バクの頭は重い 2024.5.21

今日は、湖に浮かぶボートに寝そべっていた。
水面は深い青色をして、鈍く光っていた。
ボートから見える山も空も、紺色に近い青色だった。山の麓に赤い屋根の建物がひとつ。青の中の赤がアクセント。
気温は過ごしやすく、眩しい日差しもなかった。曇っていたのかもしれない。空が白かった記憶はないからよくわからない。心地良い肌触りの涼しい風が吹いていた。冬という認識だったと思うが寒くはなかった。
ボートには友人が同乗していて、哲学とか、抽象に近いような話をぽつぽつと交わしていた気がする。
時間が止まっているような感覚があった。スーラの絵のような陰。どこか気の沈むようなその場所が心と調和して、ずっとここにいられる、と思った。目が覚めてもよくおぼえている。

スーラといえば最近、アンリ=エドモン・クロスという画家を知った。
スーラと同じく点描で新印象派に分類される画家だという。Google Arts&Cultureがスマホのホーム画面にさまざまなアートを表示してくれる設定にしていて、そこで1枚の絵が紹介されていた。
1896年のThe Pink Cloud という作品。描かれているのは水辺の木々と空。その名のとおり、ピンク色に染まった大きな雲に目がとまる。雲には、青色や白色の部分もある。空は、青、緑、黄、オレンジ、ピンク、と、虹色をしている。湖か海か川かはよくわからないが、水面にも空の色が映っている。
夢を見ているような景色に惹かれた。きっと、そこに吹く風はやさしくて、すこし湿っている。そんな気がした。

この間、半分寝ぼけながら「バクの頭は重い。」と書きはじめた日記がある。砂漠に寝っ転がり、お腹にバクの頭を乗せていた夢を見た日。現実世界でバクの頭を乗せたことはないが、目が覚めてもしばらくはお腹の上にバクの重みが残っていた。照りつける太陽と熱い砂、にじむ汗のうっとうしさも記憶に新しかった。だから一部始終をできるだけ事細かに書き残した。

夢も夢のような絵画も、その場所でたしかに風や温度を感じ、そこにあるものを見つめ、感じていた気がするのに、実際には行ったことがないし、そんな場所はきっとどこにもない。いい気分だ。


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