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お笑い芸人を起用した広告、すべてが面白いわけじゃない。②

『有吉の壁』『千鳥のクセがスゴいネタGP』『新しいカギ』といったネタ番組・コント番組が多く放送され、「お笑い第7世代」を中心に新たな売れっ子芸人が次々に発掘されている現状は、お笑いブームが来ていると言ってよいでしょう。そういった状況下であるため、お笑い芸人を起用した広告もよく見かけます。

しかし、芸人を起用すれば必ず面白い広告になるかというと、もちろんそうではありません。本シリーズでは、芸人をどう活用すれば面白い広告になるのかを私なりに分析しています。前回の記事では、笑いを生み出すポイントとして「テレビ番組とのギャップを演出する」「ネタを使うなら完全オリジナル」の2つを挙げましたが、今回はさらに別の2つのポイントについて考えていきたいと思います。

今回分析する以外の2つのポイントについては下記記事にて分析していますので、是非ご一読ください。


商品の魅力を必要以上に語らせない

演技やストレートトークを通してタレントに商品・サービスの魅力を語らせるのは王道手法の一つではありますが、広告に対する懐疑心が高まっている現代ではその方法はなかなか通用しなくなっていると感じます。特に芸人の場合、演技のプロではなく、また、俳優と違って普段から「素の自分」をさらす場面が多いため、「この人、本当はこんなこと思ってないくせに。」という嘘っぽさにつながります。ダウンタウンの出演するスマートニュースのTVCMのようにわざとらしく商品を褒めまくることでその嘘っぽさを笑いに利用することはできますが、そういった意図なく芸人に商品の魅力を語らせすぎるとお笑いファン人はCMに冷めてしまうのではないでしょうか。以下、CM内における芸人の立ち位置を、商品に対して中立かネガティブな考えを持つ存在とすることで面白さを出しているCMをご紹介します。


こちらはなかやまきんに君を起用した焼き肉ダレ「焼肉一番」のCM。なかやまきんに君は「焼肉一番」の化身のような役どころですが、一切商品情報を語ることはありません。「食卓に、パワーを届けて55年。」というメインコピーを体現するため、30秒のCMのうち28秒間ひたすらに焼き肉プレートに向かって「パワー!」と叫びます。以前の記事でご紹介した「テレビ番組とのギャップ」はゼロですが、逆に言うとなかやまきんに君を起用することでしか面白さを出せない表現であるといえます。もし「焼肉一番」の化身であるなかやまきんに君が少しでも商品の魅力を語ってしまっていたら、一気にこの独特の世界観が崩壊してしまうと思います。


こちらはナダルさんが出演する日清「カレーメシ」のCM。このCMではナダルさんは終始謎の存在として描かれており、ほとんど言葉を発しません。「汁がないからこぼれない。」というナレーションに対する「(汁がこぼれることが)無くは無いです。」という否定的なワードが唯一のセリフです。このセリフは本CM最大のツッコミどころであると共に、現代人が広告に感じるウソ臭さを払しょくするという役割も持っています。また、ハイトーンボイスが特徴的なナダルさんに「低くて渋い声の寡黙な刑事」というギャップのある役を演じさせているのも笑いを生み出すポイントでしょう。

ホットペッパービューティーは男性も使えま・・・す!!! ナダルさん@korochiki_nadalのイメチェンも必見です◎ https://bit.ly/3cDWPto

Posted by ホットペッパービューティー on Wednesday, March 17, 2021

またもやこちらナダルさんの出演するホットペーパービューティーのCM。このCMのポイントはナダルさんがサービスに対して終始否定的なスタンスをとっていることです。ナダルさんは「ホットペーパーは女性だけが使うもの。」という生活者のインサイトを代弁する存在であり、好き放題に商品を否定し、母親と幼稚な言い争いを繰り広げます。この役どころは普段他の芸人と激しい言い争いをしているイメージの強いナダルさんにぴったりで、最大限に企画の面白さを引き出しています。

上記のように、「芸人に商品の魅力を必要以上に語らせない」というのは企画を面白くするポイントであると共に「広告のウソ臭さに視聴者が冷めて笑えなくなる」のを防ぐためのポイントでもあるのです。

次回の記事では「芸人に商品の魅力を必要以上に語らせない」という点を踏まえつつ、そこからさらに企画の面白さを強めるポイントについて考察していきたいと思います。

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