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人種や国が違っていても、、

部屋で窓を開けて過ごしていると、ときどき、どこからかタバコの煙の匂いがしてくる。一日中ずっとというわけではなく、5分や10分程度の短い時間。自分が吸わないだけに、そうした匂いに敏感なのかもしれない。

特に不快というわけではない。喫煙者だった祖父を思い出して郷愁に耽ったり、それが夜だったりすると、1日の仕事を終えて部屋でくつろいでいる時間なのかな、、と考えたりする。その人にとって束の間の休息なのかもしれない。皆それぞれの場で日々を戦っている。

ミュンヘンで泊まったホステルにロシア人の女性がいた。リサという名前。同じ部屋だったのでよく話をした。

モスクワ大学の学生で、第二次世界大戦の頃のドイツやヒトラーを研究テーマにしていた。ミュンヘンに来たのもそれが理由で、朝から晩まで図書館で勉強をしたり、資料集めで動き回ったりしていた。

食事も簡素に済ますだけと言うので、彼女がロシアに戻る日、ちょっと早起きしてチキンの味噌煮込みを用意した。ホステル近くのスーパーで買った鶏肉やピーマン、玉ねぎを鍋で煮込み、味噌や醤油、砂糖で味をつける。

鍋をはじめとして、味噌や醤油なども日本から持参した。自炊で豚の角煮をよく作っていた時期で、旅行でも食べたいと思っていた。調味料を持っていけばお金の節約にもなるし、現地で手に入るかも分からない。

チキンにしたのは、もし誰かと分け合う場合、豚肉だと宗教的理由などから忌む人がいるためだ。もっとも、持参した圧力鍋はふだん豚肉の調理でも使ってはいる。

以前、カポエイラをしている友人たちとアメリカ旅行をしたことがあった。同じくカポエイラをしているユダヤ系アメリカ人の家に泊めてもらったが、彼女は肉と野菜の調理器具は完全に分けていた。友人が誤って混同して使った時、もうその鍋は使えないと力なく首を振った、、。

自分の場合は全て同じ鍋を使っているため、彼女のように徹底した人間からすれば論外となる。けれどもリサの場合は特にこだわりがなかった。パンと合うね、と言っておかわりまでしてもらえた。作った甲斐があったと思った。荷物が多かったので駅まで運ぶのを手伝い、ハグをして別れた。

その彼女がSNSに、「向かい側のアパートに住む人がいつもベランダでタバコを吸う」と投稿していた。「煙がこちらの部屋に入ってくるのでやめてもらいたい、でも喫煙は禁止ではないので言いづらい、、」。

ウクライナへの侵攻が始まる前だったが、同情と同時に、人間はそんなに変わらないよな、、と感じたものだ。人種や国が違っても。


ミュンヘン








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