【西洋建築史】フィレンツェ大聖堂(イタリア)_その2
前回からの続きです.
平成22年の一級建築士試験には,次の知識が問われました.
【解説】
キリスト教の教会をもとに発展してきた中世(ロマネスク→ゴシック)に代わり,キリスト教が誕生する前のギリシャ・ローマ建築という古典の復興を目指したのがルネサンス建築である.それは,フィレンツェ(イタリア)から始まった.その代表作がのフィレンツェ大聖堂である.長い年月をかけて,複数の建築家が人生をかけてデザインしていきましたが,最大の問題は,上部の巨大ドーム(クーポラ)のデザインであった.この難問を解決した建築家がF.ブルネレスキである.したがって,正しい記述である.
【解答】◯
平成28年の一級建築士試験には,次の知識が問われました.
【解説】
問題文の記述は,ピサ大聖堂でなく,フィレンツェ大聖堂の特徴である.ルネサンス建築の特徴の一つは,正円や正方形や長方形といった幾何学模様のデザインである.フィレンツェ大聖堂の場合,外装はピンクや緑の大理石によって幾何学模様が装飾されている.
クーポラ(ドームのこと)やランターン(ドーム頂部の採光部)は,F.ブルネレスキのデザインによる初期ルネサンス様式である.このドームのデザインには,古典(ギリシャ・ローマ建築時代)を模範とし,その価値観や技術,デザイン手法が取り入れられた.そんなルネサンス運動はフィレンツェ(イタリア)から,このフィレンツェ大聖堂のドームから始まったと言っても過言ではない.
なお,問題文の記述には,「ファサードはネオ・ゴシック様式の建築物」とあるが,ネオ・ゴシックとは,ゴシック・リヴァイヴァルとも呼ばれ,18世紀後半から19世紀にかけて興ったゴシック建築の復興運動である.フィレンツェ大聖堂のファサードは,数世紀に渡り何度もデザイン変更が行われながら,19世紀(1887年)にネオ・ゴシック様式として完成した.
問題文のピサ大聖堂は,ゴシック様式の一つ前の時代のロマネスク様式の代表作であり,そのファサードには,ロマネスク様式の特徴の半円アーチが多様され,窓も少ない.したがって,この「ファサードがネオ・ゴシック」というキーワードから,誤った記述と判断させようという問題作成者の愛情を感じる出題であるように思う.
【解答】× 続く
【その他,参考となるYou Tube動画】時間のない方は視聴不要
以上
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