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「穏やかな土」嬉野さんの言葉の切れはし#305

ぼくら人間が心惹かれる自然の風景というものは、ひょっとすると人の手が入った自然なのではないのかな、という気がどこかでするのです。
--嬉野雅道
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ごく内輪の話ですがね、うちの女房とバイクで旅をしておりますとね、日本中の道を走りますから、いろんな風景を見ることになってなんとも楽しい。

そんな風景の中でも、ひときわ気持ちが和むのが水田や畑の広がる初夏の風景。

中でも、タネがまかれる頃の畑の土。
これが黒々として、しかもふかふかで、いかにも気持ち好さそうに見えるのです。
もうもう、ただちにあそこへ行って寝転んでみたい。
ふかっとするだろうなぁ、そしてあの柔らかな黒々とした土は日の光をしこたま吸収して触れたらほんのり暖かいのだろうなぁと思うわけです。

見ているだけでそういうふうに思えてしまう土になっている。

それをしたのは人間なのです。
鍬を入れて、そういう土に変えたのは人なのです。

石ころだらけの自然の土を、そういう穏やかな土にしてしまう。
それこそが人間の仕業なのだと不意に思うときがあるのです。

そんな、人の手の入った畑の土の中で育てられ実る野菜と、石ころだらけの荒地に根付き自生する草では、その性格までがまるで違う気がする。
だから、そうやってよくよく思いつめていくと、ぼくら人間が心惹かれる自然の風景というものは、ひょっとすると人の手が入った自然なのではないのかな、という気がどこかでするのです。
--嬉野雅道(水曜どうでしょうディレクター)

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