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2020年9月の読んだ本など

気がついたら涼しい通りこして肌寒くなるの怖くない……?
(上記の文章を書いたのは9月26日のことで、これから下を書いてるのは10月25日です……はい……)

以下、読んだ本など。


読んだ本


ヴィクター・ラヴァル『ブラック・トムのバラード』(訳・藤井光)
クトゥルー神話でお馴染みのラヴクラフトが書いた「レッド・フックの恐怖」を、ある黒人青年の視点から語り直した中編小説。「レッド・フック~」自体はラヴクラフトの人種差別的な思想があらわれている作品だそうで、本作品はアフリカ系アメリカ人の著者が愛憎入り交じったラヴクラフトへの感情を込めた作品だという。ちゃんと「レッド・フック~」を読んでから読めば良かったなと思う。
1920年代のニューヨークの生き生きとした描写と同時に、当時の人種差別的視線等をモロに浴びせられる主人公・トミーが感じる生きづらさや理不尽さも伝わってきて、それらが集約される物悲しいラストが刺さる。


グカ・ハン『砂漠が街に入りこんだ日』(訳・原正人)
出身地である韓国を離れた著者が、渡仏し、そしてフランス語で書いた短編小説集。
あらすじから幻想文学的なものを想像していたらそうでもなかった。そうでもなかったものの、具体的な説明を省いた描写のおかげでどこか無国籍且つドライな雰囲気が出ていて、夢の中に出てくる知ってるようで知らない町のような、奇妙な居心地の良さがある作品だった。


上遠野浩平『ブギーポップは笑わない』
読書会のためにおそらく12、3年ぶりに再読。「ブギーポップ」シリーズや上遠野作品からの影響がかなりデカいうえに内面化されてしまっているので、読書会で感想をワッと言うときに逆に何言えば良いのかわからなくなってしまった。
しかしこう、改めて読むと、作中の女子高生たちが冗談めかして「毒ガスで殺すとか?」「サリンとか?」と言う場面があって90年代後半のムードだ! となったり、そういうティーンの軽薄さってかつて自分にも確実にあったよなあと二重の意味でしみじみしたり。あとモロに影響を受けたあとに原点である本作品を読むと、案外あっさりと読みやすくて(でも何か残る)、それにも驚いた。「江戸川乱歩を実際に読むと、後世の乱歩の影響を受けたという作品ほどくどくはないし意外と読みやすい」に似た現象だなと思った。
上遠野浩平の白でも黒でもないモヤモヤっとした部分がより出てくるのはこのあとの「VSイマジネーター」からが本番な気がするので、いつか読書会にねじこみたい。
あともうそろそろ2019年に作られた新アニメ版とも向き合いたい(牛尾憲輔によるサントラはかなり好きで何度も聴いてる)。


スズキナオ『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』
ライター・スズキナオによる深夜高速バスや立ち飲み屋や入ったことのない飲食店や町歩きなどなどに関する本。スズキナオさんの文章はあまりちゃんと追えていなかったので、まとめて読めて良かった。
8月中旬ごろから9月中旬にかけてゆっくり読んだわけですが、コロナ禍でろくに遠出ができない(できるけれどあまりしたくない)状況のなかで読むと、自分の過去の町歩きや旅行の記憶がよみがえってきて、「旅行行きてえ~! 行けね~!」といった具合に、なんとも形容しづらい感情になってしまった。自分はお酒は飲めないけれども、あちこち適当に歩いて回るのが好きなので、かなりうなずきながら読んだり、こういう視点があるのか! ともなっていた。対象との距離感、そしてスタンスが本当に絶妙だなと思った。



読んだマンガ(抜粋)


ガース・エニス&ジョン・マクリア『ヒットマン』(訳・海法紀光)
アマゾンプライムのドラマ『ザ・ボーイズ』の原作者であるガース・エニスが、90年代後半にDCコミックスで手掛けていたアメコミ。ゴッサムシティの片隅のバーでたむろして酒を飲んだり、モンスターやギャングと撃ち合いながら暮らすどこかボンクラな(悪人専門の)殺し屋トミー・モナハンとその友人たちの物語。もうずいぶん前に話題になった犬溶接マン(犬を悪人に溶接して戦うヒーローです)が出てくるコミックです。
全体的に絵柄も濃いし過激な描写もブラックユーモアもどんどん出てくるけれど、小粋でひねくれたセリフや、ふざけたような展開もハードボイルドな展開もあって真っ当に楽しい。トミーはもちろん殺し屋なわけですが、警官と善人は殺さない主義だったり、うだつがあがらなかったりと、どこか憎めないいい性格をしてる。
話が進むにつれて業を背負わざるを得なくなってゆくトミーと、彼らが迎える結末はかなり物悲しくて、本当に泣きそうになってしまった。
ゴッサムシティを舞台にしていながらも他のDCキャラとのクロスオーバーは控えめだったり、物語が完結していたりとハードルが低いし読みやすい……のですが、やっぱり値段的な意味ですすめづらかったりもする。2巻が出てからすこし間をおいたとはいえ、ちゃんと最終巻まで出したのは本当にありがたい。毎巻ある海法さんの解説も良かった。
個人的に印象に残ったエピソードをあげるとしたら、3巻にあるトミーとスーパーマンが出会う話になると思う。殺し屋のトミーと誰もが知ってるヒーローのスーパーマンという組み合わせなわけですが、ここで交わされる会話はなかなか良かった。


トム・キング&ガブリエル・ヘルナンデス・ウォルタ『ヴィジョン』(訳・石川裕人、今井亮一 )
アベンジャーズの一員である人造人間ヴィジョンが、自分が作った家族を引き連れて郊外に引っ越してきたものの、「普通の人間らしい生活」をおくろうとして徐々に……という物語。スリラー。
「普通の暮らし」をおくろうとするがゆえにちょっとずつちょっとずつ歯車が狂っていく様子や、無邪気に浴びせられる近隣住民たちの好奇の目など、不穏な空気がずっと充満していたり、イヤな伏線回収もあるしで、トム・キングおまえー! となっていた。
あとがきで「CIA辞めたあとほぼ無職同然のライターで、妻の収入に頼ってたんですよね……」という告白が急にぶちこまれて、そういった経験も反映されてそうだなと、こう、ずしっと……。
ちなみに、『ヴィジョン』で描ききれなかったことが『ミスター・ミラクル』の方にモロに出ているんだろうなと思った。『ミスター・ミラクル』の感想は10月のやつで書きます。



遊んだゲーム


『Bloodborne』
実は発売日に買っていたのですが、ミコラーシュのところでなんか詰まってしまい、気がついたら5年が経ってた。今回新しくキャラクターを作り直して改めてチャレンジした。
SEKIROのハードコア高速ジャンケンじみた剣戟を経たあとにやると、だいぶ簡単に思えたりもして、鍛えられた甲斐があったぜ~と調子に乗っていたのですが、まあ結構死にまくったりしましたね……主にゴースの遺子で。
同じスタッフのデモンズソウル、ダークソウル、SEKIROに比べると会話できるNPCがかなり少なかったり、話の部分もDLCで結構補足があったりと、そこらへんはやや食い足りなくもないのですが、この作品が放つ独特な雰囲気(ゴシックホラーな感じと、そしてガラリとジャンルが変わっていく感じや悪趣味さ)は本当に好きです。未だに没データのサルベージと解析がつづいている理由もわかる。
続編か完全版出てくれると嬉しい……



9月はだいたいそんな感じでした。


過去のぶん


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