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電力の HTT の推進 最終報告(第 23 回:SOINN 株式会社、第 24 回:inQs 株式会社、第 25 回:エリーパワー株式会社)

今回は、2024年3月に協定期間を終了した第23回・第24回・第25回ピッチイベント優勝社との協働プロジェクト「電力のHTT「H」減らす・「T」創る・「T」蓄める)の推進」についてご報告いたします。

■第 23 回「H:減らす」優勝社 SOINN 株式会社との協働

東京ビッグサイトの空調設備のオペレーションを AI が学習・推論することで熱量(電力量)を削減
SOINN が独自に開発する AI は、熟練のオペレーターによる空調オペレーションを学習し、その日の気候データや会場の室温・湿度やイベント内容といった利用データ等から最適な空調制御を行うシステムです。
従来オペレーターの経験と勘に大きく依存し、属人化していたオペレーションを、様々なデータを組み合わせて分析することで、消費熱量(電力量)の削減と、ホール間の室温差を減らし快適性を向上させる効果の双方が期待されます。

冬季期間中のAIによる空調制御レコメンドは所定の省エネ・快適性向上目標をクリア
2023年度末に東京ビッグサイトで開催された大規模イベントにて、AIシステムによる最適化機能を用いた空調制御を実施し、その省エネ・快適性向上効果の実証を行いました。
省エネの観点では、使用電力が平均38%削減、熱量は平均42%削減、快適性の観点では空間内の温度差が1.9℃減少、変動幅は1.6℃減少(≒空間内の温度が通常よりも安定した)となり、当初の目標を概ねクリアできた形となります。
また、現在はAIの最適推論に基づいて人が空調を操作していますが、今後AIが空調を全自動制御することを目標としており、実地での検証を含む様々なテストを行っていきます。

■第 24 回「T:創る」優勝社 inQs 株式会社との協働

新たな地産地消型エネルギーの創出を目指すべく、地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターに太陽光・室内の明かりから発電するガラスを設置中小企業への技術支援機関である東京都立産業技術研究センターでは、inQs の内窓型及び可搬型発電ガラスシステムを同センター施設内に設置し、太陽光と室内の明かり双方で発電させる実証実験が行われております。
inQs の発電ガラスシステム「SQPV」は、その外観は一見窓ガラスのように見えますが、実際は2 枚の向かい合った板ガラスの内側に透明な発電層が搭載まれており、部屋の内外の光を受けてSQPVガラスは発電します。
既存の建物の窓ガラスに内側から設置できるような工法も考慮されており、建物内でエネルギーの創出が可能なシステムとなっています。

ガラスシステムを内窓として設置し、運用データの取得終了
協働プロジェクト期間中、一部ガラスシステムの改良を加えながら、本ガラスシステムが内窓として設置しても、正常に安定的な運用が可能かどうかを確認するため、発電量と照度・温度・湿度の関係性などの稼働状況のモニタリング及びデータ取得作業を行ってきました。
日中は朝から夕方まで、季節や天候に関わらず安定した発電量が室内設置でも得られており、東京より高緯度の都市においてもその活用が期待できます。
さらに、今般の実証では、SQPVガラスは通常のガラス素材に比べてより大きな遮熱効果を得られる可能性を示唆するデータも取得することができ、建物の空調費コストを下げる見込みが期待されます。
また、協働期間終了と共に2024年3月をもって本ガラスシステムを取外し、内窓型ガラスシステムとして設置から撤去までの一連の運用方法も確認できました。

■第 25 回「T:蓄める」優勝社 エリーパワー株式会社との協働

ピーク電力の削減・シフトを目的とした可搬型蓄電池システムにより、電力需給のひっ迫緩和に貢献
エリーパワーが提供する可搬型蓄電池システム「パワーイレ・スリー」とその一括管理システムは、オフピーク時に電力会社の電気を蓄電し、ピーク時には蓄電池に蓄めた電気を放電することで使用電力のピークシフトを実現します。多くの台数を束ねることでより大きな効果を発揮するほか、停電発生時など有事の際にはスマホ等の充電スポットとして一般開放することもでき、多くの場所に設置することが理想的な運用となります。

東京都関連施設に設置した「パワーイレ・スリー」の試験導入を終了
有効活用されているモデルケースや事例紹介、設置場所や接続先の工夫等のアドバイスを行い、より多くの事業所で「パワーイレ・スリー」を利用してもらうよう、またより負荷の高い機器へ接続してもらうよう働きかけを行いながら、事業所全体での HTT 促進に向けた蓄電池システムの有効な運用を模索してきた本事業も2024年3月で終了となりました。
最終的な稼働状況としては、東京関連施設にて計 47 台が稼働中、うちピークシフト設定がなされているのは38台で、単なる非常用電源として留め置くだけでなく、積極的に電力のピークシフトに向けて活用されている事例も多く見られました。


 以上、電力のHTT(減らす・創る・蓄める)に関する3つの協働プロジェクトについてお伝えしました。
UPGRADE with TOKYOの協働プロジェクトとしてはいずれも事業を一度終了する形となりますが、HTT はゼロエミッション等にもつながる、東京都のエネルギー問題解決に向けた重要な取組であり、今後もスタートアップとの協働を通じたさらなる発展が期待されます。

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