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アレソレ会話

このごろ名前がスッと出てこない。

「アレ、ほらほら、あの子だよ~。すんごい可愛くてさ、映画とかいっぱいでててさ、ほら、なんか千年に一度?とかの美少女でさ、すんごい可愛いくて」

「あぁ、橋本環奈?」

みたいな会話が日常茶飯事になっている。

もともと、特別にすきなもの以外はぼんやりと全体像をみてそれと認識できればよし、としていたところがあるんだと思う。
たとえば漫画を読んでいて『こういう姿かたちのキャラ』で『名前の字面はこんなかんじ』が認識できればはっきりと名前を覚えなくてもなんとなく読み進められたりする、みたいな。

しかしそれにしたって、このごろはさすがに酷い気がする。

同年代のひとにこの話をすると「わかるわかる!」となるから、年のせいなのかもしれない。

文章を書くときも同じで、「こういうのを表現するのにちょうどいい単語があった気がするのになぁ」と思いながらも出てこなくて、Googleに想いのたけをぶつけて単語を探してもらうこともある。(でも出てこないことも多々)

普通に困ることが多くなってきている感が否めない。

どうしたものか、と思っているうちにふと思い出したのだけど、そういえば昔ホテルの職場で働いていたころの上司がアレソレ言いまくるタイプだった。

上司が
「大変だッ! アレどうなってるんだっけか、アレ」
とバタバタやってきて、
「あー、アレはとりあえずここまで準備してましたよ」
と私が資料を渡すのを別の同僚が見てて

「ふたりしてアレアレってなんなの? なんで通じんの?」
と笑っていた。

たぶん、直近の懸念といればアレだ、という共通認識が私と上司の間にはあったからだと思うんだけど、いま思えばけっこう気が合っていたんだろうなと思う。

「アレ」としか出てこない自分の頭はもどかしいけど、
「アレ」と言って相手がポンを答えを言ってくれたりするのは嬉しい。

「アレ」がすんなり通じてなんでもなく返してくれたりするのもちょっと感動する。

日頃のコミュニケーションだとか、似たような価値観だとか、共通の体験の多さだとかが「アレソレ会話」を支えてくれる気がする。

アレソレばかり言って申し訳ないけど、アレソレ言ってわかり合えるひとたちを、私はもっと大切にしたいなぁと思う。


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