年月を経て

その後、小樽へ向かう途中で札幌駅に降り立った。
目的は2つ。初めて一人暮らしした街を見ることと、以前経営してた店のお客さんと再会することである。

陽の射す正午の大通り、ススキノをのんびりと練り歩く。
社会人になりたての頃は某アパレル会社員として、この辺りに勤めていた。
無くなった店や新しく出来た店もあるが、街並みが変わって見えるのは恐らく自身の心境の変化からだろう。
初めは大都市で一人暮らしするワクワク感、初給料を貰って多少の贅沢をしたりなどから浮かれていたが、その後20年近く様々な経験をしていくうちに、そういった事にはあまり興味を抱かなくなっていたのだ。

『味気ない街だなぁ』
これが久々に訪れた街での正直な感想である。
勿論その中にはオモシロイ人も沢山いるはずだが。

そのまま中島公園を過ぎ豊平川を渡り、当時住んでいた場所まで来た。
なんて事はないアパートだが、そこでの思い出が一気に蘇る…。
…はずが、そんなに思い出すことは無い。
あの頃はとにかく営業成績を残そうと
「休みも残業代も要らないので、朝から晩までシフト入れてください」
と上司に言い、仕事後は記憶を無くすまで同僚と酒を飲んで帰る毎日だったので、家では寝てばかりだったのだ。
ただ、そんな生活も楽しかったのは覚えている。色々と問題ではあるが…。
まぁ、懐かしい気分になれたから良しとしておこう。

そのまま山鼻まで歩き、久々の再会となるお客さんとスーパーの前で待ち合わせした。
仕事が終わったその足で駆けつけてくれた彼女は相変わらず話しやすく、6年振りというブランクは無かった。
ちなみに会って話すのはこれが2回目だ。

人の繋がりというのは回数や時間だけでは計れない。
それが多くの人と関わる中で、私が学んだことの一つである。

昔話やお互いの近況、これからの事を談笑した後「また会いましょう」という言葉で締めた。
明るい話を聞けたので、彼女の今後が楽しみだ。

振りむいて駅の方を見ると、すでに陽が傾き始めていた。

2023年3月から世界中を旅して周り、その時の出来事や感じた事を極力リアルタイムで綴っています。 なので今後どうなるかは私にもわかりません。 その様子を楽しんで頂けましたら幸いです。 サポートは旅の活動費にありがたく使用させて頂きます。 もし良ければ、宜しくお願いいたします。