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余寒の怪談手帖 リライト集

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怪談手帖が大好きすぎて〈未満〉も含め、色々な方のリライトをまとめてしまいました。 原作者・余寒様の制作された書籍、「禍話叢書・壱 余寒の怪談帖」「禍話叢書・弐 余寒の怪談帖 二」…
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2024年3月の記事一覧

【禍話リライト】『怪談手帖』より「きつねの宴席」

職場の先輩で今は定年退職されたAさんが故郷で聞いた話。 彼が生まれた町には、かつてやんごとない御方も逗留したという、由緒正しい旅館があり、そこの女将さんというのが彼の母方の叔母だった。 この叔母さんが話していたのが、きつねに化かされた話だという。 ある時その旅館は新聞社からの紹介で、作家や画家を含めた集団のお客を迎えた。 お得意様からの紹介ということで一階と二階、それぞれで一番いい部屋を開けておき、客に選んでもらう形にしたのだが、一階の間に着いて「以前やんごとのない御一行

禍話リライト「大首の家」【怪談手帖】

「今でもまだ怖いんだよ、ずっと。考える度にドツボに嵌る気がして…本当は考えない方がいいんだろうけど……」 話者であるAさんは、今の職業や年齢については明示しないで欲しいと言ってこの話を切り出した。 彼が大学生の頃、曰くつきの家で目撃してしまったモノの話。 それは地元では有名な、とある事件の舞台となった一戸建てだった。 報道ではぼかされていたものの、被害者である女性が異様な状態で見つかったというのが半ば公然となっており、それでいてどういう状態だったのかについてはてんでばらば

禍話リライト 怪談手帳【化かされ上手】

 この話を語ってくれた人の、ひいおばあさんの体験談。    昭和のごく初めごろ、「化かされ上手」と呼ばれていた、彼女の大叔父の話だという。  彼は独り身の、いわゆる【ガラクタ道楽】であり、方々で色んな中古品を買い漁っていた。年を取ってから目覚めた趣味のせいか、裕福でありながら別に目利きなわけでは無い。要するに非常にいいカモということで、粗悪な品や贋作などを掴まされ放題であった。  では、化かされ上手とは……。  そんな彼のありさまをただ揶揄したものかと言えば、もっと直接

禍話リライト 怪談手帳【蛹男】

 「いやなァ、やっぱり飲みすぎはダメだよ! ウン、酒はダメ! ダメだよ飲まれちゃ!」  そう言って己が禿げ頭をぴしゃぴしゃと叩く、還暦すぎのAさん。  元消防隊員だという彼は、少し前までしこたまお酒を飲んだ後、夜の地元を徘徊するのを趣味としていた。  「季節の変わり目にパーッと飲んで歩き回るのが気持ち良かったンだ。 我ながら、迷惑なジイさんだよなァ」    少し涼しくなってきた、とある晩夏の深夜だったという。  いつものように火照った頬を冷まそうと緩やかな夜風を受けながら歩