見出し画像

2020年12月の読んだ本など

以下、読んだ本など


赤野工作『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』
読書会用に読んだ。前々から気になっていたので、読めてよかった。
長いゲーム史において低評価をくだされたゲームの数々を、ゲーマーの管理人がレビューをしていく……という体ですすんでいく。
読み始めは「想像していたよりとんでもないものを読まされているぞ……!」という感覚があったのですが、如何せんひとつひとつのレビューが長いので、だんだんと食傷気味になっていってしまうのが、ちょっともったいないように感じてしまった。ゲーマーコミュニティやその遺産、ジャンルあるあるネタを拡大解釈してるアプローチは面白いのだけれど、パロディみたいのがずっと続くと、面白いけどちょっと飽きてしまうというか。また、低評価をくだされた理由が「そのゲームが社会的な問題になったから」というのも少なくなく、それもちょっと食傷気味に感じてしまった原因かもしれない。
とはいえ、別に楽しめなかったわけではなく、洗脳ゲームの「スシャマ・ドゥーシャマー」の話や、収容所でやられてた「チンシルケイム」の話、そして小さいコミュニティでの戦いを描いた「クラドゥーケン」とかは好き。
一日一本ぐらいのペースで読むのに向いてるかもしれない。



石川博品『ボクは再生数、ボクは死』
バ美肉アラサー男性が憧れのVR風俗嬢の為に、仲間と迷惑配信者を狩る配信で金稼ぐぜ! という性と暴力とポップさ溢れるピカレスク物語。
石川博品作品は好きだけれどバイオレンス路線の作品(『菊と力』、『海辺の病院で彼女と話した幾つかのこと』)は微妙に自分に合わなくて、今回もそうだったらどうしようと思っていたのですが杞憂でした。
上述したように基本的に治安の悪い話なのですが、VR空間の刹那さや儚さがエモーショナルに描かれていて独特な味になっていて、そこにある種の切実さがあって良かった。
主人公の狩野くんと、仲間で会社の上司の斎木さんは郊外に住んでいるのですが、彼らの集まる場所がカラオケ店の広いVR用ルームというのもいい具合のリアリティがあって、その場所から広大な電脳空間に行ってわちゃわちゃ楽しくやってるのが青春ものっぽく、そこもツボだった(アラサーの青春もの!)。
色んな要素を混ぜに混ぜた結果、ちゃんと今っぽいものに仕上がっているのは本当に流石だなと思いました。



ジェフ・ジョーンズ&ゲーリー・フランク(訳・中沢俊介)『ドゥームズデイ・クロック』
『ウォッチメン』とDCユニバースとのクロスオーバー作品。Dr.マンハッタンが去ったあと混迷を極める『ウォッチメン』世界と、Dr.マンハッタンの影響で歴史が改変され、そして陰謀論がはびこり分断が深まるDCユニバースを舞台にヒーローが奔走する。
自分がここ2年ぐらいでDCの邦訳をせっせと集めて読んでいたのは、これのためでした。
正直な話、後半までこれ本当にちゃんと纏まるのか? とやや懐疑的な気持ちで読んでいたのですが、クライマックスでDCユニバースとは、そしてスーパーマンはなぜ「明日の男」と呼ばれる希望の象徴なのか、というメタな話を怒涛の勢いでしはじめて、更にまだ見ぬ希望の未来にまで手を伸ばすのでマジで凄かったです。感覚的には『シン・エヴァンゲリオン劇場版』に近いものがある。
DCの設定改変とかがコミック内で若干メタに語られるのは今までもあったけれど、今回かなり直球なうえに、いま現在の社会不安や分断等を話に組み込んだうえでヒーロー讃美をやるのでかなり気持ちが良かった。
ただ、やっぱりDCユニバースに対するある程度の前提知識があった方が楽しめるんじゃないかという気もするので、『ウォッチメン』しか読んだことがない人に続編だから大丈夫だよとは勧めづらい気も……。いや、読んでほしいですが……値段はかなりいかついけども……。
本作『ドゥームズデイ・クロック』と、HBOドラマ版『ウォッチメン』は話は勿論全然違うんだけれど、両方とも現代的なテーマを取り扱いつつ、両方の作品でスーパーマンが重要な役割を果たしていたり、神の成長を描いたりポジティブな終わり方をしていたりと、共通する部分があるのが面白い。比較して見てみるのも楽しいと思う。


他にもいろいろ漫画読んだりしたのですが、流石に記憶が遠いので省略します。


過去のぶん



この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?