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「事故寸前の人柄」嬉野さんの言葉の切れはし#187

昔、前枠で、大泉さん、カブに轢かれましたからね、ミスターの運転するカブに。
作品というものには、その人に染み付いた人柄という絶対的なものが色濃く反映するものなんですよ。
--嬉野雅道

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昔、前枠で、大泉さん、カブに轢かれましたからね、ミスターの運転するカブに。
「公園に立てかけた障子を蹴飛ばして裏にいたカブ出てくる」という段取りでしたがね。
カブに乗ってたミスターもビックリです。
だって、目の前は障子でなんにも見えないんですよ最初。
ところが、心配するミスターをよそに「本番」の合図で勢い良く加速つけて障子を蹴飛ばせと、藤村先生は言うわけですよミスターに。
「大丈夫だろかそんなことして」と、脇で見てた私なんかは案じるわけですよ。
でも、あの人は「何を心配する必要がある」と言わんばかりの気楽さですよ。
で、本番。
打ち合わせどおりミスターがカブのスロットルをいっぱいにふかしてギアを入れましたよ。
したら障子は蹴飛ばされ、もういきなりミスターの目の前にカメラが立ってた。事故寸前。
そら、ミスターも驚愕しますし、ミスターが撥ね飛ばした障子が凄い勢いで凶器のようにカメラの方に飛んでくるわ、大泉さんは、ある程度轢かれるわ、で、もう枠撮りは大騒ぎでしたね。
やっぱりね、作品というものには、その人に染み付いた人柄という絶対的なものが色濃く反映するものなんですよ。
だからね、そこはもう誰にも真似することはできないのよ。
余人の追随を許さないというところは、そこなのよ。
だからみなさんもね、自分の人柄というものに、素直になられるほうが得だろうと思いますよ。
その人の持つ人柄の色は、それぞれに違うわけだからね。
「大丈夫だろうか」なんて思うやつが、あんなこと無理してしちゃだめ。面白くならない。
あの先生だってさ、無理してそういう状況に自分を持って行って、あぁいう面白いものにしてるわけじゃないからね、個人的に何の迷いもなく普通にやってたら、自然と面白い状況にまで踏み込んじゃってたというわけだからさ。
その気楽さが、素直に事故寸前を呼ぶわけよ。
だから嫌味がない爆笑の事故寸前になるんだと思うのよ。
ちょっと誤解され易い危険な表現してるけど。
人間は、自分の持つ人柄の色に素直に行動するのが豊かな人生を切り開くカギになるのよ。
あの人をそばで見てると、そういう人生訓まで導き出さずにはおられまへん。
--嬉野雅道(水曜どうでしょうディレクター)

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