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百合SFアンソロジー『アステリズムに花束を』感想

アステリズムに花束を』を読み終わりました。どれも秀作ばかりですごい短篇集ですね! 『危険なヴィジョン1』『最初の接触』もあわせて、優れたアンソロジーがいくつも出てきて短篇好きには嬉しい限りです。ほんと、テーマアンソロジーで外れがないってすごいことですよ。

その中から私がさらに選ぶとすると、伴名練「彼岸花」と陸秋槎「色のない緑」になりますかね。伴名練はSFマガジン以来の再読でしたが、やはりすごいです。綺麗すぎます。陸秋槎さんの作品は初めて読みましたが、ものすごく面白かったです。こういうタイトル回収は卑怯ですよ?(誉め言葉)

伴名練「彼岸花」は、過去作「ホーリーアイアンメイデン」と同じ書簡体ながら文章の美しさが格段に上がっていて感激しました(オタク)。期待を裏切るどころか、毎度毎度期待を上回る作品が飛び出してくるので期待するのを止められないんですよね......。今年出るという短篇集も超期待しています。

陸秋槎「色のない緑」は前評判を聞いて期待していましたが、この作品も期待を軽々と超えてきました。自然言語処理と数学的話題が登場してきたので文理融合的なSFが好きでかつ言語SFが好きな私にはど真ん中。そして最後がいい。いや、ほんとによくこんなにいい作品ばかり集められたものです......。

そして言語SFがもうひとつ、櫻木みわさんと麦原遼さんの合作「海の双翼」が収録されているのがうれしいところ。こちらは視点によって文体が露骨に変わるのが新鮮。おそらく各視点ごとに作者が入れ替わっているのではないかと。これによって百合で描き出される人物間の感情が際立ってくるんですよね。異質な言語間のすり合わせをしながら、文体面でも異質な文と文とをつなぎ合わせてひとつの作品にしていく、という多層構造になっているのが面白かったですね。合作で露骨に文体の差を全面に押し出した作品に出会ったのが私にとっては非常に新鮮でした。これも百合とSFとが出会って行きついた新境地なのでしょうか?

#Vtuber #SF #読書 #書評


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