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ARのUXデザインのヒント:身の回りにある使えそうな距離感

ARのデザインを考えるとき、X軸とY軸だけでなく、Z軸という奥行きも同時に考える必要があります。
スマートフォンやPCをデザインしていたときは、そこまで考慮しなくてもよかった第3の軸。
ウィンドウはどこに置いたら?
文字のサイズはどうしたら?
ボタンの大きさはどのくらい?
これらは何を基準にデザインしていけばよいのでしょう。

現実の距離感を集めてみた

ヒントは目の前にありました。
現実とデジタルが融合しているのがARであるならば、距離感も現実のものを使うことが近道だと思います。現実の距離感を使うことが不自然なくARに没入する助けになるでしょう。
ということで、今回はARに使えそうな身の回りにある距離感やガイドラインを集めてみました。

*距離感に個人差のあるものも含まれます。あくまでデザインの参考として見てみてください。

パソコンのディスプレイを見る距離

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まずは、パソコンです。
自分の目からパソコンのディスプレイ(27インチ)までの距離は、測ったところ約60cmでした。目の疲労を意識するようになってから、この距離感を保っていますね。
富士通が出している「パソコンを使う時の姿勢」のように、一般的に「ユーザーとディスプレイの距離は40センチ以上、ワイド画面ならば50センチ以上」がよいとされます。
ディスプレイのサイズにもよりますが、パソコンを見る距離は40〜60cmというのが基準になりそうです。

スマートフォンを見る距離

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スマートフォン(iPhone X)を手元で操作する時、見えやすい位置は約40〜50cmでした。
ついつい近づけて見てしまいたい時もありますが、目の疲れを考えると30cm以上は離した方がよく、スマートフォンのようなサイズのコンポーネントを表示する際は、適度な距離を意識した方が良さそうです。

腕の長さ

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スマートフォンとの距離を調べましたが、そもそも腕の長さが関係した距離感も多いですよね。
早速自分を測ってみると、肘を伸ばして肩から指の先までは約77cmでした。
日本人の成人の平均値は以下の通り。
男性:約74cm
女性:約67cm

この長さは肘を伸ばして力が入っている状態なので、肘を軽く曲げての動作が多いことを考えると、やはり50cm前後が無理なく手の届く範囲になるでしょう。
「ボタンを押す」「ドアノブをひねる」「何かを持つ」といったユーザーが行動を起こす必要のあるコンポーネントの配置の基準になりえそうです。

テレビを見る距離

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ゲーム機やビデオデッキ、ビデオオンデマンドでは、『10feet UI』を意識したがUIが考えられています。
『10feet UI』とは、リモコンを使って画面から10フィート(約3m)離れた場所から操作しやすいように、文字やボタンの大きさや配色が設計されていることです。
この”約3m”の距離感は、ARの空間でも当てはまる場面があるでしょう。
ソファに座ってARで映画を観るコンテンツを作る場合は、パソコンやスマートフォンとは違い、『10feet UI』に沿ったデザイン例が参考になりそうです。

人と会話する距離

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会話相手の情報を顔の周りに表示させたり、話している内容を吹き出しにしてみたり、頭に猫耳を付けてみたり、、、
会話の距離感はARでもよく使いそうな距離感です。

試しに、家族と何気なく会話している時の距離を測ってみたところ、

お互い立ちの状態:約80cm~1m
片方が座り片方が立ち、横並びの状態:約50cm
テーブルを挟んでお互い座っている:約80cm

状況によって相手との距離が変化していますね。
振り返ると当たり前なのですが、測ってみないと意外と気づかない差でした。

この距離感は基準としては固定しづらさそうです。
家族、友人、会社の同僚、全く知らない人など相手との関係によって変化がありますし、
また、「ソーシャルディスタンス」の考え方がこれから人との距離感をどんどん変化させていくでしょう。
現状を参考にしつつ、今後の変化を気をつけてみていく必要がありそうです。

看板を見る距離

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手の届かない遠いところに情報を表示することがあるかもしれません。
そんな時は、看板や標識といった環境デザインの分野のノウハウが参考になるかもしれません。
国土交通省が発表している『公共交通機関の旅客施設・車両等に関するバリアフリー整備ガイドライン』では、以下のような距離に対する文字サイズの定義が記載されています。

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まとめ

現実で何気なく接している自分と物との距離を、ARの中でも再現すると心地よいUXが生まれます。
AR空間の距離感に悩んだら、メジャーを持って、現実の距離を測ってみましょう。

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