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「中途半端な冬」嬉野さんの言葉の切れはし#253

いまは、雪のない中途半端な冬が来る方がもっと怖いって思うのですよ。
だって、春を迎える気持ちが堕落するから。
--嬉野雅道

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「冬が怖い、怖い」と言う私でもね、温暖化で雪のない冬を反対に経験するとさ、それはそれで寂しかったのよ。
冬の間も地べたが見えたから、それほどには精神が抑圧されなかったのですよ。
で、抑圧されないまま呑気に冬を過ごしたわけです。
で、春が来た。
ところが、春が来てもね、例年のように「春になったんだー!」「雪が融けたぞー!」っていう感動が湧き上がって来なかった。
だって、そらそーさ、冬の間も雪、融けてたもの。
だから早春の解放感に気が狂うほど心踊る感動もなし。
これは、ショックだった。
根雪に閉ざされた冬を4ヶ月も鬱々と過ごした後に訪れる、春の雪解け。
あれほどあった根雪が世間から無くなった時の解放感は、本当に自噴する泉のように自分の中から外へ外へと喜びが解き放たれていくのよ。
体中の全細胞が、ざわざわと大興奮するのよ。
その興奮がね、春に無かった。
だから今はね、4ヶ月もの長い間、世間を真っ白く、根雪に閉ざしてしまう冬が来ることも怖いけど、
でもそれより、雪のない中途半端な冬が来る方がもっと怖いって思うのですよ。
だって、春を迎える気持ちが堕落するから。
--嬉野雅道(水曜どうでしょうディレクター)