全容が理解できています。しかし、読者が知り得るのはあくまで表に出てきた部分だけなのです。

例:
 明日のためにも、今夜の内にスポンジを焼き上げておかないと。何しろ一大イベントなんだから。ケーキを前にしたリョウの喜ぶ顔を想像すると、思わずほっぺが緩む。

 はい。例文から何が読み取れますか?
 まずは『明日何かのイベントがある』こと。語り手は『リョウのためにケーキを焼く』こと。そして恐らく『リョウは喜んでくれるだろう』こと。

 ところで、語り手の性別ってどちらだと思います? 明日のイベントの内容は? リョウって男ですか、女ですか?

 ちなみに、私は『語り手は男性』、『明日はリョウの誕生日』であり『リョウは語り手の彼女』ということを想定して書いていました。読み取っていただけました?

 全然、意味が分からないんだけど! と苛立ったみなさま、正解です。この例文で私の想定を読み取れたよ、という方がいたら、あなたはおそらく『変人』です(失礼)

 つまりはそういうことです。私は例文の裏にある情報を全て理解しているから、この例文を読んでも違和感はないんです。
 でもみなさまは、何も情報がないままに例文を読みましたね。
 そんな状態で例文の何が読み取れるでしょう。書いている情報以外に分かることはないんです。

 この短い例文でも情報が足りなくてストレスになるくらいです。もしもこの調子で二千文字、三千文字と進んでいってはもう何が何やら。

 自分ではなかなか気付けない違和感。必要な情報が本当に読者に伝わっているのかをしっかりと考え、伝える意識を常に持つようにしましょう。



・情報量が多すぎるのは✕。

 前項で『情報を伝えるのは重要』と言いました。読者は何も持たない状態で物語に触れるのだから、と。
 なら、どんどん情報を出すぞーっ! なんて焦ってはいけません。

 何故なら、一気に情報が入りすぎると一つ一つの印象が薄れてしまうからです!

例:
 明日誕生日を迎える俺の彼女のリョウは、本当に可愛い女の子だ。いや、女の子なんて言ってしまうときっと怒られるだろう。もう二八歳になるんだし、子供扱いするといつも怒るんだから。おまけに勤めているアパレル会社ではバリバリ働くキャリアウーマンで、部下も何人もいる。部下たちの間では『鬼の主任』なんて呼ばれているらしい。でもパッチリした目やふっくらした輪郭が特徴の童顔だし、甘いものが好きな辺りも子供っぽい。おまけに俺にしょっちゅう「ナオちゃん大好きー」なんて甘えてくるんだから、可愛い女の子って表現だって間違ってない。黒髪でストレートロングなのがまた可愛さに拍車をかけているんだよな。俺はずっと彼女にベタ惚れだ。男のくせに彼女に誕生日ケーキを焼いてしまうくらいに。

 追いつけない……何だか彼が彼女にベタ惚れで、ずっと可愛い可愛い言っていたことくらいしか印象に残らない……

 一段落に全て詰め込んだせいもありますが、そんな一度に情報を出されても。明日誕生日? 名前はリョウさん? ニ八歳になるところでキャリアウーマンで子供扱いが嫌……って、まだ続くの!?

 読みながら情報が整理できる量じゃない。そうなると『読みやすい文章』からはどんどんかけ離れていってしまいます。
 伝えないと、と焦って情報を一気に出さず、適度に分割して読者に提示してくださいね。


・一文が長すぎると読みにくい。

 小説というものは基本的に文章のみで構成されます。そう思うとついつい文に力が入ってしまいがち。
 美しい文、詳細な文、情報が乗せられた文――と、気付けばつらつら長くなっていた! そういうことも起こり得ます。

 しかし、長すぎる文は見ただけで目が疲れてきてしまいます。

例:
 リョウの目の前に満を持して手作りケーキを差し出すと、彼女は一度大きく目を見開いてから両手で口元を覆い、そしてふにゃっと、まるで溶け始めたマシュマロのような甘い笑顔を浮かべた。

 ……長いです。長すぎます。これ一文ですよ? 我ながらよくこんな長い文を書けたものです。

 さて、この文は日本語としては成り立っていますね。でも、この文の中で一番表現したかったのは……と考えるとよく分からない。
 何故分からなくなるのか。それは、一文の中に要素が多すぎるからです。

 例文の中には、『語り手が手作りケーキを彼女に差し出した事実』『彼女が驚いた様子』『笑顔の比喩表現』『彼女が喜んでいる描写』の四つが含まれています。
 繰り返し言いますが、この四つがたった一文に含まれているんです。読む方にも負荷がかかるのは必至じゃないですか。

 楽しもうと思って読み始めた文章で負荷がかかるのは嫌ですよね。なので、その負荷をなくすために、情報を分割してしまいましょう。

修正例:
 リョウの目の前に、満を持して手作りケーキを差し出す。彼女は一度大きく目を見開いてから両手で口元を覆うと、ふにゃっとした笑顔を見せた。まるで溶け始めたマシュマロみたいに甘い笑みだ。

 あの一文が三つに分割されました! 要素がコンパクトにまとめられて、ストレスが緩和されたのではないでしょうか。

 何事も詰め込みすぎはよくないということですね。


・短い文が続くと単調になりがち。

 前項では『長すぎる文はよくない』と説明しました。じゃあ、短ければいいのか、というとやっぱりそんなことはないんですよ。

例:
「美味しい」
 すごい。言いながら彼女がはしゃぐ。作った甲斐があるな。リョウの皿の上。乗せられたケーキがどんどん小さくなっていく。いつもは食べすぎを気にするのに。今日は二切れくらい食べてしまいそうだ。きっと明日後悔するんだろうな。でも今日は誕生日。特別な日なんだ。大目に見てあげよう。

 えーと……自分で言うのもなんですが、ちょっと頭悪そうな文ですね……

 それはさておき。例文は読んでいてやたらブツブツと切れる、まとまりのない文章に見えてきますね。コンパクトにまとめろ、と言われたからってこれはあんまりです。箇条書きの羅列を見せられているようで、文章――ひいては小説を読んだ感覚はありません。

 取りあえずこのバカっぽ……少々ゆるい例文を引き締めるつもりで、箇条書きを組み合わせていきます。

修正例:
「美味しい」
 すごい、と言いながら彼女がはしゃぐ。作った甲斐があるな。リョウの皿に乗せられたケーキはどんどん小さくなっていった。いつもは食べすぎを気にするのに、今日は二切れくらい食べてしまいそうだ。きっと明日後悔するんだろうな……でも今日は誕生日。特別な日なんだ。大目に見てあげよう。

 まだ修正はしたいところですが、ひとまず組み合わせてみました。これでぶつ切り感は和らいだと思います。
 極端に情報量が少ない細切れ文というのも読んでいてストレスが溜まりますね。
 『適宜』という匙加減は、読み書きを繰り返しながら自分なりに模索してください。そこが作者の味になると思うので。


・一文辺りの文字数は? 単調にならないためにはどうしたら?

 平均文長という物差しがあります。一文辺りの平均文字数です。
 第七回の講座で文学作品から四作抜き出し、それを『小説形態素解析』にかけましたね。
 詳しくはこの記事で。

 四作品の中では『白痴』が一番多くて49.1。逆に一番少ないのは『夢十夜』で25.8です。
 『夢十夜』は小説かと問われると答えに悩みますが、まあ、文自体は短めです。『白痴』は語り口の重厚さが魅力でもあるので、一文の長さには納得ですね。

 『白痴』の一文は長めですしその長文も多めですが、単調には感じません。一文をリズムよく読点(、)で区切ってあるので上手く息継ぎをして読んでいける感覚です。
 『夢十夜』は淡々と書かれていながら、一文の長さはバラエティに富んでいて、短いものでは7文字、長いものでは88文字もありました。
 どちらにも共通して言えることは、声に出した時のリズム感が心地よい、という点でしたね。音読で心地よく聞こえる文章は、黙読していても心地よく感じられます。

 単調にならない文章を書くテクニックで初心者向けなのは、時折短い文を挟む書き方です。


例:
(このまま遣り過ごせ……何もしなければ、何もされない……)
 否が応でも乱れてくる呼吸を整えようと足掻きながら、視界で蠢く影を注視する。つるりとした甲殻に反射する光。それがどういう屈折をすれば、表面の薄紅に暗い緑が混ざるのだろうか。禍々しい彩りから目を逸らそうとすれば、自然頭部のアンテナ様の突起に視点が定まってしまう。うねる無数の突起物。周囲を注意深く偵察する動き。にゅるりと伸び、左右に振れる。かと思えば別の突起が絡むようにして二本纏めて下方へと垂れ下がる。縮まる。そして別の突起が追い掛ける。
 一見くすんだ灰褐色のそれは細かな色のドットによって構成されていた。ゆらゆら、ゆらゆらと彩度の低い赤が、紫が、黄が揺れる。揺れて、混ざり合って、絡まり、連鎖を、
 
 ビイイイイイイィ――
 
 突如響いたブザーのような異音に、千賀は我を取り戻した。思考を失いかけていたことに今更気付く。単純にミ=ゴの動向を眺めていただけだというのに。

 自作(『その瞳に捧ぐ泡沫』ノベルアップ+に投稿しました)からの抜粋ですが、この例文の中に極端に短い文が挟まれているのが分かりますか? そう、たった一単語の『縮まる。』です。
 この後ろの文を合わせて『縮まり、そして別の突起が追い掛ける。』という表現もできますが、『にゅるりと伸び~』からの流れが一定のために安定してリズムが流れていってしまいます。
 それを少し変えて短文(どころか単語)にすることで、ここにアクセントが生まれますよね。たったこれだけでも単調さがなくなり、読み手の飽きを防げると思います。

 文の長さが一定になってきたと感じたら、ぜひ短い文を差し込んでみてください。


・文章のリズム感を養うには。

 ちょっと自慢します。私はそこそこに小説を書いている時代が長い(もう○十年くらい書いてる)のですが、いつも褒められる点があります。
 それは、『文章が読みやすい』と『文章のテンポがいい』です。
 特に『テンポがいい』に関しては、我ながら酷い文章を書いていた頃からずっと褒めていただけていて、自信を持っているところでもあります。

 でも、読みやすい文章に心を砕いた記憶はあってもテンポに悩んだ記憶がないんです。
 自分は一体、この感覚をどうやって培ってきたんだろう。そう考えた時、思い当たることが二点ありました。

 一つは読書ばかりしていたこと。
 そして、音楽……それも邦楽をいつも聴いていることです。

 読書は分かるけど、何で音楽? と思いますよね。
 一見関係なさそうな音楽……邦楽ですが、実はこれが大きいんです。

 まず、歌ってどういうものでしょう。
 簡単に言ってしまえば、旋律に合わせて詩を口ずさむものです。

 そう、旋律に合わせて詩を、言葉を乗せるんですよ!

 自分が好きな音楽には、自分が心地いいと思えるリズムがありますね。そのリズムに合わせて日本語が書かれているんですよ。曲によってはその言葉の群れが、胸を詰まらせるほどに美しく当てはめられているんです。

 これが勉強にならないはずがない! 歌詞と小説という違いはあれど、そこには自分の好きなリズムと言葉たちがあるんですから。

 なので、文章のリズム感を養うため、たくさんの歌を聴くことをおすすめします。余裕があれば歌詞とにらめっこしながら。
 この場合は邦楽、それも日本語多めの歌詞がいいです。……カッコよくても、英語で小説を書くわけではないので……(でも好きだから聴いちゃうのは仕方ない)

 今は音楽のストリーミングサービスもありますし、適度なBGMはすぐ見つかると思います。星の数ほど曲はありますが、できるだけ自分の好みに合った曲をどうぞ♪ 感性を磨くためなので、無理なく楽しく聴いてくださいね。


・その他もろもろ、気になるという点。

 ここからは「こうなってると気になって読みにくい」という点をササッと挙げていきます。

※『~である調』と『です・ます調』が入り乱れている。

 アクセント程度に変化(この講座の中で一、二文くらい『~である調』が入ったり)するくらいならいいんですが、交互に変化したり後半いきなり変わったり、なんてことがあると読みにくいですね。
 感覚的には二人の語り手視点で物語が進んでいるような……視点が定まっていない感じです。
 これを使ったら面白い小説書けるかも? と一瞬思いましたが、恐ろしく難しそうなので頭の片隅にしまっておくことにします……ムリそうだなぁ……


※語尾の母音が揃いすぎ。

 要は『~だった。~と思っていた。~に見せた。~と散ったか。~にあったのだ』と、最後の一音がずっと【あ段】で終わっている状態です。これが【い段】だったり【う段】だったりしても、同様ですよ。
 上手く使えばリズミカルですけど、いちいち流れが止まる印象を受けて読みにくく感じます。

※体言止めが多すぎる。

 体言止めとは、名詞・代名詞で文章を終わらせることです。例えばこの文。例えば、この講座を今読んでくださってるみなさま。といった風に。
 ところどころで使われるといいリズムが生み出されるのですが、使いすぎるとクドく感じてしまいます。用法用量をしっかり守って、適度に使用してくださいね。

※ダッシュ(――)だらけ。

 これは私もやりがちなので気を付けている点なんですけど、余韻が欲しくてダッシュを多用することがあります。
 ほどほどなら有用なんですが、多いとこう、奥歯にものが挟まったような言い方にみえてきます。読んでいてスッキリしないので、ほどほどで! ほどほどでお願いします!

※ただひたすらに説明文。

 情景を書くことは大切ですし、説明は重要です。しかしながら、誰の主観も入らない上に比喩表現も説明のためにしか使われないという文章では、小説を読んでいるのか論文を読んでいるのか分からなくなってしまいます。学生時代にただ教科書を読み続けられた猛者ならあるいは……?

 思い付いた点をいくつか挙げてみました。この辺りは小説を書き上げた後でも修正できる部分なので、本文を書いている間はそれほど神経質にならなくてもいいと思います。


 いかがでしたか? 今回は『読みやすい文章』について、読者視点も交えてお話しました。
 書き続けることで慣れてくるので、注意点を意識しながらどんどん書いていきましょう!
 次回は『設定は出し切るべき?』かどうかについてお話したいと思います。

 ではではー、またお会いしましょう。洞施うろこでした。


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