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来年のことを言うと、鬼が笑うもんさ:「鬼が笑う」を観て

どうもこんにちは、ぴんくです。

「陰惨たるキャンプ場の便所のゴミ」なんてあだ名がついたこともあるくらい、学生時代より憂鬱キャラを貫いておりますが、今回はそんな「メンヘラ躁鬱女」による鬱映画の紹介記事になります。
メンヘラだからって鬱映画が好きとは限らないけどね。むしろ好きな映画はディズニー映画とかハッピーエンドな作品なんだが?

脳内お花畑メンヘラ躁鬱女は日頃ホラーや憂鬱なものを避けて生きているのですが、同僚の作品が解禁されるということで意を決して見てみたんです。「鬼が笑う。」

映画を見た後にもう一度このポスターを見ると複雑な気持ちになります

赤と黒のカラーリングが印象的なポスターは、暴力や血のイメージを彷彿とさせます。赤って割と食べ物の広告で良く見るイメージなんですけど、このポスターを見ても全く食欲はそそられないですね。心の奥底に潜む闇が、溢れんばかりの狂気が、柔らかな微笑みとともに彼の脳内から飛び出して来そうで、とても好きなデザインです。


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どういった映画なのか超簡単にあらすじを紹介します。

主人公には、パチンコばかりして家族に暴力を振るう所謂「DV男」の父親がいました。父親は母親に暴力を振るい、妹は兄を頼って涙を流します。そんな姿をみた主人公は、どうしようもない男から家族を守るべく、「親殺し」という大罪を犯します。

家族のために自らを犠牲にした心根の優しい青年が、「人殺し」という異名を背負いながらいばらの道の人生を生きていく。

そんな「体験したくない想像したくもない人生」を歩んでいく彼の視点から見える、惨憺たるストーリーは繰り広げられていきます。





今回この作品の脚本を担当する三野和比古とは、会社の同僚として知り合いました。彼は個性的で芸術家、容姿端麗なものの少し抜けている一面もあるのが魅力的な男性です。そんな彼が以前話していたことで、今でも忘れられないエピソードがあります。

職場で趣味の話について盛り上がっていた時、彼は「裁判所に行って、傍聴席に座って裁判を見ることが趣味」だと発言しました。普段自分が決して見ることができないような景色を見たくなった時、まずは裁判にかけられている人の話を聞くのだと。正直とんでもない趣味だと思ったのが所感ですが、映画を作っていると聞いていたので、きっとそんな風に誰かの人生を垣間見る出来事がないと、良い作品は出来ないのだろうと思っていました。


映画や読書は、他の人から見える人生を疑似体験するもの、共感性を高めるためのものだと思っています。

ロマンス映画を観て「恋の疑似体験」をしたり、戦国時代の作品を観て、武士に成り代わったり。私は特に共感性の強い性格なので、自分が主人公だったら…なんてよく想像をします。
一瞬でも自分じゃない自分に成り代わったり、共感できる主人公に思い入れをすることで、私達はその作品を愛したり、批評したり。

しかし今回、私は主人公の人生に全く共感ができません。


映画を見ていて、私は三野さんが裁判所に赴いて加害者を傍聴している姿が目に浮かぶようでした。

あまりにリアリティで、知りたくなかったこと。観たくなかった景色。成り代わりたくない主人公。あまりに悲惨で、変わりようのない現実。主人公がどんな気持ちで生きてきたのか、妹や母親の想いは。

そんな鬱映画を2時間、雨の降る日曜日の午後に観て、メンヘラ躁鬱女はしっかりアンニュイな気持ちに陥っているのですが。


実は映画の見どころは、広告にもある「衝撃的な展開」よりも、「あ〜、わかる、あるある」と感じる一つ一つの丁寧に切り取られたシーンだと思いました。

バスで座りたいがために疲れたアピールをするオバサン、カップルを見ると大きな声で独り言を呟くモテない中年男、目がキラキラの宗教の勧誘、近くの可愛い女子社員に執拗に話しかけるキモ上司、喫煙所で口が悪くなる女教官、公園でタバコのポイ捨てを辞めないサラリーマン。

見たことないハズなのに、「なんかわかるわ」と共感したくなる「周りにいるちょっと嫌な人たち」を絶妙なカットで表現されていて、「嫌」の炊飯器に入った白米を食べさせ続けられてお腹いっぱいになった気分でした。最高じゃん?


監督、脚本の三野brosは、きっと「リアリティ」の追求が好きなのではないかと思いました。全く共感の出来ない主人公のリアルを、どれだけ丁寧に伝えるか。目を逸してはいけない沢山の社会問題、日本で虐げられ続けながら働く外国人労働者や、日本社会の差別や偏見に関して、しっかり考え直す機会がこの作品の中に織り交ぜられています。

そういえば「鬼が笑う」タイトルの「鬼が笑う」という言葉ですが、調べてみるとことわざなんですね。「来年の事を言えば鬼が笑う」という言葉で、「来年のことは、どうなるかわからないから、めったなことで口にするものではないというたとえ。」という意味だそう。

確かにこの作品のラストは全く予想ができなかったです。というか、そんな結末でいいの?
見終わった後、2週間くらいトラウマに残ったくらいでした。未だにひとつひとつの衝撃的なシーンが私の胸の奥に破片のように突き刺さっていて、ちっとも取れません。

そんな心がズシンと重たくなって、見た人の人生の景色をガラッと変えてしまうような、日本社会の縮図のような1作品を皆さんも是非観てみてくださいね♡
どうやらクラファンも行っていたそうで、目標達成おめでとうございました!

これからも若い三野兄弟のお二人の作品を楽しみにしています。


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