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風のそよぐ、静かな劇場

大学生の頃、友人と「有名戯曲の上演をしたいね」と話していた時期があった。しかし演劇サークルとの繋がりもないうえにのほほんとしていた我々は実行しないうちにコロナ禍を迎え、卒業した。
わたしは当時、舞台装置が揃っていなくても、風がそよぐ公園の木の下で、椅子でも持ってきて、お客さんに集まってもらって、少ない出演者で、朗読っぽくできたらそれも良いかも、と想像していた。脳内の劇場は太陽に照らされた緑が明るくて、静かだった。

最近、久しぶりに演劇を観た。とってもパワフルな舞台で、楽しい物語ではなかったけれど、役者さんたちの躍動が楽しかった。観劇後、パワフルの反動なのか、頭の中に「風のそよぐ静かな劇場」が帰ってきた。やっぱりいつかやってみたい、と思った。
かつては既成戯曲の上演を考えていたけれど、今は自分で書きたい、と思っている。2人が椅子に座ってゆっくりと語るような、静かな会話劇にしたい。対話を中心とする。動きも音楽も少ない。とても静か。いったいそこにドラマは生まれるのだろうか。そもそもドラマを生みたいのだろうか。なにができるだろう。幅広く吸収して、ゆっくり考えたい。
お客さんが寝るだろうか。それでもいい。以前「演劇をききながら寝る瞬間が最高」と言った人がいた。観劇の際は耳と目を全開、全て吸収する心意気だったわたしには衝撃の一言で、うっとりした。公園でそよそよと風に吹かれ、静かな言葉をきいて、気持ちよく寝てくれたらとても良いかもしれない。眠くなっちゃう演劇。
公園のルールとして、演劇の上演なんてことをして良いのかはわからない。でも、全国津々浦々探し回ったら、どこもできないなんてことはない気がする。それよりも、演劇を作った経験のほとんどない自分に山積みの課題がある。
いつかそんなことができたらどんなに良いだろう。いつか、いつかの夢として、そっとここに書いておく。

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