魚住 陽向

野良な小説家・文筆家。フリー編集者●「それ町」の石黒正数先生の表紙イラストが目印!長編…

魚住 陽向

野良な小説家・文筆家。フリー編集者●「それ町」の石黒正数先生の表紙イラストが目印!長編小説『天然オヤジ記念物 江戸前不始末』→ http://amzn.to/12wb0G2 ●公式サイト☞ https://uozumi3.wixsite.com/hinata-site

マガジン

  • 散文プラント

    エッセイやらコラムやらテキストノートで公開したものを入れるトコ。他のもいろいろ入れるかもねかもねそうかもね〜♪

  • キュレーター魂

    文章書きではありますが、元々根っこに面白いものを並べて紹介したいという強いキュレーター気質を持っておりますのよ。

  • 魚住おすすめ堂♪ 帖民店

    魚住オススメの「本」「食」「音楽」などのセレクトショップみたいなマガジン。楽しそう、美味しそう、面白そうを共有したいな♪

  • 小説

    noteで公開してるのは短編小説。電子書籍でリリースされてる長編小説も買って読んでね♡

  • ボクっ娘のなれの果て、還暦を迎える。[エッセイ]

    還暦を迎える2021年の誕生日に向けてカウントダウンを発動。過去を振り返り、どーでもいい事やら昭和な思い出、関わってきた出版業界の片隅の出来事、独身・一人暮らし・老後の話まで個人情報炸裂なエッセイ連載である。

最近の記事

「マンガ原画展ツーリズム」宣言! 〜推し活とも聖地巡礼とも違う「あの頃へ旅する」コト!〜

■「ニュー・ツーリズム」の中の「コンテンツ・ツーリズム」 「ニュー・ツーリズム」という観光用語があります。 従来の旅行とは異なり旅行先での人や自然との触れ合いが重要視された新しいタイプの旅行ということですが、「ニュー・ツーリズム」も細分化され「スポーツ・ツーリズム」「コンテンツ・ツーリズム」などの言葉もよく聞くようになりました。 「スポーツ・ツーリズム」とは、スポーツを観戦しに行くための旅行およびそれに伴う周辺観光やスポーツを支える人々との交流などスポーツに関わる様々な

    • 『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第16棚

      第16棚・閉店時間「本の下僕(しもべ)」 ブックスあだち無双店を辞めてから3カ月ほど経っていた。 リストラといっても円満退社のつもりでいたので、何の遠慮もなく、通い慣れた書店に本を買いに行く。そう、今日はブックスあだち無双店のお客さんなのだ。何も臆することなく、お客さんなのだ。 駅ビルのエレベーターを上がって、レジカウンターに向かう。 相変わらず、忙しく真面目に働いている書店員たちの姿。今日のレジカウンターはメガネ先輩とツン先輩だ。何だか懐かしく思える。たった3カ月しか経って

      • 『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第15棚

        第15棚「店長の苦悩 〜別れは突然やって来る」 ——もっとシフトを増やしてほしい。 ブックスあだち無双店の仕事がわかってきて、おもしろく感じてきた頃のこと。こう思って、オタク店長に言ってしまったことが引き金となってしまう。 突然の別れはこうして訪れた。 ブックスあだち無双店の店長は当時30歳代半ば。 本人は否定していたが、マンガ好きは隠し通せるはずがない。社割(1割引き)で購入する大量のコミックスとラノベが物語っていた。 「大学卒業後はマンガ誌の編集者になりたかった」 出版

        • 『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第14棚

          第14棚「異常者・くじ男」 ——私は空気が読めない。 引っ込み思案で無口で空想ばかりしていた幼い頃はいじめられっ子で、友達は本だけ。しかし、「このままではダメだ」と節目節目で頑張って自分改革を行ってきた。頑張って喋りかける。友達をつくる。聞いてもらえるような楽しい話し方を工夫する。 だが、それはすべて付け焼き刃。根っこにある性格はそうそう変わらない。 気がつくと、不安定な明るさとバランスの悪いお喋り、そして元々の自信のなさが変な歪みを作り出す。 そして、読めていたと思っていた

        「マンガ原画展ツーリズム」宣言! 〜推し活とも聖地巡礼とも違う「あの頃へ旅する」コト!〜

        マガジン

        • 魚住おすすめ堂♪ 帖民店
          50本
        • キュレーター魂
          15本
        • 散文プラント
          23本
        • 小説
          26本
        • ボクっ娘のなれの果て、還暦を迎える。[エッセイ]
          19本
        • ぱしゃりマガジン
          57本

        記事

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第13棚

          第13棚「アナログ万引き 〜情報はタダじゃない!」 携帯電話が普及し、スマホが主流となっている現代社会の日常で「デジタル万引き」という言葉を一度ぐらいは耳にしたことがあるだろうか。 書店員になる以前には、本屋さんの店先で、その現場を目撃したことがある。求人情報誌を手に取り、自分の興味のある求人情報だけを得るために写メを撮る男性会社員の姿。近年は求人情報誌はフリーペーパーが主流で、インターネットでも無料で求人情報を見ることができる。 しかし、デジタル万引きを目撃した頃というのは

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第13棚

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第12棚

          第12棚「トラブルメーカーは私じゃない!」 昔から、おかしな人間に会いやすい。それは見ず知らずの人間だ。 細い路地を歩いていて、向こうから下半身を露出しながら歩いてくる変質者とか、電車の中で大声を上げる不審者とか……。他に大勢いるのに、まるで磁石でもあるかのように寄ってくるのだ。 友人は「あんたが呼んでるんじゃない?」と笑うがもちろん、そんなつもりは毛頭ない。無意識にそんなオーラが出ているのか。出ているのなら危険だ。 おかしな人間だけでなく、嫌なことを言われやすいというのはど

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第12棚

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第11棚

          第11棚「刃物を持ったお客様」 「だから、魚住さん。怪しい客がいても自分で声をかけたり、追いかけたりしないでください。危険ですからね」 「店長! 私は声もかけてないし、追いかけてもないんですよ!」 オタク店長にまたまた注意されてしまったが、そもそも私は何もしていない。 店内巡回していて、書棚の角を曲がったら、立ち読みしていた男子中学生と目が合い、その途端、彼はものすごい勢いで逃げ出したのである。驚いた私は、オタク店長に声をかけた。身体の大きな男子中学生は店長がいるレジカウンタ

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第11棚

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第10棚

          第10棚「足立区にモンスター現る!」 ——もし、マンガがなかったら、今、自分はここにはいないだろうなぁ。 ぼんやりと考えることがある。 『キャプテン翼』の「ボールはともだち」ではないが「マンガはともだち」だ。そして、マンガは先生でもある。 幼い頃、身体が弱かった私は3日にあげず熱を出し、母に背負われ医者へ連れて行かれていた。その帰りに本屋に寄って、絵本を買ってもらった。買ってもらう本は、絵本からマンガになった。「小学一年生」などの学年雑誌。『バレリーナの星』『かあさん星』など

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第10棚

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第9棚

          第9棚「幸せと地獄を売る店」 「おはようございまーす」 団地の1階の長谷川さんが声をかけてくれる。長谷川さんは夜勤をしている夫、子ども2人(成人して最近、実家を出た)、それから年老いた母親とともに1階の2部屋を借りて暮らしている主婦である。この団地ができて、ちょっと経った昭和50年代から住んでいて、独立行政法人が団地のオーナーになる前からの古参組。私とは同世代ということもあるが、会えば挨拶して、ついつい立ち話になる。 「こないだはありがとね」 「いえいえ、一人だと食べきれない

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第9棚

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第8棚

          第8棚・休憩時間「パブロフの接客」 何度も言うが、私は声がデカい。 自分では意識していないが、腹から声が出ているし、声も通る。 広いブックスあだち無双店で、客がどの入口から入店してきても目に入ったら「いらっしゃいませー!」と腹式での声がけは欠かさない。 出勤すると行う挨拶の発声練習の成果が出ていると思われた。やはり急には声はなかなか出ないものだ。非常時に備えて「助けてー!」と叫ぶ練習は必要なんだなと独りごちる。 接客の挨拶の中でもよく言っていたのが「ありがとうございました」と

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第8棚

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第7棚

          第7棚「ヤンキーの箱船」 ——ねぇ……なんかマンガ持ってない? 授業中にこっそりと後ろの席のヤンキー女子が話しかけてきた。 私が通っていた県立高校は普通科と職業科がいくつかあり、職業科の生徒は入学するとどんどんヤンキー化していく。当時、設計計測科という学科に在籍していた。授業内容はほぼ機械科。女子クラス35名ほどで半分はヤンキーぽい。卒業すると、9割が地元の工場に就職する。 いや、正確にいうと当時ヤンキーとは呼んでいなかった。 「ツッパリ」もしくは「スケバン」だ。今で言うと、

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第7棚

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第6棚

          第6棚「表紙を捨てろ?」 「いらっしゃいませ」 「かしこまりました」 「少々お待ちくださいませ」 「申し訳ございません」 「ありがとうございました」 今朝も出勤して、エプロンを付けたら「五つの挨拶」の復唱を元気に行う。 接客業のアルバイト経験がある人だったらよくご存じの「五つの挨拶」だ。 本来、集団行動が嫌いで、あまのじゃくな性格の私なので、こういった毎朝恒例の「上から強制的に言わされてる感」「訓練感」満載の行動は「ケッ」と吐き捨てて絶対にやらない。20代の頃は確かに拒否して

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第6棚

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第5棚

          第5棚 「足立区の天使と魔法の小箱」 常々、疑問に思っていることがある。 ——元ヤン・ファミリーはどうして、一家全員がひと塊(かたまり)で移動するのだろう。 書店員になってからは毎日のように目にするようになった元ヤン・ファミリーの塊移動……。なんか目につく。 一家総出で遊びに行ったり、みんなで買い物に行くことは別にいい。私がとやかく言うことではない。元ヤンであるお父さん、お母さん。小学生の子どもが3〜4人。おじいちゃん、おばあちゃんまで一族郎党総勢8人ほどで出かけることも別段

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第5棚

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第4棚

          第4棚「定年後のデイサービス」 「決まりましたね……」 マンガ雑誌の紐がけをしながら、ツン先輩に話しかけると、彼女は紐がけの手を止めて顔を上げた。 「……あ、決まりましたね」 ツン先輩は無口だ。20歳なのにキャピキャピとかルンルンとか華やかさとは縁遠く、表情も乏しく、どちらかというと地味なタイプだ。怒っているのではないかと心配になるが、話してみると別に他人に興味が無いだけで、感情を表に出す人ではないことがわかる。地元民で、今でも家族と同居(結構、大家族らしい)。高校卒業後にブ

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第4棚

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第3棚

          第3棚 「立ち読みは立って読め!」 幼い頃、本やマンガばかり読んでいた。いや、本やマンガしか読んでいなかった。当時、田舎では手に入る雑誌は限られていた。情報が少なかった昭和40年代から50年代前半の田舎。枯渇してくると情報を得ようとガツガツしてくる。情報が無いなりに調べてマニアックでマイナーな雑誌をよく買っていた記憶がある。当時から編集者に向いていたように思う。 ただ、子どもの頃のお小遣いなんてたかが知れている。お金は持っていない。でも、読みたいマンガは山のようにある。星の数

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第3棚

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第2棚

          第2棚 「足立区とヤンキーと書店員と」 午前11時30分を過ぎると、部屋を出る。スニーカーの紐をきゅっと締めたら、団地の5階から奈落の底にスパイラル状に落ちていくように階段を駆け降りる。 この団地は古く、エレベーターが付いていない。「4階以上の建物にはエレベーターを付ける」という建築法が施行される前に建てられた昭和40年代の遺物だ。古いから家賃も高くない。5階建ての5階。2K。駅から徒歩約15分。ド鳩が毎日飛んで来てベランダを荒らすこと以外は気に入っている。 急ぎ足で向かう

          『ヤンキー多発地帯・足立区のたたかう書店員』第2棚