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『ノベルゲームコレクション』のゲームを遊んでみた感想

『ノベルゲームコレクション』たるサイトがあるらしい。


始めに

明けましておめでとうございます。3月末ですね。
経緯はまるっと省きまして、2024年一発目のnoteは趣向を変え、複数のゲームの感想を一つに纏めてみました。

対象はノベル・ADVジャンルに特化した『ノベルゲームコレクション』というサイトに登録されているフリーゲーム。
ブラウザ版(たぶんスマホ対応用)とDL版(PC対応用)の2種類で遊べますが、制作側の都合でPCプレイ&DL推奨が多めな印象。タップorクリックで全操作可が共通かな。

勝手が分からずお試し感が強かったため、5作中4作はPC操作&ブラウザ版プレイのパターンで遊びました。
概要は以上。制作者様の名前は敬称略です。


THE LOVE HOTEL

気付けばとあるホテルに宿泊する事になったあなた。しかしあなたは何故このホテルに泊まる事になったのか、そもそもどうやって訪れたのか、一人で来たのか誰かに連れてこられたのかすら覚えていない。しかも支配人曰くチェックアウトするにも条件があるらしく、そのためにも、と、あなたに一丁のピストルを手渡してこう言った。
「これがお客様の“力”です」と。

◆作:IEOI

途中で立ち絵有りのキャラ達と話しつつ、各話の最初に出る目的達成のためにホテルの部屋を片っ端から開けて回るクリック探索型ADV。END数は3つ。
調べられる物にカーソルを当てれば形が変わる、退室は画面下の床付近を選択したらOK、アイテムも自動使用と操作はシンプルです。
クリアしたらタイトル画面に【BONUS】が追加され、ラフ絵等が観覧できます。

サイケデリックな色使いと物騒な見目の異形頭、概要欄の『ホラー』に最初こそビクつきましたが、雰囲気がぽいだけでホラー苦手でも気楽に遊べました。ジャンプスケアか?と疑ったところもフェイクでしたし。

冒頭で支配人が「強い言葉をぶつけてくる」と言った通り主人公回りが非常に理不尽。
到着が遅かっただけ、頼まれ事をこなしただけ、気遣っただけなのにやる事なす事裏目に出て、周囲から誤解され疑われ嫌われ憎まれ理解されなくて……と何一つ報われない気分の悪さをフルボイスで味わいます。個人的には先生が特に演技上手い&作中一、二を争う理不尽をぶつけてくるので、ボイス無し文字のみなら「うわー」で済む程度が「うわあ……(ドン引き)」にまで引き上げられて少しダメージ食らいました。全員うわっとは来るけど先生は立場も合わさってエグさ酷い。

物語の展開自体は探索中に見つかる新聞や日記で推理できるので意外性は無し(何だったら父親と会った直後の選択肢で察せられる)。
けれどあるタイミングで流れるBGMの選曲が「予想の範囲内」に終わりそうだった物語に見事罅を入れてくれて、この瞬間強い背徳感と同時に「うわめっちゃ面白!」と最高のカタルシスを感じてしまいました。……後者感じちゃっていいのかなぁ!
この快感は是非体験してほしいです。けど物語の結末上この破滅的昂揚感だけに言及するのはどうなのか……でもインパクト強すぎるんだよな……とりあえずこれからプレイされる方は、道中の理不尽を一旦全部ぐっと飲み込んで、おばさんとの会話が終わってからはっちゃけるのをお勧めします。

気になるところがあるとすれば、ゲーム開始後台詞を2回送ってから、たぶん時間経過的演出で画面が暗転するシーン。誘導アイコン(もうクリックしていいよ~が伝わるようなの)も出ず、いくらか待ってもクリック連打しても動かなくてそこはめちゃ不安になりましたね。4周くらいしたけど次に移るタイミングが未だ不明。
あと単純に少女の行方。人数数えると例の対象じゃないはずだけどどうなったんだろう。


異形のあなた、光と共に。

“私”が訪れたバーにはバーテンダーも客もいない。いるのは2mを超える体躯を燕尾服で纏い、尋常ならざる膂力を身に秘めた――電球頭の処刑対象
殺す私と殺される君との最期の語らい。

◆作:梅ぼとけ

分岐もマルチエンドも無く堂々一本道のノベルゲーム。選択肢は最終的に全て選びますが、会話内容からしても一番上からがオススメ。

システムの面白さも考慮される(と思ってる)ADVと違い、ノベルゲーはネタやコンセプト、文体との相性といった方面にほぼ懸かっている直球勝負ものだと漠然と考えているため、正直好みに合うかプレイ前は少し不安でした。杞憂でした。うん、これ大好き!

気安げな口調で異形頭に話しかけつつも、モノローグでは異形頭を少し畏怖し、でも友愛に似た親しさと哀切の情を抱いている主人公。
見た目と噂に反して温厚で丁寧に主人公に接するも、その裡では生に倦ね、同時に確かな激情も飼っている異形頭。
この二人の心情表現と言葉選びが双方の関係性とシチュエーション、バー全体の仄暗さと異形頭の仄明るさ(実際立ち絵も明滅してる)にぴったりで自然と物語に惹き込まれ、得も言われぬエモさとうつくしさを感じました。うつくしくてエモいんですよ。大事な事なので2回言いました。
その延長でか、二人が物理的に接触するシーンでは色々な意味でハラハラドキドキしてました。
二人の過去や立場は断片的に語られるだけで子細に語られはしませんが(何だったら主人公の性別すら不明)、その欠片から背景を読み取り想像することでむしろ奥深さが出ててgood。

お気に入りは文字送りが遅くなる箇所の台詞、ピアス、主人公が血を流すシーンのモノローグ、ゲームクリア後のタイトル画面、「!」「?」の後にスペースが入ってるところですね。


アンティーク・ワンダーランド

父親と記憶を失ったアーリィ・キャロルが身を寄せるのは、ラビ・ホワイトという青年が店主を務める不思議で奇妙な骨董品店、アンティーク・ワンダーランド。というのも、彼が集める品々は魔法のような特殊な力を宿す〈魔道具〉なのだ。
情報屋のチェシャが今回持ち込んだ依頼もその一つ。何でも隣町で広がっている「悪夢を見た人間が発狂した末に死ぬ噂」は魔道具が原因の可能性があるらしい……。

◆作:水菓子みぞれ

登場人物達と話しながら時には行き先を選択し、時にはバトルし、時にはダイスを振るADV。全3話でEND数は4つ。でも選択肢ミスの即BAD ENDもちらほらある。
クリア後は【ギャラリー】が追加され、ネタバレ込みのキャラ紹介やENDの一覧等が観られます。

第1話のあらすじの印象から「魔道具を回収していくオムニバス? だとしたら話数少ないよな? んでもって想定時間が2~3時間って事は?」と首を傾げながら始めた本作、とっっても面白かったです!

まず演出・デザイン・BGMがどれも格好良くてお洒落。
会話パートと調査パート(※場所選ぶだけだったり調べ物したり色々)とミニゲームパートの3種類ある中、例えば調査パートへの切り替わりとか、会話パート中に突如挟まる特殊選択肢とか、フリーゲームほぼ未経験な身でも判るほど凝ったものが多く、上記2作がシンプルだったのもあり非常に新鮮で目新しかったです(事件のキーワード一覧もあるのガチADVじゃん)。ファンタジックで幻想的なBGMもシーンにぴったり且つ聞き入るものばかりで作者さんめっちゃセンスあるなあとプレイしながら思ってました。
途中で不意に挟まるミニゲームは成功するか毎度ドキドキしましたが、小さい数字から順にクリックするプチ脳トレ・高確率成功するダイス振り等で難易度は低く、合間のちょうど良いアクセントとして楽しめました。仮に失敗しても直前からやり直し可・そも直前に「セーブしますか」と聞いてくれるので安心安全です。
まあ自分はストーリー最後のミニゲームを甘く見積もった結果、見事なまでにBAD END突入させちゃいましたけどね。これから遊ぶ人は全員分のダイス成功させてから進もうな! でもEND回収したい人はあえて突き進んでもOK。

そしてADVに大切なストーリー。激アツだった……!
探偵(嘘)を名乗る主人公達の捜査をあっさり許す警察等の存在から最初の想像通りユルめに事件解決していくオムニバス風か?と進めていたら。2話終盤に登場する怪盗の正体判明かーらーの展開は正に怒濤、息もつかせぬとはこれとばかりに出てくる出てくる衝撃的な真実と大きな謎。これがどれも面白く、そしてアツい。クリックする手が止まらない。「終わった? 解決した?……まだ続く!? すっげーまだあんの!?」と、物語の区切りとしてはちょうど良いだろうオチに辿り着いてもなお予想外の方向に話がごろごろ転がる&アクセル踏みっぱなし急展開に比例してテンションも上がっていき、気付けば夢中でプレイしてました。気分としては可愛い絵柄で設定ハードな少年漫画を読み切った感じ。『不思議の国』『鏡の国』両方のアリスモチーフも散らばってて楽しかったー。
ていうかこんなに面白いのに何で評価少ないの? 私含めて評価者が5人未満ってマ? 皆やろうぜそしてレッドローズさんに惚れよう。ラビがアーリィに放った「知るか!!」でテンション爆上がりしよう。スチルもあるよ。

注意点があるとしたら、1つは制作者様の注意通り「PCでDL版を遊ぶ」事。何故かというと初周『PCで』『ブラウザ版』を遊んでいたら、処理が追いつかなくなってきたのか終盤頃からだんだんカクついた末エンドロールで完全に固まり、動かないかとクリック連打したら通常BGMが流れるエピローグ画面に飛ぶ&エンドロールのエンディング曲が同時に流れるカオスに陥ったから。あと1話終わり際に出たミニゲームの時間制限バーがクリアするまでずっと消えなかったり。
まあ『THE LOVE HOTEL』はエンド回収込みで約1時間、『異形のあなた~』は20分ほどでクリアしたのに対し、本作は1周約3時間はかかったのでDLは必然ですね。DLさえしたら解決しますし(※ちなみに自分がプレイした時は「PCプレイ推奨」のみ記載)(Xの嘆きポストが見つかったのかもしれない)。

もう1つは選択肢画面のクリック箇所。主に調査パートで出る、画面右側に人物or行き先、左側に画像が表示される選択肢画面のところ。
1話目最初のこの画面で、何故か画像しかない左側でマウスカーソルがクリック可を示したので「?」と押してみたら突然「体験版(※たぶん制作者様のBOOTHで公開されている本作1話目が遊べるバージョンの事)を飛ばしてプレイしますか?」という謎の案内が出現。「体験版? 何それ? え、これ元の画面に……戻れねえ! 戻る選択肢が無い!?」となり、セーブせずに進めてた上選択肢提示中にセーブできないパターンだったのも相まって、泣く泣くリセットして最初からやり直す羽目になりました。
ちなみに「はい」を押すと2話冒頭、「いいえ」を押すと1話冒頭、2・3話目は攻略中の話の冒頭に飛びます。これはブラウザ版DL版関係無かったので仕様か否か尋ねていいものか……。

他はもう感性の違いの話になりそうですが、ダッシュ(――)がアンダースコア(__)表記・長台詞なのに読点が少ない・下部メニュー欄に被りかけるほど長い文章(これは1箇所だけ)が少し読みづらかったかな。読点は人の事全然言えないけども。

最後に色々書いてしまいましたが、上記の「気になる」を上回るほど面白いのは保証します。もっと遊ぶ人増えてほしー。


デスゲームは始まらない

大学生の“あなた”はいつも通り、コンビニで夕飯を買って帰途についていたはずだった。
しかし目覚めた場所は闇に閉ざされた廃墟で、手足は椅子に縛り付けられ自由は無い。そして眼前のテレビが映す謎のロボットは「よぇっ、ようこそデスゲへ」とデスゲーム開始の無情な宣告を――……この司会、今思いっきり噛んだな?

◆作:糸尾かしか

タイトルそのまんま、デスゲームの司会者と会話してデスゲームが始まる前にゲームを終わらせるADV。END数は正規9つ+隠し1つの10個。
全てのENDを回収すると【おまけ】が現れ、END一覧や作中コンテンツ、他たくさんのクリア特典が閲覧できます。

本作で最初に目を惹くのは凝ったUI。選択肢はただのリスト表示ではなく吹き出し形、クリックSEは爆発音、台詞全文表示後に出るアイコンがドクロマーク等々、現代的且つスタイリッシュなデザインで眺めるだけでも楽しい。
クリアしたENDに至る選択肢には通過済みを示すアイコンも表示される親切仕様がまたグッド。分岐条件は分かりやすいといえ、さすがに9つもあるとメモ無しではいつどれを選んだかだんだんあやふやになるのでとても有難い。選択肢出た後でもセーブできるのも本当有難い。

ストーリーに関しては……世知辛い身上とネットスラング混じりのキレッキレなツッコミ能力を持つ司会者&デスゲームに参加させられてるのに我の強さを全く引っ込めない主人公(※ゲーム開始前に名前入力有り)が加速度的に繰り広げていくコメディーな応酬にずっと笑い転げてました。司会者の女の子の不憫可愛さが面白さに一役も二役も買ってる。END1つにかかる時間が1~10分程度でダレずに済むのも大きいかも。

そのため、パスワードを入力して解放される最後のルートに最初は凄く戸惑いました。
だからこそこれから遊ぶ人はネタバレ無しで挑んでほしいし、道中で引っかかる些細な違和感は全て忘れず突き進んでほしいです。そしたら「これ結局何だったの?」と首傾げてたところが全て回収されて感動したので。エンドロールまで完璧でとっても満足しました。


偏向メディアヒロイズム

異常気象によって地下シェルターへの避難を余儀なくされた人類。しかし刻一刻と終末の時は近付いており、人々は諦めと虚無の底で生きていた。
そんな中、《英雄観測所》という名の報道機関に勤務する“あなた”は上司のノジマに呼び出され、巨大な怪物と対峙する人物の存在を教えられる。彼を「世界を救うヒーロー」だと断じたノジマはあなたに地上にあるという拠点への潜入と、そこで見つけたヒーローの情報を精査・拡散する指名を下す。
「世界を救うヒーローの糧は信頼と応援! ヒーローを皆に知らしめれば彼は世界を救う力を手に入れるほど強くなるはずだ!」
「……だからさ。間違っても皆の信用を損なう情報なんて流さないでよ?」

◆作:大月おろ

終末世界で人知れず動いていた“ヒーロー”の素性等を調べ、彼の拠点内で発覚する情報を世界に発信するorしないを選びながら進めるクリック探索型ADV。END数は4つ。
当然NoDataずらりですが、プレイ前から【ギャラリー】ページが確認できるの、ノベコレ5作目で初めて出てきたので少し感動しました。

世界観は破滅寸前の近未来ですが、SNSで情報を拡散し世論操作するところは現代的。そんな警鐘鳴らされるSNS社会に、捻くれたり深淵を覗き込んだりした解釈が溢れてきたヒーロー・英雄・救世主といった善の概念と存在を突っ込まれたら面白くない訳がないよな、と。

創作する側としても元々自分がそのタイプだったので好きなゲームでした。
たとえヒーローの素性がアレでヒーローの所属機関もアレだと発覚していき自分自身「おいおい……」とドン引きしている一方で、自分が取捨選択して発信した情報に対して好悪の感情をダイレクトにぶつけてくる一般市民達の反応がグロテスクに感じてきてそこはかとなく気分悪くなるのは最高でした(褒め言葉)。人間の醜さを今身を以て体感してるぅ。
でもそんな市民の代表格みたいなネームドキャラのノジマの反応は一周回って面白かったですね。割と序盤から「なかなか……お前……危ないな……?」と察知してましたが、彼に見つけた情報を発信するorしないを精査してもらった後のコメント読んでたら「今(ルート分岐的な意味でも)上司の運命と情緒を揺さぶる機密情報を自分だけが握って意のままに操れるし自分の判断一つで世界の行く末も決まる!」と次第に一喜一憂を観てみたい気分になってきて。人間の醜さを今身を以て体感してるぅ(2回目)

そんなドロドロした感情に塗れていたのでENDはやっぱり2と4が好き。プレイスタンスによってどれかのENDに辿り着きにくい可能性があるけど、制作者様のnoteにヒント書いてあるしスキップ機能も搭載されてるので全END見てほしいです。
あ、PCのパスワード入力の結果はENDに関係無いので見つけたらさくっと入れても問題ありません。

気になるとしたら、タイトル画面の【設定】項目でBGMのボリュームを変えても【ギャラリー】に行く→タイトル画面に戻る、あるいは一定時間ゲームをプレイしていると初期設定に戻るところでしょうか。
ただ本作もブラウザ版をPCで遊んだパターンのため、素直にDLしてたら起きない不具合かも……しれない。


終わりに

一番ドストライクだったのは『異形のあなた、光と共に。』、もっと知名度上がれ!と願うのは『アンティーク・ワンダーランド』です。どれも面白かったですがこの2作は個人的に群を抜いてましたね。このnoteを読んで興味を持ってくださった方がいらっしゃたら是非遊んでほしい。

以上、『ノベルゲームコレクション』サイトに登録されているフリーゲーム、全5本の感想でした。

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