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【ベートーヴェン】ナポレオンの台頭とハイリゲンシュタットの遺書の裏で

概要

  • 作曲者:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

  • 作品番号:Op. 37

  • 調性:ハ短調

  • 作曲年:1800年から1803年にかけて

  • 初演:1803年4月5日、ウィーン

構成

この協奏曲は3つの楽章からなります。

  1. 第1楽章:Allegro con brio

    • 形式:ソナタ形式

    • 特徴:力強いオープニングと劇的な展開が特徴。オーケストラによる導入の後、ピアノが主要テーマを展開します。

  2. 第2楽章:Largo

    • 形式:三部形式

    • 特徴:穏やかで内省的な楽章。美しいメロディとピアノのリリカルな表現が際立ちます。

  3. 第3楽章:Rondo – Allegro

    • 形式:ロンド形式

    • 特徴:生き生きとしたテーマが繰り返される活発なフィナーレ。技巧的なピアノパートが見どころです。

聴きどころ

  • 第1楽章の冒頭のオーケストラとピアノのやり取りは非常に力強く、ベートーヴェンらしいエネルギッシュなスタートです。

  • 第2楽章は対照的に非常に静かで、ピアノの音色が非常に美しく響きます。

  • 第3楽章のロンドテーマは非常に覚えやすく、コンサートの締めくくりにふさわしい躍動感があります。

初めての聴き方

  1. 通しで聴く:まずは全体を通して聴いてみて、全体の雰囲気や各楽章の違いを感じ取ってください。

  2. 楽章ごとに聴く:次に各楽章ごとに分けて聴き、特徴や気に入った部分に注目します。

  3. リピート:気に入った部分や理解を深めたい部分は繰り返し聴いてみましょう。

おすすめの録音

  • アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)、サイモン・ラトル指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の録音など、多くの名演がありますので、いくつかの異なる演奏を聴いてみるのも良いでしょう。

作成背景と歴史的背景

ベートーヴェンはこの作品を1797年頃からスケッチし始め、1800年頃には大部分を完成させましたが、1803年の初演前に最終的な仕上げを行いました。この初演では、ベートーヴェン自身がソリストを務め、譜面は未完成のままで、即興的に演奏された部分も多かったと言われています。

影響とテーマ

ベートーヴェンの内面的な葛藤や「聴覚の喪失」が反映されているとも言われます。特に、この作品が完成された1802年は、ベートーヴェンが「ハイリゲンシュタットの遺書」を書いた年であり、聴覚の喪失に対する絶望と芸術に対する決意が表現されています。この手紙は、彼が自殺を考えつつも最終的には芸術のために生き続ける決意を示したものであり、この内面的な葛藤が協奏曲の暗い「ハ短調の調性」に反映されている可能性があります。

音楽的特性

第1楽章は、その激しいオープニングで知られており、フランス革命やナポレオンの台頭の影響を受けたとする解釈もあります。この楽章は、従来のモーツァルト的な形式を破り、ピアノが中心となって展開します​。第2楽章の「Largo」は、異例の「ホ長調」で書かれており、ロマンティックな風味を持つ優雅なメロディが特徴です。第3楽章の「Rondo」は、ハ単調に戻り、活気あふれるフィナーレで締めくくられます​。

作曲時の困難

ベートーヴェンは、この協奏曲を作曲している間に聴覚の問題が進行していたことが知られています。彼は1801年に友人に宛てた手紙で、社会的な場から遠ざかっていることや、聴覚の問題が彼の職業にとって重大な障害であることを告白しています。彼の作品において、この困難に立ち向かう意志が表現されていると考えられています​。

著名な音楽家の解説

ジョン・スーチェットの解説

ジョン・スーチェットは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番が持つ「軍事的、行進曲的な特徴」について言及しています。彼は、フランス革命やナポレオンの台頭がこの作品に影響を与えた可能性があるとしています。第1楽章の力強い導入部は、リズミカルで太鼓のようなタッチを特徴とし、第2テーマに向かう力強い移行が続きます。また、ベートーヴェンの内面的な葛藤や聴力の低下がこの作品に反映されている可能性も示唆されています[1]。

ダニエル・バレンボイムの解説

ダニエル・バレンボイムは、2007年のルール・ピアノ・フェスティバルでこの協奏曲を演奏しました。彼はベートーヴェンの音楽の第一人者として知られ、この協奏曲を通じてベートーヴェンの技巧と感情の幅広さを強調しています。彼の演奏は、ベートーヴェンの深い内面的な世界と、その技術的革新を見事に表現しています[2]。

ジェーン・ジョーンズの解説

クラシックFMのジェーン・ジョーンズは、この協奏曲が持つ力強さと詩的な対比について説明しています。第1楽章の嵐のような激しいパッセージから、第2楽章の優雅で叙情的なフレーズへの移行は、聴衆の感情を巧みに操るベートーヴェンの手腕を示しています。また、当時の最新のピアノ技術を活用したこの作品は、ベートーヴェンが自身の楽器にどれだけの可能性を見出していたかを示しています​[3]。

私の教材




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[2]

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