見出し画像

【西洋建築史】サン・ピエトロ大聖堂(ヴァチカン/ローマ)



前回からの続きです.

◆平成19年に出題されたサン・ピエトロ大聖堂

平成19年の一級建築士試験には,次の知識が問われました.

【問題】◯か×で答えよ
サン・ピエトロ大聖堂(ヴァチカン)は,双塔形式の正面にバラ窓のある建築物である.


【解説】

Google Earthより

サン・ピエトロ大聖堂↑は,キリスト教(カトリック)の総本山である.もともとは,4世紀に建設されたバシリカ形式の教会堂であったが,諸事情があって荒廃していた.そこで,ルネサンス期からバロック期にかけて再建される.ミケランジェロ,マデルナ,ベルニーニ等,多くの建築家がその設計に関わった.60秒の解説動画(YouTube)は↓

低迷し始めていたキリスト教の威信を取り戻すため,膨大な資金がその建設に注ぎ込まれたが,その資金を集めるための免罪符(お金を払えば,それまでの罪が許されてしまう証書)の販売が,ルターの宗教改革を引き起こす.その汚名挽回のため,教会側は,一層の威厳のある空間を建築家に求めるようになり,バロックという建築様式が誕生する.

サン・ピエトロ大聖堂の大ドームは,ミケランジェロが設計したルネサンス様式のデザインであるが,内装については,建設途中に他界したミケランジェロの後を継いだベルニーニよるバロック様式のデザインとなっている.したがって,サン・ピエトロ大聖堂は,ルネサンス建築とバロック建築という2つの様式が内在している.

サン・ピエトロ大聖堂の平面図については,↓の57秒の解説動(YouTube) をご視聴ください.

ベルニーニによるバロック式デザインについては,↓の60秒の解説動(YouTube) をご視聴ください.

問題文には,「双塔形式の正面にバラ窓のある建築物である」とあるが,ゴシック建築のように双頭形式でもなければ,バラ窓もないため誤り.

【解答】✗ 


◆令和元年に出題されたサン・ピエトロ大聖堂

令和元年の一級建築士試験には,次の知識が問われました.

【問題】◯か×で答えよ
サン・ピエトロ大聖堂(ヴァチカン)は,身廊部と袖廊部がともに三廊式であり,内陣には周歩廊と放射状に並ぶ複数の祭室とをもつゴシック建築である.


【解説】
サン・ピエトロ大聖堂は,ゴシック建築でないため誤り.この問題は,サン・ピエトロ大聖堂が「神のための建築」をデザインしていたロマネスやゴシック建築の後の,「民のための建築」を目指し,古典建築(=ギリシャ・ローマ建築)を模範としたデザインを追求したルネサンス建築であり,さらにそこから,装飾的表現性を高めていったバロック建築であることから誤った記述であると判断できれば十分です.

【解答】✗ 
上記の解説動画(60秒YouTube)は↓

続く



【参考となるYou Tube動画】時間のない方は視聴不要

以上

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?