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わたしの本棚④

 三日坊主はとりあえず脱出できたということで。
④エッセー関連から、三冊本をご紹介したいと思います。

①荒井裕樹『まとまらない言葉を生きる』(柏書房)

 誠実さに貫かれた言葉に触れる時、表現できない感動を覚えます。そしてそのような「大切に紡がれた」言葉は、相手を傷つけるのではなく、相手の心にそっと届くような気がします。人間を人間たらしめているのは「言葉」だと思うので、それを大切にしなくなれば、言葉とともに育った知性や理性もともに失われるのではないかと、個人的には思っています。
この本で紡がれている言葉は、優しく、何よりも誠実だと思います。読んでいて、作者の気持ちがすっとしみ込んでくる。同じように「言葉」を大切になさっている方々にぜひ読んでいただきたいです。

②遠藤周作『自分をどう愛するか』(青春出版社)

 モスクワに持って行ったほど好きな本です。遠藤周作の好きなところは、自分の弱さに卑屈になることなく、すねることもなく、ごまかすこともなく真っ直ぐに向き合って、まっさらな、謙虚な、愛のこもった眼で見つめているところです。彼は自分の弱さを棚に上げて他人に厳しくすることはない。「人間って、どうしようもないよなあ」と、むしろ肩をそっと抱いてくれるような優しさがあります。自分のふがいなさに落ち込んだ時、仕方がないよ、僕らそれでもやっていけるよ、やっていこうよ、と言ってくれるような本だと思います。

③奈倉有里『夕暮れ明けに夜明けの歌を』(イースト・プレス)

 私がモスクワに行って驚いたことのひとつは、(事前に知識として知っていたとはいえ)多くの人が、多くの詩をそらんじることができたこと、でした。とある祝日に父から詩を贈られたという友人もいましたし、授業で覚えた詩を唱えると、友人たちは途中から一緒に詩を歌い始めました。道端で自作の詩を披露している人もいました。文学的素養の高さに驚かされました。この本で私が感じたのは、一抹の嫉妬(私はこんな風に何かに一途になったことはありません)と、作者の静かに燃える情熱への尊敬でした。モスクワを、ロシアを、普段報道されている部分とは別の視点から眺めることができる本だと思います。

 感動を言葉にするのってとても難しいですね…。これだけ丁寧で誠実で美しい言葉を読んでいるはずなのに、いざアウトプットとなると「めっちゃよかった」という陳腐な単語しか出てこないのはなぜでしょう。かなしみ。
もし以上の本をすでに読まれた方がいらっしゃいましたら、ぜひ感想をコメントで教えていただければ幸いです。

 最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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