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ユースワーカーのモヤモヤ①

多様なモヤモヤ

 教育系の大学を卒業後、教職に就くことなく、国立総合児童センター[こどもの城]を運営していた今の財団に入職した。今思えば、児童館についての理解は決して十分ではなく、学生時代にたまたま接した社会教育的な活動がとても楽しかったという理由で入職を決めていた。当然ではあるが、その後、時間をかけて児童館について学び、理解を深めていった。その後、埼玉県草加市の住宅地の中にある地域密着型の児童館での勤務を経て、現在のユースセンター(青少年交流センター)へと辿り着くことになる。並行して地元住民のボランタリーな活動としてプレーパークの運営に携わったことも現在の自分に大きな影響を与えている。
 30年を超える児童館時代には、さまざまなモヤモヤがあったが、現在のユースセンター勤務になってモヤモヤがより多様になってきたように感じる。これがユースセンターだからなのか、自分が年齢を重ねたからなのかは分からないが、これまで個人的に感じてきたモヤモヤについて、徒然と書いていきたい。

児童館時代のモヤモヤ

 児童館時代のモヤモヤをふりかえると、一番のモヤモヤは「遊ぶ」ことをどのように考えるかということ。児童館は、児童福祉法の第40条に「児童厚生施設は、児童遊園、児童館等児童に健全な遊びを与えて、その健康を増進し、又は情操をゆたかにすることを目的とする施設とする。」と規定されている。細かく見ればモヤモヤポイントは多々あるのかもしれないが、自分にとってのモヤモヤは、「遊びを与えて…」という箇所だった。
 遊びの定義は、ホイジンガの著書「ホモ・ルーデンス」の中に書かれているものが有名だと思うが、その中では遊びは自由な、主体的な行為であり、その行為自体が目的であると述べている。つまり「遊ぶ」ことは、決して誰かに与えられるものではない。健康の増進や情操を豊かにするための手段だとすれば、その活動は遊びとは称されるものなのだろうかという疑問が湧いてくる。
 児童館では、遊び文化の伝承、きっかけづくり、仲間づくりなどの視点から、遊びをプログラムという形で提供することがある。こうしたプログラムをきっかけに、子どもたちが新たな文化と出会い、遊びを創造したり、変化を起こしたり、より主体的な遊びが発展していくこともある。一方で、プログラムを提供することで、何か子どもたちを消費者的な受け身の立場にしてしまったり、子どもたちの自由な遊びを制限してしまったりするリスクもある。このプログラムという遊びの提供をどう考えるべきなのか?基本的に遊びのプログラムを提供していないプレーパークでも豊かな遊びは展開されているし…。自分にとっては大きなモヤモヤとなった。
 遊びのプログラムをすべて否定するつもりはないが、そこには功罪両面があること、それに関わる大人がその矛盾を認識していること、つまりモヤモヤしながら、バランスをとることが大切なのではないだろうかと、いつからか考えるようになった。

ユースセンターにはよくある音楽スタジオ。
スタジオには「やりたい」と目的を持った若者が集まる。

BeとDo

 先日、協会で運営するユースセンターの研修で、居場所主体的な活動について、改めて考えるきっかけをいただいた。個人的には、ユースセンターの目指す姿として、若者が自分らしく居られる「居場所」であり、そこで力を蓄えた若者が少しずつ「やってみたい」ことを見つけ、実現するプロセスの中で若者の変化を促すようなイメージを持っていた。つまり、居場所と主体的な活動とを「対」として捉えている自分があった。
 この研修では、この居場所と主体的な活動は両立できるのかという問題提起をいただいた。確かに、若者に対して「ありのままの自分でいい」と言いながら、やってみたいことを通じて、成長して欲しい、つまり変化を願っている。何か矛盾している。ここでもモヤモヤしながら、バランスをとることが求められている。
 「そこに居る=Be」と「そこで何かをする=Do」とのバランスだが、もしも両立するのであれば、やはりBeが土台になるべきだと感じている。多様な若者が、ユースセンターを自分らしく過ごせる居場所として認識してくれることは、多くのユースワーカーの願いである。そこに成長という変化を願う側面があからさまに見えてしまうと、「今のままの君ではいけない」という、意図しないメッセージにもなりかねない。居心地の悪さを感じてしまう若者もいるだろう。
 「やってみたい」を応援することは大切だと思うが、そこに変化や成長を「対」として意識し過ぎてはいけないのだろう。遊びの議論と全く同様で、それ自体を目的として行った行為の結果として、あくまでも結果としての変化や成長があるからだ。だからこそ、居場所と主体的な活動の相互関係に、モヤモヤを感じ、考え続けることは、ユースワーカーにとって大切なことなのかもしれない。

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