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アフターコロナのスポーツとまちづくり

 前回は無観客開催を批判しましたが、その後、様々な競技が開始されて多くの人々が応援しています。
 メディアによると国民の大半が開催に反対であり、関心が無いとのことでしたが連日ほとんどのTV局は何故かオリパラ番組を中心に放映しており、視聴率も高いようです。
 当初の趣旨に沿ってオリパラ番組から撤退する局があって良いのですが結局「どうせやるだろうからいくら反対しても大丈夫」との姿勢でオリパラ中止キャンペーンを政府非難に使いました。海外メディアは直接取材せずに日本のメディアを見て報道しますので海外でも散々です。これも選手や実際に来日したメディアなどから正しい情報がリリースされていくとは思います。

 それはともかく、国民のオリパラへの関心は高く、予想以上の選手の頑張りによりさらに盛り上がっています。
 特に新たな種目(スケートボード」やサーフィン等)では最少年齢金メダリストが実現するなど若い世代が活躍していることもあり大きな話題となっています。
 アフターコロナの行方のテーマとしてスポーツが盛んな我が国もこれを契機にさらなる展開を位置付けてみました。

■新たな潮流


◆スケートボード
 1980年代頃からスケートボードが見かけられましたがマイナーでありスポーツの範疇は道路や公園等を無秩序走り回る迷惑行動と見られていました。     米国を軸に盛んになり、プロ化され、国際競技も開かれましたが国内では評判は良くない時代が続きました。スノーボードも同様でしたがあっという間にスキーを凌駕しました。
 スケートボードは2016年にオリンピック競技となり急速に環境が改善されました。スケボーコートは2016年の100ヶ所が2021年には230ヶ所に急増しました。それでも少なくて、スケボー達は広めの公園(上野公園等)や道路等でやっています。
 オリパラでの若い世代の活躍により、世の中の認知度は飛躍的に上がりましたので、今後、さらに競技人口は増えると思われます。
 スケボーは特に1990年代半ばのXgame(Extreme Games:エクストリームゲームズ)にてBBMXやスノーボード等と人気を拍しています。米国やアジア各地で夏冬それぞれ開催されて2000年以降は日本人も少しづつ頭角を現して、オリパラ2020の金メダリストの堀米選手は2009年に優勝しています。
 一大スポーツイベントとして商業的にも大成功しています。堀米選手は西海岸では大谷選手と同様の知名度・人気を拍しています。
 我が国でもさらに競技人口が増大し、スポーツ競技として認知されることになると思われます。この競技は従来のスポーツや武道と全く発生、成り立ちが異なります。学校での指導、そもそも指導者が明確にいる訳ではなく、小さいころ(5歳前後)から始められますので遊びと競技の性格を併せもっていますし、上下関係も緩いものです。この良い特性を活かしつつ、国際的な対応が可能な競技として育成したいものです。

 近年のこれらの新しいスポーツの特徴は若年層が主体となり、当初から海外を視野に入れていること、育成環境も縦割りではなく横繋がりであることなどでしょう。
 個人スポーツということもあり、選手同士がライバルでもありながら相互に情報交換、しかも国際的に、しながら技術を高め合って、楽しんでいます。まだ10代半ばで若いからとは言え、心底楽しんでいるように見えますし、おそらく今後とも変わりないと思います。勝負の世界ですから楽しんでばかりではダメですが、それは彼らも十分承知であり、勝負の駆け引きなどは年齢と関係なくしたたかにやっているようです。
また、 旧来の縦割りの指導者が居ないことも重要です。団体競技では野球のように高校で監督に縛られ、それほどでもないコーチに指導されて若い才能がつぶされてきました。新たな競技ではまだ歴史が浅いことが幸いして高年齢の顔役等はいませんし、新たな技術を仲間同士で作り合っています。協議会も古い体質の体育系団代主催ではなく広く新たなスポンサーを付けています。X-gameはまさにそうですし、E-soportsもそうですね。大会への参加はSNSで直接できますし、インスタ等に技などをアップしていると大会側から参加へのオファーがあるようです。
 これらの動きに日本の諸団体やベテラン達は全くついて行けていませんが、これがむしろいいのかもしれません今の若い世代は自ら世界に打って出ていますし、体育系とは程遠い賢さがありますね。
 堀米選手は大豪邸を購入したことが話題になりましたが単に大きな家に住みたいのではなく、すでに後輩の育成を念頭においており、その育成・交流の空間として位置付けています。さらなる大きな家を購入した後はそのまま若い選手たちが使えるようにするとのことです。

 メディアや旧来の体育系団体が彼らを無視している間にいつの間にか大きな潮流を作り出しています。
 今回のオリパラは日本のスポーツ界を改変する大きなチャンスとなりました。

◆サーフィン

 サーフィンもスケートボードと似ていると思います。
 湘南のサーファーはカッコ良くもあり、不良めいた面もあり、一定の層の人気はありましたがメジャーではありませんでした。
 すでに数十年の歴史はありますが年をとっても日焼けして、海に出ている姿には評価が分かれます。また、競技人口はそこそこの人数でしょうが競技会としては米国等の足元にも及ばない状況でした。
 しかし、今回のオリパラへの新たな種目になった段階から注目を集め始めていました。特に今回銀メダリストになった五十嵐カノア選手がハワイで有名な選手で、両親が日本人ということで何度もTV等で紹介され、次第にサーフィンが一般的に知られるようになりました。一人の青年がこれまでの認識を大きく変えました。
 そして、今回、カノア選手が銀メダル、さらには、都築有夢路選手が銅メダルを取ったことで飛躍的に認知度が高まり、認識も変わりましたね。
スケートボード程若い世代では無理ですが十代後半の選手は多く、選手同士の関係などはスケートボードに似ていますね。
 もちろんプロ競技ですが、カノア選手クラスで年収5億円のレベルとのことです。これは選手が多いということもさることながらビジネス化が上手いのでしょうね。
 

■日本のスポーツの転換期

 2010年に「スポーツ立国戦略」が策定され、2011年には50年振りに「スポーツ基本法」(旧スポーツ振興法 昭和36年)が制定されるなど10年ほど前から我が国も新たなスポーツへの取り組みが始まりました。
 個々の健康管理から国際的なプロスポーツまで広いものですが我が国では明治時代から官民で取り組まれてきました。
 スポーツ基本法でのスポーツの定義は「スポーツは、心身の健全な発達、健康及び体力の保持増進、精神的な充足感の獲得、自律心その他の精神の涵(かん)養等のために個人又は集団で行われる運動競技その他の身体活動」とあり、ビジネス感はあまりないですが幅広に考えています。
 学校での取り組みから実業団そしてプロ組織まであり、新たなプラ組織(Bリーグ、Tリーグ等)も出来てます。
 日本には武道(柔道、剣道、空手、弓道、相撲、日本泳法、等)もあり、国際的にも多様な分野があります。武道は欧米の感覚のスポーツとは一線を画しますが柔道などは彼らに無い武道の精神が評価されて世界的に普及しています。
 さて、このように様々なスポーツが導入され、多くの国民に親しまれていますが、プロ組織の運営は必ずしも順調とは言えませんし、内向け的なことも課題です。プロ野球やサッカーに偏りすぎていますし、実業団スポーツも次第にその役割が終えつつあります。また、学校スポーツもある意味、優れた仕組みですが問題も多く顕在化しています。
 また、体育系と揶揄されるようにスポーツ業界は従前の旧い仕来り、上下関係等の硬直化したマネジメントの下にあり、全体としてスポーツ界の再編が問われています。
 その中で昨今、大谷選手、大坂選手、松山選手、錦織選手、八村選手等の国際的に高く評価されている選手が登場してきました。上述した、スケートボード等でも同様です。また、アマでも羽生選手も同様であり、ある意味、現在の日本は非常に良い状況だと思われます。
 この機にこれまでの多くの実績そして課題を踏まえてスポーツ界を再編することが重要であり、可能だと思われます。

 このようなスポーツをテーマに取り組む組織は個々の団体から横断的に非営利組織までありますが、私が理事を務めている「(一社)スポーツと都市協議会」(旧アリーナスポーツ協議会)もその一つであり、スポーツ界の再編とともに都市との関係を重視して、これからいろいろな提案等もしていきたいと思っています。
http://www.asc.or.jp/


■スポーツとまちづくり

 自治体もスポーツを重視し、「スポーツタウン」を標榜していることも結構あります。また、近年各地で設立されている「スポーツコミッション」(スポーツを通じて地域振興を目指すための組織)は地域の特性やまちづくりの方針等に応じて様々な活動をしています。
 これらの動きは今後さらに広まり、多様なスポーツの発展とスポーツのまちづくりへの関与は強まると考えられます。
 しかし、上述したように新興分野であるスケートボード等はまだまだ市民権を得ていないように思いますし、関連施設も十分とは言えません。
 例えば、今回脚光を浴びたスケートボードは一般の公園では禁止されており、正式な練習場所が少ないため文字通り路上での走行等が行われて顰蹙をかっている面もあります。
 まずは専用施設のさらなる拡充が必要です。これは若い選手達の言動では出来ないので関係者、行政が支援すべきです。多くの子供達の関心を集めていますので安全対策を義務付けて適正な運用を図る必要があります(車輪の音が煩いので安全対策とともに一定の規模や騒音対策も必要です)。
 今後はスポーツタウン等のコンセプトを掲げつつ、都市政策、まちづくりの中での位置づけ、例えば、都市公園のあり方の見直しと併せてスケボー施設整備や運営ルールをうまく導入していく必要があります。その他の多くのスポーツ施設を相談的に位置付けて行政、企業等により整備・運営することが重要です。空閑地の利活用としても有用だと思われます。
 オリパラを契機に新たな分野も含めて地域とスポーツとの適正な関係を構築することが望まれます。
 このような考え方を基に今後はさらに具体的な提言をしていきたいと思います。

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