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2020年11月の読んだ本など

サボっていたら2021年の6月になっていました。
感想の厚みに違いがあるので、こう、どこでサボったのかわかりやすいですね……

以下、読んだ本など。


日野啓三『夢の島』
身も蓋もない言い方をしてしまうと、東京の埋立地に魅了されたおじさんがひたすらうろうろしたり、バイクで疾走する若い女に惹かれたりする話。自分にあうだろうなあと思って読んでみたらドンピシャでした。
今読むと諸々の部分に古さを感じたりもするのですが、1980年代の東京の埋立地に対する描写等は、90年代以降の発展していくお台場しか知らない身からすると貴重だなと。
主人公が埋立地に引き寄せられるきっかけが晴海のコミケ的なイベントに行くキッズたちを見て「あれなんだろう」と気になったから、というものなのですが、あとがきで「発熱した高校生の息子に、代わりにコミケまで同人誌を届けてくれと言われ、その体験が書き始めるきっかけになった」とあって驚いた。
日野啓三は現代都市を舞台にした作品を書いていたそうで、他のも読んでみようと思う。



アン・マキャフリー『歌う船』(訳・酒匂真理子)

生まれもった身体の事情により、宇宙船と一体化した女性・ヘルヴァが宇宙を駆ける連作短編。読書会用に読んだ。後半はちょっと駆け足気味に読んでしまった(反省)。
最初の話でパートナーを失い傷ついたヘルヴァの前に、また別の傷ついた女が現れ、友情を育んでいくのが良かった。ゴリゴリのSFかと思ったら成長物語や人情物っぽい面白さがあった。途中の演劇の話はちょっとわかりづらかったかなと思う。
復刊してくれてありがとうの気持ち。



ウィリアム・ギブスン『ヴァーチャル・ライト』(訳・浅倉久志)
大震災に見舞われたサンフランシスコを舞台に、配達人の少女・シェヴェットと元警官の男・ライデルが「ヴァーチャル・ライト」をめぐっていろいろと巻き込まれる話。
10月に読んだ『クローム襲撃』に比べるとかなり読みやすいし話もわかりやすいので驚いた。正直に言ってしまうと、めちゃくちゃ面白いかというとあまりそういうわけでもないのですが、いろいろとフックはあるのでそれを楽しんで読めるかどうかという感じがする。崩壊した橋に人々が町を作っていたりとか、赤瀬川原平が提唱したトマソンを研究している青年が、研究のためにその橋に来たりとか、テレビのなかに映し出される映像を信奉する新興宗教とか。
ギブスンの日本びいきはここでも健在で、ライデルが仕事で使っていたモンスタートラックの名前はガンヘッドだし(劇中で東宝特撮の『ガンヘッド』からとったとほのめかされている)、日本を襲った大災害がゴジラと呼ばれていたり。トマソンに関しては海外の人がこれに言及しているのをはじめて目にしたので驚きました。



村上春樹『TVピープル』
村上春樹の小説をちゃんと読むのは『1973年のピンボール』以来2回目。読書会用に読んだ。
最初の短編は、変なことが起きつつ純文学っぽくもあるし、現代ファンタジーかと思ったら不穏な空気で、正直読んでいて心の置きどころがわからない感じだった。やっぱり文章はうまい。
ある価値観に縛られ破局を迎えたカップルの物語「我らの時代のフォークロア――高度資本主義前史」が好き。(でもこれはあまり村上春樹ぽくないのでは? とも思う。)



オーギュスト・ブランキ『天体による永遠』(訳・浜本正文)
興味本位で手に取ってみたけれどやっぱり難しかった……。急に彗星等に対する情感のこもった文章になったり、エピローグにかけてどんどん盛り上がっていく感じが良かった。



スコット・スナイダー&グレッグ・カプロ『バットマン:ラストナイト・オン・アース』(訳・高木亮 )
荒廃した世界で生首だけになったジョーカーとバットマンが旅をする物語。
バットマンとジョーカーの関係だけでなく、「バットマンとは何か」や、ルーサーとスーパーマンの関係も描かれていて良かった。



藤本タツキ『ファイアパンチ』全巻
なんだかんだ読んでいなかったので読んだ。やはり難しい……。「凄い」とはもちろんなるのだけれど、「ちゃんと追いつけて理解できてるか?」と問われたら「ぜんぜんわかってない」となる。そして『チェンソーマン』はめちゃくちゃわかりやすく描いてるんだなということがわかった。
展開がめまぐるしいのでなんとかしがみつくのが精一杯だったといいますか……
そのうち再読すると思う。



2020年の11月はそんな感じでした。


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