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栄養士時代のお餅の思い出 その1

今日は1月7日。七草粥を食べる日ですね。お餅を食べて疲れた胃腸を休めるために食べる七草粥。新年明けてからまだしっかり餅を食べておらず、胃腸も元気だったため、七草粥を堪能するため先ほど磯部焼きを二つ平らげました。

お餅というと思い出すのが栄養士時代の鏡開き。
社会人一年目、当時私は地元ではまあまぁ大きな社会福祉法人に勤めていました。最初に配属されたのは、法人の中でも一番重度の方が多い特別養護老人ホーム。しっかり意思疎通できる人の方が少ないくらいの施設でした。

当然日に日に皆さん衰えていくし、新しく入所される方も随分と身体レベルが落ちてから入ってくるようなことがほとんどでした。食事も「ムース食」といった、一度普通の食事をミキサーにかけ凝固剤でゼリーのように固め直したものを食べている方のほうが多いようなところだったのです。

そんな施設の鏡開きです。普通に食べたら大変です。
しかし大丈夫、安心してください。

現代にはすごいものが発明されており「お餅風ムース」という味が完全にお餅なのに飲み込みやすい「素材」が存在しているのです。素材ですのであんこをかけたり醤油をたらしたり、アレンジも自由自在。お汁を注いでお雑煮だって作れちゃうすぐれもの。

SF お餅風ムース30 (ヤヨイサンフーズ)

嚥下咀嚼が不安な方も、問題なくお餅を食べられるのです。私も食べましたが、ちゃんとお餅味。さっくりした食感でありながらもしっかりと"餅を食べている"感覚になります。

…ただ残念ながらこの「お餅風ムース」が法人に広まったのは数年後。
どうやら当時、上の人たちが「本当のお餅じゃないからおいしくない」と拒否していたらしいのです。それから何年かして改めて食べさせた時に
「これちゃんとお餅ね。これでいいわね。」となって提供するようになったとか。

そのため私が勤務していた当時は危険なのでお餅は出さないというスタンスでした。
この判断は決して珍しくはなく、デイサービスなどでない限り「ガチの餅」を出す高齢者施設の方がレアだったと思います。私の勤めていた法人内でも、比較的元気な方が多い施設ですら提供はしていませんでした。

私が配属された施設をのぞいては。

そうなんです。もっとも重度の方が多い私の施設だけ「ガチ餅」を提供していたんです。なんででしょう?よくわからないですよね。答えは簡単です。
「高齢者はお餅が好きだから」です。

「普段はムース食の人もお餅だけは食べるのよ」
「ほら、赤飯だけは食べる利用者さんもいるじゃない」

そうやって大人が言うんです。意味がわかりません。まったくよくわからないけど、餅を食べるそうです。なので私たちは餅を準備しなければなりません。

だけどさすがに全員が餅を食べるのは困難です。ムース食よりもとろとろなミキサー食の人は絶対食べられないし、ムース食の人の中でもレベルに幅があるため、食べられる人と食べられない人がいます。ではどうするのか?餅を食べるのは何人なのか?

調べ上げるんです。

栄養士が担当の棟へ出向き、お餅を食べれる利用者を確認し
「餅食べる選抜メンバー」をカウントするのです。
餅オーディションに合格し選抜されたメンバーたちは、当日ホールに集められ、メンバー一同同時に餅を食べることができるのです。
そしてこの結果を元に餅を発注、厨房で細かく賽の目に餅をカットして鏡開きを迎えるのです。

次回
「選抜メンバーホールに集合!命をかけて餅を食う」お楽しみに!

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