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先延ばし終活を整理したエピソード【墓じまいしたい】

両親は健在ですが、私は独り身なのでいずれお墓の管理をする人が誰もいなくなってしまいます。お墓をほったらかしにはしたくないので墓じまいを考えていますが、どのような点に気を付ければよいでしょうか。


田中さん(相談者:51歳女性・仮名)は、母親と同居中、父親は介護施設で生活をしています。田中さんからの相談を元にエピソードを再現しています。墓じまいはついつい先延ばしにしてしまいがちですよね。

課題はそれぞれですが、とにかく早く始動することが大事です。あなたの状況に当てはめて考えてみてください。


墓じまいには抵抗のある両親

私の心の中には、遺言書作成の一件(エピソード①参照)以降、ある思いがずっと残っていました。


それは、「墓じまい」のことでした。


両親が菩提寺のお墓に入るとしても、私がいる限り、お墓の管理や供養に問題はありません。


だけど、問題は、私のお墓のこと。私がいなくなったら、お墓の管理は誰がしてくれるのでしょう?


そして、私が管理できなくなったお墓は、一体どうなってしまうのでしょう?


墓じまいとなれば、それは私一人で解決できるような問題ではなくて、むしろ父や母がまだ元気なうちに何とかしたいと思っているんです。


ですから、母に素直に相談してみることにしました。


「母さん、お墓のことについて考えてみたの。いつか私もあそこに入るかもしれないけど、誰も管理する人がいなくなったら、どうなるのかしら?」


母は、「そうねぇ。よく考えたら、あなたがいなくなったらお墓をみる人もいなくなるわよね。私にもよくわからないわ」と答えた。


それを聞いて、私はこう言いました。


「私の代でお墓を見る人がいなくなるわけだから、墓じまいをするなら、父さんや母さんが元気なうちに菩提寺のご住職にも話しておかなくちゃいけないと思うの」


母は「えっ!墓じまい!?それは…でも、お父さんはどう思うかしら」と言い、遺言書の作成の時には前向きだった母でしたが、お墓のことになるとちょっと消極的な感じがしました。


墓じまいは私の代で行うべき課題だとは思いますが、それはやはり田中家全体の問題でもあります。


ちょっと私、簡単に考えすぎていたかもしれません。


でも、その時はいつかは来るわけだから、準備を始めるなら両親がまだ元気なうちがいいと思ったんです。


ただ、墓じまいって何をどうしたらいいのか、全く分かりませんでした。


情報を集めようにも何から手をつければいいのか。父にもそれとなく話してみましたけど、やっぱり墓じまいには抵抗があるみたいでした。


ちょっと話題にするのが難しくなってしまいました。そんなに急いで決めなくてもいいかしらと、どうすることもできずそのままにしてしまいました。


ある日、友人のKが「何か悩みがあるの?浮かない顔をしてるけど」と言ったので、「私は独り身だし、親戚ともそんなに付き合いがないから、お墓のことがちょっと気になってるの」と先延ばしになっている墓じまいのことを話しました。 


もうすぐ年末だけど、墓じまいのことはまだ何も進んでないわ。


Kが「それなら、遺言の時にお世話になったあの人に相談してみたら?」と提案してくれた。


あの人なら、墓じまいのことも詳しく知っているかもしれない。


ネットや本で調べてみたけど、実際に墓じまいをした人の話を聞きたいと思っていました。


Kのアドバイスを受けて、私はあの専門家に相談してみることにしました。


私ひとりだけでは決められない墓じまい問題

永代供養墓といって樹木葬、海への散骨、納骨堂、合同葬なんていう形のお墓もあるんですね。


それに、お寺の承継人不足の問題もあるとは知りませんでした。


色々と学ぶことが多かったけど、そうなると、ますます田中家としてどうすべきかをちゃんと両親と話し合う必要があるってことですよね。


新しいお墓の探し方や形態、それから今の菩提寺のご住職からの許可を得ること、さらに役所での改葬許可も必要なんて、初めて知りました。


今のうちにちゃんと準備しておかないと、私も何かしらの理由で働けなくなってしまったらどうしようって思いました。


でも、お寺も後継者問題があるみたいだから、私たちと同じ問題を抱えているんですね。お墓や供養について深く考える良いきっかけになりました。


墓じまいは大変だけど、きっと両親も理解してくれると思います。


 ・・・ある日のこと・・・


「母さん、お墓のことについて話したいことがあるの...」と話を切り出すと


母は、「あぁ、墓じまいのことね。あれから私も考えていたところなのよ。あなたがそうしたいと思うなら、私たちも協力するわ。


実は、父さんにはもう話してあるの。私自身も、菩提寺のお墓よりも樹木葬とかの方が良いと思ってたの」と、さらっと言っていました。


あまりの変わりように、思わず笑ってしまいました。


「母さん、そんなにすぐに決められることじゃないわよ」


でも母は、「海への散骨もいいと思うし、父さんもあなたに任せるって言ってたわ。だから、あなたが決めていいのよ」と、あっけらかんとした表情で言うのです。


「ちょっと母さん、早すぎるわよ」と言うと、「確かにそうね、まだ父さんも元気だしね」と、母は笑っていました。


両親からは理解を得られたものの、さて、これからの田中家の墓はどうしよう。まだ悩みは尽きません。


・・・別の日・・・


みんなで話し合った結果、納骨堂にすることになったんです。


納骨堂なら遺骨をちゃんと管理してくれて、個別の供養も可能だし、一定の期間が過ぎたら合同墓に移すこともできるそうです。


母は散骨がいいって言ってましたけど、お墓も遺骨も全くないっていうのはちょっと私には抵抗がありました。


管理料も決まった金額を払えばいいから、今の田中家にとってはこれが一番良い解決方法のように思えたんです。


それに、うちの愛犬小太郎のことも面倒見てくれるという点も、ここを選んだ大きな理由に。


今の菩提寺ではペットは認められてないから、それが一番の決め手になりました。


墓じまいでには高額な離檀料が必要!?

最大の難関は、菩提寺のご住職に墓じまいの相談を持ちかけることでした。高額な離檀料でも請求されたらどうしようと不安に感じていました。


これは、私よりも父親に直接話してもらう方がいい。


父は、介護施設にいるけれども寝たきりではないし、ご住職との付き合いもあります。私は付き添いで行くだけでしたから、まだ幾分気が楽でした。


もしも、両親がいなかったら、私一人でご住職に話しに行けたかどうか自信がありません。


でも、早めに行動しておいて本当に良かったと思っています。


話し合いは意外とすんなり進みました。


父は、「これも時代の流れだということなんだろう。住職も墓じまいすることに理解を示してくれてよかったよ。母さん、お礼のお布施は少し多めにしておこう。」と話していました。


母は、「父さんったら、最初は墓じまいなんてバチが当たるとか言ってたのにね」と冗談っぽくひと言。


母の仲良しグループでも、墓じまいのことは話題になっているみたいでした。田中家の個人情報なんですけどね。


おかげで、良い立地の納骨堂も見つかり、役所で改葬許可の申請手続きも始めました。私は平日は仕事があるし、母はよく分からないというので、遺言書の件でお世話になった専門家に相談したんです。


やるべき根回しさえ終えてしまったら、後は段取り通り進めるだけでした。


ここは私の出番がきたとばかりに、住職から埋葬証明書を発行してもらいました。役所の手続きもそれほど難しくないと専門家の方から聞いていたので、結局は自分でやることにしました。


その後は、「お魂抜き」という儀式をしてもらったり、石材屋さんに来てもらい墓石を撤去してもらったりと、とても大変だったけど、なんとか無事に墓じまいを終えることができました。


その後、納骨堂にご先祖様の遺骨を納め、「お魂入れ」をしてもらいました。これは宗派によって開眼供養とも言うらしいですね。


これで、墓じまいの問題も一段落です。


大変ではあったけれど、田中家のご先祖について深く考えたり、父や母のこれからのこと、そして私自身の未来について考える良い機会になりました。

まとめ

墓じまいは、ついつい先延ばしにしてしまいがちな終活のひとつではないでしょうか。ただ、終活の形は千差万別で正解がある訳ではありません。

だからこそ、自分の場合はどうなるのか、自分がどうしたいのか、そして家族はどう考えているかをまずは知る必要があるのかなと感じます。

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