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【学科】ファンズワース邸(用途/週末住宅)

前回からの続き【建築作品を学ぼう♪】シリーズ

今回は,アメリカのシカゴ郊外に建つファンズワース邸.
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■解説

~↓↓↓1分で解説!YouTubeショート動画↓↓↓~

第二次世界大戦が1945年に終戦を迎える.その5年後の1950年,ファンズワース邸がアメリカのシカゴ郊外に竣工した.週末を郊外で静かに過ごすための週末住宅(別荘建築)である.設計者は,ミース・ファン・デル・ローエ(以下,ミース).ドイツ出身であるが,第二次世界大戦中,ナチスの迫害からアメリカに亡命してきた.そんなミースがアメリカで設計した最初の,そして,彼の生涯で最後となる独立住宅がこのファンズワース邸である.

8本のH型鋼の柱に溶接された鉄骨梁を介して,屋根スラブ,及び,床スラブを取り付けた構造が特徴的.ボルト接合でなく,当時,神業のような施工精度と技術が求められる溶接接合によって,柱や梁,サッシなどが接合されている.そのため,荷重を支える柱が非常にスリムで,かつ,軽やかで,柱に支えられるテラスや床,屋根といった3枚の床面が宙に浮遊しているように感じる.床スラブの端部は片持ち(キャンチ レーバー)となっているが,それが一層,スラブの浮遊感を高めている.

この軽やかさを実現させるため,膨大な建設費がかかってしまい,ミースと施主との間で裁判にもなった.

その8本のH型鋼の柱は,ガラスで囲まれた内部空間から外部に持ち出されているため,内部空間に柱は存在しない.この無柱の内部空間は平面的に自由であり,これをミースは,ユニバーサル スペース(間仕切りのないフレキシブルに利用可能な空間)と呼んだ.

床高をGL+1.5mと上げている理由は,敷地は,近くに大きな川のある湿地帯であるため,川の氾濫に配慮してのことだ.

尚,ファンズワース邸の場合,トイレや浴室,キッチンといった設備は一まとまりに設備コアとして集約され,中央部に配置されている.そんな設備コアの回りを回遊できるワンルーム空間となっており,家具によって,リビング,キッチン,寝室などが緩やかに分節されている.


■学科試験ではどう問われる?

平成29年(2017年)の一級建築士「学科」試験で問われた知識です↓

【計画問題】正しい記述かどうか?
ファンズワース邸(ミース・ファン・デル・ローエ)は,広大な敷地に建つ週末住宅であり,H形鋼の柱に溶接された梁を介して屋根スラブ及び床スラブを取り付けた構造に特徴がある.

【解答】〇

平成1年(1989年)と11年(1999年)には,↓のような知識が問われました.

【問題コード01174】正しいか,誤りかで答えよ.
ファンズワース邸(ミース・ファン・デル・ローエ)は,コンクリートによる構造の特徴を生かしたユニバーサル空間をもつ.

【解答】×

【解説】ファンズワース邸は,コンクリート構造ではなく,神がかり的な溶接技術を駆使した鉄骨造の建築である.この鉄骨造によるユニバーサル空間(ユニバーサル スペース)は,住宅という用途にとどまらず,オフィスビルや学校,商業施設といった様々な用途の建物に,その規模(面積・階数)に関係なく,また,地域性にもとらわれることなく拡大・展開できるため,それがインターナショナル スタイル(国際様式)へと進化していく.


■まとめ【サマリーキーワード】

 ✅週末を郊外で過ごすための住宅
 ✅鉄骨柱と梁を神がかり的な溶接接合
 ✅ユニバーサルスペースの原点


■建物概要(製図試験対策用)

 【建 物 名】ファンズワース邸
 【竣  工】1950年
 【階  数】地上1階建て
 【構  造】鉄骨造
今回は以上です♪
次の建築作品へ続く.

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