まいどバカバカしいショートショートVol.3

わしは茶器集めを趣味としとる。所謂コレクターちゅうやっちゃな。ほな今日も行きつけの骨董屋に行くで。
「まいど!」
「おーちょうどええとこに来たな」
「おっなんやええもんでもあるんかないな………!!」
「そ……それ……!」
「ああこれか?これはあかんで贋作やさけーな」
「壊すんか?」
「せや。贋作なんちゅうもんはこの世にあったらあかんもんや。だからわては贋作を見つけたら壊す。それがわての信念や」
「どうしても譲ってもらえへんか?」
「なんでや?なんや訳でもあるんかいな?」
「それは……言うても信じられへんと思うで」
「なんや言うてみぃな」
「喋ったんや。今この瀬戸物なわしに向かってしゃべってきたんや『助けて』ってな。おそらくあんさんが壊そうとしとるのをわしに救い出して欲しいんとちゃうやろか?」
「あほなこと言うとったらあかんで。そないな話信じられるわけないやろ」
「いや、ほんまやて!あんさんには聞こえへんのか?」
(な……なんやこの男、ホンマに言うとんのか?いや、そんな訳あるかいな。おそらくこの男はこれが本物の魯山の作品やと思とるんやろな。せやけど残念や目利き60年のこのわしが見たんや。これは間違いなく魯山の贋作や!せやけど、こいつ目がマジやで…)
「今も喋っとるんか?」
「いや…今はなんも聞こえんさかい。喋っとらんやろな。キーン言うて耳鳴りはしよるけどな」
「あんさん疲れとんねんて。瀬戸物が喋るなんてそんな話あるわけないやないか」
「そ…そやな。そんなアホな話あるわけないよな」
「あらへん、あらへん」
「ほな、今日はもう帰るわ」
「おう。また来たって」
わしはその日の夜に骨董屋に忍び込み例の贋作を盗んだ。わしは確かに聞いたんやすすり泣くような声を……それは当時気になっていた彼女の声だった。
その彼女が陶磁器になっていたなんて…………。

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