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海外の広告における過激な笑い表現①

海外の映画やアニメを観ていると、時折「そんなのアリ!?」と驚いてしまうような過激な笑い表現を目にすることがあります。例えばNetflixでも配信中のアメリカのアニメ「リック・アンド・モーティ」は大人向けというのもありますが、登場人物が嘔吐したり、無残な死を遂げたりするなどの表現もあり、私も最初に観た時は衝撃を受けました。なかなか日本人にとってはショッキングな表現だと感じます。(筆者は今では「リック・アンド・モーティ」にハマッていますが。)

そういった表現がエンタメ業界では「表現の自由」として認められているというのは想像がつくかと思いますが、実は、国によっては広告においても日本ではありえないような過激な笑いを取り入れる文化があります。今回は、そういった海外の事例をご紹介していきたいと思います。


これぞタイCM!農薬の危険性を超ストレートに表現

タイ政府の医療提供部門が公開したオーガニック野菜を食べることをすすめるための長編CM「Bok Choy」。体の悪い主人に「最後にチンゲン菜のオイスターソース掛けが食べたい」と言われたメイドが、なんとかしてチンゲン菜を手に入れようと奮闘するというストーリーです。チンゲン菜の季節ではないにも関わらず、農薬を使うことで何とかチンゲン菜を手に入れたのですが、料理を食べた主人は農薬の毒性にやられてしまい嘔吐するというオチです。

タイは「世界一のぶっ飛びCM」量産国の1つ。このCMでも、農家の男性に農薬を撒くところを見るなと言われたメイドが自分の目をくりぬいたり、チンゲン菜を食べた主人がピンク色の液体を吐き出したりと、なかなかに衝撃的な表現が用いられています。さすがにモザイク無しで嘔吐を見せるのは日本で受け入れられませんが、「体の部位をパーツのように外す」というタイCM伝統の手法は見せ方をマイルドにすれば日本の広告でも応用できるかもしれません。

流血、糞、嘔吐、食べ物を落とす...日本ではストップのかかる表現のオンパレード

こちらはアメリカでもっとも注目を集める広告枠のひとつであるスーパーボウル内で放送されたPlentyというキッチンペーパーのCMです。

とある男性が家族や友人とクリスマスパーティーの準備を進めるのですが、「赤ちゃんが吐いたミルクがかかる」「猫がトイレの外に糞をしてしまう」「ドローンがぶつかって鼻血が出る」「おじいさんがメインディッシュのチキンを床に落とす」など散々な目にあいます。そういった悲劇に男性がキッチンペーパーを使って対処していく哀愁漂う様子を通して、Plentyはキッチン外でも様々な用途に使えることを訴求しています。

スーパーボウルのCMはきれいな表現のCMが多い中、「汚い」「痛い」「かわいそう」といった真逆の表現を打ち出すことで数あるハイクオリティなCMの中から目立つことに成功しています。このCMは、カンヌライオンズ2021のフィルム部門ではブロンズを獲得しています。


これらの海外CMを見ていると、日本は映画や漫画といったエンタメ作品では過激な表現が受け入れられている一方で、広告物に関する規制は非常に厳しいと感じます。それは決して悪いわけではなく、表現に制限があるからこそ、金鳥に代表されるような、絶妙な会話劇で魅せる名作CMが次々と誕生してきたのではないかと思います。しかし、その一方で言語の壁を越えることが難しい会話劇CMは、国内広告賞では評価されど、海外広告賞の受賞にはなかなか繋がらないのかなとも感じます。そもそも広告の目的は広告賞を受賞することではないため、無理やり海外ウケするCMを作る必要は無いのですが、海外広告の過激な表現を日本人にも受け入れられるかたちで取り入れると生活者にとってインパクトのあるクリエーティブが作れるのではないでしょうか。

次回の記事でも引き続き、海外のちょっと過激なCMを紹介していきたいと思います。


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